糖質制限とLDLコレステロール上昇3 脂質をもっと食べるべき?(人体実験)

糖質制限をしている方がときどき悩んでいるLDLコレステロールの上昇について、これまで「糖質制限とLDLコレステロール上昇」「糖質制限とLDLコレステロール上昇2 仮説」を記事にしてきました。2つ目の記事の最後には「LDLコレステロール値が上昇している方は、恐らく、運動をしていて私のように必要なエネルギーが非常に多いか、思ったほど脂肪摂取の量が多くはなく、需要を満たしていない可能性があります」と仮説を書きました。

今回自分で人体実験を行いましたので、いつものようにn=1ですが、データを示します。まだまだ100%すっきりしてはいません。

実は私もLDLコレステロール値は高値です。どれぐらい高値かというと、測定の度に違います。まずは下の図を見てください。

様々なタイミングでのコレステロール値と中性脂肪値です。

最初がウルトラマラソンの2日前です。シーズン真っただ中なので、一番ランニング量も多いころです。次がウルトラマラソンの次の日のデータです。3番目が北海道マラソン後1か月ランニングを休止しましたので、その休止後のデータです。4番目はその後に60時間の断食を行い、その断食直後のデータです。その次の5番目6番目のデータは、脂肪負荷試験というものを行った前後のデータです。脂肪負荷試験の内容は、敢えて正確な栄養素の量を測定はしていませんが、3日間連続で通常私が食べている食事に、単純に生クリーム200mlを加え、さらに夜に食べるサラダにいつもオリーブオイルをかけるのですが、そのオイルの量を約2倍に増やしました。トータルの脂肪量はいつもより100~120g程度多く摂ったことになります。

ウルトラマラソン前ウルトラマラソン後1か月ランニング休止後60時間断食後脂肪負荷試験前脂肪負荷試験後
総コレステロール420338300313296278
HDLコレステロール112105988998108
LDLコレステロール261183182185167158
中性脂肪312329962726
総コレステロール/HDLコレステロール比3.753.223.063.523.022.57
中性脂肪/HDLコレステロール比0.280.220.301.080.280.24
アポタンパクB/アポタンパクA-1比0.590.630.570.50

ウルトラマラソンの前のデータを糖質制限を否定している医師が見ると、LDLコレステロール値の高さにパニックになって、スタチンを処方するでしょう。そして、「このままでは死んでしまいますよ!」と脅すでしょう。

しかし、現在は心血管系のリスク評価は総コレステロール値やLDLコレステロール値はあまりあてにならないことがわかっていますので、総コレステロール/HDLコレステロール比、中性脂肪/HDLコレステロール比、アポタンパクB/アポタンパクA-1比を見ます。

総コレステロール/HDLコレステロール比は4未満、中性脂肪/HDLコレステロール比は2未満が理想値です。アポタンパクB/アポタンパクA-1比ははっきりした基準値がありませんが、0.6以下は非常に良い値です。

そうすると、LDLコレステロール値以外は非常に素晴らしい値を示しており、LDLは非常に大きな良質のLDLと考えられます。

そして、前回の記事でも触れたように、脂質の摂取量が体の需要を満たしていないのでは?という考えから、脂肪をいつもよりも100g以上摂ってみると、それだけでもLDLコレステロール値は低下しました。ウルトラマラソンの前が、ランニングで脂肪をいっぱい消費するので、脂質に対する体の需要がもっとも高い時であり、通常の食事では脂質量が全く足りていない可能性があります。3日間の100g余分に脂質摂取で、最もコレステロールが低下するのですが、まだ足りないのかもしれません。これ以上の量を食べると胃がもたれそうです。しかし、3日間ではなく1週間ぐらい連続ですれば、もしかしたらLDLコレステロール値は徐々に低下してくる可能性はあります。または、今回はいつもの食事に脂質100gをプラスしましたが、糖質や炭水化物を脂質で置き換える、つまり脂質の比率を上げればいいのかもしれません。

まだまだ分からないことだらけですね?

それにしても、脂質摂取量が増えるとコレステロール値が低下するというのは、昔では考えられなかったですよね。コレステロールが高い人に脂肪をあまり摂らないように指導することが間違いであることがわかります。また、もしかすると女性は太ることを気にして(男性でもあるかも?)、間違った食事で脂質摂取量が減り、LDLコレステロール値が高い場合がある可能性も考えられます。閉経後の女性にもっとたくさんの脂質を食べてもらうともしかしたら、LDLコレステロールが低下するかもしれません。

今回の疑問は、1か月ランニングをしていないときのデータで、思ったほどLDLコレステロールが低くなかったことです。つまり、運動をしていないので体の需要は低いはずです。また、その後の断食60時間では、食事による脂質の供給がないので、体の需要は高くなりもう少しLDLが高くなると思ったのですが、ほとんど誤差範囲でした。さらに断食で中性脂肪値が急上昇したことはどのように説明したらいいのかわかりません。

いずれにしても断食の時以外はHDLと中性脂肪は非常に落ち着いた値を示しています。

血液検査の基準値(正常値)はどれも通常の食事をしている、つまり糖質過剰摂取をしている人の中で、健康と思われる人の大部分が当てはまる値でしかありません。可能であれば、糖質制限をしている人の血液データを集めて、どれぐらいの範囲に収まるか調べてみたいものです。恐らく、糖質制限をしている人のLDLコレステロール値は広範囲、しかも通常であれば異常な高値の人も多数いると思います。

しかし、実際のところ、糖質制限をしている人はLDLを下げる必要があるのでしょうか?

以前にも中性脂肪とLDLの大きさ、HDLとLDLの大きさの関連を示したのですが、別の研究では、中性脂肪/HDLコレステロール比とLDLの大きさの関連を示したいるものがありました。(下の図は原文より)中性脂肪/HDLコレステロール比が1.33でグラフは交わっており、1.33以上であれば急速に小さな悪いLDLが急上昇しています。ちなみに私は0.2~0.3程度なので、非常に良いLDLだということがわかります。LDLコレステロール値あてになりません。

「Ratio of Triglycerides to HDL Cholesterol Is an Indicator of LDL Particle Size in Patients With Type 2 Diabetes and Normal HDL Cholesterol Levels」

「HDLコレステロールに対するトリグリセリドの比率は、2型糖尿病および正常HDLコレステロールレベルを有する患者におけるLDL粒子サイズの指標である」(原文はここ

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コメント

  1. 松田武英 より:

    最近先生のプログを知ったものです。わたくしもずいぶん前よりリポ蛋白質の検査(リポ蛋白分画PAGE法)に携わっている者として、現状のコレステロール低下療法に疑問を持っているものです。何故ならTCやTG、LDLcが低いのにも関わらず心筋梗塞患者が多いことから(Ⅱa型を含む)がその理由です。
    現在FHおよびⅡa型やTCが低い人に心筋梗塞患者が結構いることの解析をしています。ほぼこれらの原因がわかりつつあります。しかしこれとは別にⅡb型やⅣ型の患者にも心筋梗塞の患者がいるので、両者は違う機序による心筋梗塞と思っています。後者は小粒子LDLの出現が原因であると考えいてます。但し小粒子LDLその物が悪玉でなく、結果として小粒子LDLが増えたと理解しています。少なくとも後者は小粒子LDLの低下療法は間違いでないとおもっています。今小粒子LDLの測定が保険適用で検査できますので、別送で文献や資料をお送りいたしました。よろしくお願いします。

    • Dr.Shimizu より:

      松田武英さん、コメントありがとうございます。
      資料ありがとうございます。届きましたら勉強させていただきます。