今回の内容もまたアセトアミノフェンです。先日の記事で、アセトアミノフェンについては中国製の混ぜ物が入っていたことを書いたばかりです。
現在の妊娠中の鎮痛解熱剤の投与の基準はどのようになっているのでしょう。日本産婦人科学会の2010年のものでは消炎鎮痛剤として「アセトアミノフェノンが比較的安全に使用できる」と書いてあります。アセトアミノフェンの商品名は他に「カロナール」「アンヒバ」などが有名です。
通常の消炎鎮痛剤NSAIDは妊娠後期に大事な血管である動脈管を収縮させてしまうので、使えませんが、アセトアミノフェンにもその動脈管の収縮作用はあるとは言われています。添付文書でもそうなっています。
しかし、やはり、妊娠中の薬の服用はかなり慎重になるべきでしょう。今回の報告では、妊娠中のアセトアミノフェンの使用で、生まれてくる子供の男性としての性機能が低下するというものです。もしかしたら、いわゆる「ニューハーフ」と言われている方や「性同一性障害」の方、さらには「草食系男子」まで一部では関連している可能性はあるかもしれません。(誤解があったら申し訳ありません。)
「Prenatal exposure to paracetamol/acetaminophen and precursor aniline impairs masculinisation of male brain and behaviour」
「パラセタモール/アセトアミノフェンおよび前駆体アニリンへの出生前曝露は、男性の脳および行動の男性化を損なう」(原文はここ)
要約
アセトアミノフェンは、妊娠中の鎮痛および発熱に推奨されている鎮痛薬である。そのため、アセトアミノフェンへの出生前の暴露は、生殖管および脳の両方において発達性の変化をもたらすとのいくつかの研究が報告していることが懸念されている。哺乳類のオスの性器および神経系は、胎児の発育および出生後早期の間に、プロスタグランジンとアンドロゲンの作用によって活発に男性化され、成人期に見られる男性の典型的な繁殖行動をもたらす。アンドロゲンおよびプロスタグランジンは両方ともアセトアミノフェンによって阻害されることが知られている。C57BL / 6マウスにおける子宮内曝露実験を通じて、 今回の研究者らは、アセトアミノフェンへの曝露は、成体のオスの前視床下部における前眼部領域(POA)の性的二形核(SDN)におけるニューロン数を減少させることを見出した。同様に、環境汚染物質およびアセトアミノフェン前駆体であるアニリンへの暴露も同様の減少をもたらした。SDN-POAのニューロン数の減少は、男性の性行為の減少と関連している。この変化と一致して、子宮内でアセトアミノフェンに曝露されたオスのマウスは、成人としてのマーキング行動の変化を示し、同じ性別の侵入者に対して積極的な縄張り表示を減少させた。さらに、暴露したオスは発情期のメスと一緒にいる間、挿入および射精を減少させた。これらのデータは、アセトアミノフェンへの出生前の暴露が性的な神経行動プログラミングを混乱させることによって成人期の男性の性行為を損なう可能性があることを示唆している。これらの結果は、妊婦によるアセトアミノフェンの広範な暴露と使用を制限する必要性を示唆する証拠が増えていることを示している。
この研究を簡単に言えば、アセトアミノフェンを妊娠中に使うと、生まれてくる男の子が女性化してしまう可能性を示唆しているのです。
他にも妊娠中のアセトアミノフェンはADHDも増加させるという報告も有名です。(原文はここ)
今回は男の性機能の問題ですが、他にも2016年に、妊娠中にアセトアミノフェンを摂取していた場合、卵巣に卵が少ないことを示す研究の発表もあるようです。これにより、マウスはより早く不妊になりました。つまり、生まれてくる子供が男であっても女であっても、その性機能に何らかの問題を抱える可能性はありそうです。
妊娠中に投与される薬で安全性が確立しているものは、実際にはありません。人間の妊婦さんで治験するわけにはいきませんから。