うつ病の大きな原因のひとつは炎症である

今回の記事は非常に新しい考えではありませんが、やはりこれが正解だと思う内容を書きたいと思います。最初に結論を言ってしまうと、うつ病を解決する最良の方法は糖質制限です。

前回の記事「うつ病にはプラセボ(偽物の薬)がめちゃくちゃ効く!」では、抗うつ薬は大した効果が期待できず、プラセボが非常に効果が高いことを書きました。どちらにしても完全に症状が無くなることは少ないと思われます。それは、根本の原因に対処していないからです。

そして、うつ病の原因はちょっと前までは「モノアミン仮説」が全盛期を迎え、それに対応した抗うつ薬がものすごい勢いで売れたわけです。もちろん、今も使われていますが、先ほど言ったように効果は非常に薄いのが本当のところでしょう。いまだにセロトニンが何とか、とか言っている方もいますが、結果としてセロトニンが減ることはあっても、それが原因ではありません。脳は何か神経伝達物質が一つ減ったから、それを増やせば症状が無くなる、というほど単純ではありません。

そして、最近はうつ病を含む気分障害の原因は、脳の炎症によるものと考えられています。うつ病における炎症やそれに関連するサイトカインという物質についてはもうすでに1980年代から言われていて、その仮説の証拠がどんどん積み重なってきています。

 

ストレスというのは心理社会的なものであったり、感染や外傷であったり、全身性の疾患(例えば糖尿病やがん、心疾患など)によるものであったり様々です。特に糖尿病などの疾患は、慢性の炎症がこれらの疾患の病理に関与しており、NLRP3インフラマソームという物質が重要な役割を担うメカニズムが解明されています。炎症は全身に起こり、脳などの中枢神経にも起こります。さらに、うつ病においてIL-1β、IL-6およびTNFαなどの炎症促進性サイトカインの血清レベルが上昇するもわかっています。そしてこれらのサイトカインは疲労感や食欲不振などの症状を起こし、気分に影響を与え、不快感や不安を引き起こすとも言われています。これらの症状はうつ病の典型的な症状です。

生物には危険から自分を守る防御機構が備わっています。難しいことは割愛しますが、ストレスなどの危険信号を認識すると、NLRP3インフラマソームというタンパク質などを介して、アラームとして先ほどのIL-1β、IL-6およびTNFαなどの炎症促進性サイトカインが放出されます。NLRP3インフラマソームが活性化するとNLRP3インフラマソームが制御しているサイトカインが増加するのです。

うつ病ではHPA軸(視床下部-下垂体-副腎皮質のつながり)が活性化していますが、炎症性サイトカインは、HPA軸を強力に活性化します。

 

*CRH:副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン ACTH:副腎皮質刺激ホルモン CORT:コルチコステロン(副腎皮質ホルモン)

IL-1βは視床下部の副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)の分泌、下垂体の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の分泌、そして副腎皮質ホルモンの生成を増加させます。副腎皮質ホルモンのは炎症性サイトカインやCRH、ACTHを抑制する働きがあるのですが、恐らく中枢の炎症性サイトカインの活性化によって、その働きに抵抗性が起きていると考えられています。そして、持続的に副腎皮質ホルモンが分泌され続けると、海馬や前頭前野の神経細胞が萎縮したり、BDNF(脳由来神経栄養因子)が減少したりします。これらのこともうつ病に非常に関係します。

血糖値の上昇は、NLRP3インフラマソームを活性化し、IL-1βを増加させ、それによりインスリン抵抗性をもたらします。さらにNLRP3インフラマソームはアミロイドβにも関連するのでアルツハイマー病に重要な役割を担っていると考えられています。

IL-1βによる病的な行動としては、活動、関心、モチベーション、摂食、感情などの抑制という、うつ病の症状の中核をなす症状が現れます。さらに脳由来神経栄養因子(BDNF)および海馬の神経発生を減少させます。TNFαも関心や体重、摂食の減少を引き起こし、絶望行動が増加します。IL-6は行動の減少、発熱を起こし、不動性を増加させます。

このようにして、様々なストレスにより体に炎症を起こし、それが続くと脳の慢性の炎症になり、NLRP3インフラマソームを介して炎症性サイトカインなどが増加し、うつ病へとなっていくと考えられます。

では、どのようにしたらいいかというと、もちろんストレスを避けることです。しかし、全てのストレスを無くすことは無理な話です。そうであるならば、できる限り炎症を起こしにくい体にすることです。炎症は食事によってかなりコントロールができます。ケトン体はNLRP3インフラマソームを抑えることがわかっています。ケトン体は強力な抗炎症作用があります。糖質制限をしてケトン体をしっかり出して、炎症を抑えること、そして、オメガ6やトランス脂肪酸などの炎症を促進する油をできる限り減らすことです。また、腸内細菌を大切にすることです。ジャンクフードなどは腸内細菌の多様性を減らしたり、炎症を起こす細菌を増加させます。多様な自然な食材を摂り、加工食品や工業製品はできる限り排除することを心掛けましょう。炎症は様々な病気、症状につながっています。

糖質制限をするだけでかなりの効果が期待できると思います。全ては食事から。

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