LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その10 赤血球そして鉄

このシリーズもその10まで来ました。アテロームの中のコレステロールは、LDLが血管の内腔から内皮細胞の隙間を通って、動脈の壁の中に入り込み、それによってもたらされるという今までの仮説がどうしても矛盾を感じてしまい、いろいろと調べています。そして、実際のアテロームを調べてみるとLDLコレステロールが血管の内腔からやってきて蓄積したということでは説明できないことがどんどん出てきました。

前回のその9「LDLコレステロールは本当に動脈の血管内腔から血管内皮を通って、アテローム性動脈硬化を起こすのか? その9 別のコレステロールの運び屋」ではコレステロールの別の運び屋としての赤血球の存在について書きました。今回はその続きです。

冠動脈のプラークを実際に調べてみると次のようになりました。(図は原文より改変)

グリコホリンAというのは赤血球に特異的なタンパク質のようです。グリコホリンAスコアや鉄スコアは壊死性コアまたは脂質が溜まったプラークでの割合を0~4までで評価し、高いスコアは高い割合を表しています。つまりこれらのスコアが高いほど赤血球や赤血球に含まれる鉄が多いことを示します。

そうすると壊死したコアがまだない初期の段階の内膜肥厚であっても、わずかに赤血球や鉄が認められます。早期の壊死したコアのプラークでも初期段階よりも赤血球や鉄は増加していますが、進行した後期のプラークから薄い繊維性被膜のプラークへと病変が悪化すると、壊死したプラークの大きさは激増し、それに伴いマクロファージの浸潤の範囲も増えるだけでなく、赤血球や鉄のスコアも急激に増加しています。

そして、コレステロールの裂け目ができるようですが、その裂け目はマクロファージを欠く赤血球の領域にのみ存在することが多いようです。

そうすると、プラークの進行はLDLのコレステロールによるものではなく、外膜から内膜に伸びてきた新生血管から来た赤血球がプラークに留まり、その量が増加するような状況で進むという考えが出てきます。急激な冠動脈閉塞などはこのプラークの中の新生血管が破たんして、プラークの中に出血を起こして、急激にプラークが大きくなったことによるのではないかと思われます。

また、プラークの中に赤血球があるということは今回の研究にもあるように、鉄がそこに沈着します。鉄は酸化を促進します。そこでプラーク内のLDLが酸化され酸化LDLとなり、そのいくつかが漏れ出て循環に戻り、血中の酸化LDLになっているのではと想像できます。そうすると血中では酸化LDLが非常に少量しか見つからないというのも納得できます。血中には恐らく様々な抗酸化物質が漂っています。その中でLDLが酸化するより、プラーク内で鉄によって酸化される方が矛盾が少ない気がします。

もう一度おさらいしてみましょう。

1.動脈の内膜は血管がなく、血管の内腔から本来は血液成分や栄養を受け取る。

2.糖質過剰状態が酸化ストレスを生み、内膜の細胞がミトコンドリア機能障害になり、それによるMfn-2の減少は血管平滑筋細胞の増殖を招く。

3.さらに高インスリン血症そのものやそれによって促進されるTGF-β1、その他の成長因子により、さらに血管平滑筋細胞の増殖能力が強化され、内膜がどんどん肥厚する。

4.内膜が厚くなることにより内膜の深層では低酸素状態になる。

5.肥厚した内膜の深層部分に外膜から新生血管が伸びてくる。

6.伸びた血管を通る血液の中のリポタンパク質は、内膜の深層部分に存在するプロテオグリカンのビグリカンに接触できるようになり、結合する。またその血管を通ってコレステロールを豊富に積んだ赤血球も内膜深層部分に蓄積する。

7.一方で、内膜の増殖した血管平滑筋細胞は機械的な歪みなど何らかのストレスでビグリカンを増加させる。高血糖、高インスリン血症そのものや、それによる酸化ストレスによってもビグリカンは増加する。

8.もともとの糖質過剰摂取の生活であれば、中性脂肪が高く、LDLは小さく密度が高いものが多くなり、さらにapoCⅢを有するLDLをはじめとするリポタンパク質が増加する。

9.VLDL、LDL、HDLなどの全てのリポタンパク質は高血糖により糖化する。

10.apoCⅢが増加したり糖化したリポタンパク質は受容体にくっつきにくくなることとによりレムナントが増加する。血中に長くとどまるレムナントリポタンパク質はさらに糖化しやすくなる。

11.apoCⅢが増加したり糖化したHDLはコレステロールの引き抜き能などの低下、つまり機能不全に陥る。

12.糖化したLDLやVLDLなどのリポタンパク質は内膜深層部でビグリカンに結合しやすくなり、脂質が蓄積することになる。

13.赤血球によりもたらされた鉄により、糖化したリポタンパク質は酸化しやすくなり、内膜深層部で酸化したLDLが増加する。

14.その酸化したLDLの一部が内膜の深層部の新生血管から血中に漏れ出てくる。

15.何らかの原因で新生血管が破たんするとそこでプラーク内出血が起こり、急激にアテロームが進行する。

いかがでしょうか?まずまずの仮説です。

「Intraplaque hemorrhage and progression of coronary atheroma」

「プラーク内出血および冠動脈アテロームの進行」(原文はここ

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする