リリカの安易な使用は止めるべし!

以前の記事「やっぱりリリカは効かない 副作用たっぷりの科学的根拠のない適応症」では、如何にリリカの効果が怪しいもので、如何に科学的な根拠もなく本来適応でないものに適応が拡大し、如何に本来では適応外の症状で多くの患者さんが処方されているのか、について書きました。そして、リリカには様々な副作用が認められています。

リリカの添付文書には次のように書かれています。

重要な基本的注意
1.本剤の投与によりめまい、傾眠、意識消失等があらわれ、自動車事故に至った例もあるので、本剤投与中の患者には、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。特に高齢者ではこれらの症状により転倒し骨折等を起こした例があるため、十分に注意すること。
2.本剤の急激な投与中止により、不眠、悪心、頭痛、下痢、不安及び多汗症等の症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、少なくとも1週間以上かけて徐々に減量すること。
3.本剤の投与により体重増加を来すことがあるので、肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと。特に、投与量の増加、あるいは長期投与に伴い体重増加が認められることがあるため、定期的に体重計測を実施すること。
4.本剤の投与により、弱視、視覚異常、霧視、複視等の眼障害が生じる可能性があるので、診察時に、眼障害について問診を行う等注意し、異常が認められた場合には適切な処置を行うこと。[「その他の注意」の項参照]
5.本剤による神経障害性疼痛の治療は原因療法ではなく対症療法であることから、疼痛の原因となる疾患の診断及び治療を併せて行い、本剤を漫然と投与しないこと。

国内の第Ⅲ相試験での主な副作用は、

帯状疱疹後神経痛 便秘12.1%、末梢性浮腫11.7%、浮動性めまい31.1%、傾眠28.6%

  長期投与試験 浮動性めまい28.6%、末梢性浮腫16.7%、傾眠15.1%、体重増加13.5%

糖尿病性末梢神経障害 末梢性浮腫12.8%、浮動性めまい24.0%、傾眠25.7%、体重増加11.2%

  長期投与試験 傾眠22.8%、体重増加22.0%、浮動性めまい20.3%

線維筋痛症 傾眠45.2%、浮動性めまい28.8%、体重増加14.4%、便秘12.8%

  長期投与試験 傾眠26.4%、浮動性めまい24.5%、体重増加18.9%、便秘16.0%

脊髄損傷後疼痛長期投与試験 傾眠48.5%、体重増加28.2%、浮動性めまい
22.3%、末梢性浮腫17.5%

と非常に高い割合で、めまいや傾眠が起こります。患者さんによっては本当に耐えきれない眠気だそうです。ですから、リリカを処方するときには私は必ず「運転をしないように」と注意していますが、運転している人も多くいると思います。非常に恐ろしいです。もちろん厚労省からも注意喚起がなされています。

めまいや傾眠の延長線上にあると思われる意識障害ですが、2010年に15件、2011年に13件の報告があります。報告されているだけでその数なので、実際にはかなり多いでしょう。私も1例経験があります。意識障害なのか、めまいのひどいものなのかわかりませんが、リリカを処方している私の患者さんである日、急に起き上がれなくなったと、救急車で運ばれてきました。リリカを減量して、その後は落ち着きましたが、前の日まで問題なかったのに、急に副作用が強く出たのです。恐らく高齢者では腎機能が低下し、蓄積してくるのだと思われます。その方が自動車を運転しない人で幸いでした。その後からは高齢者ではリリカを処方しないか、非常に少量しか処方しなくなりました。

さて、製薬会社の説明ではリリカはGABA受容体には作用しないと言っています。GABAというのは脳の抑制系の神経伝達物質です。この受容体に作用すると脳が抑制されます。その作用の最も有名なのがベンゾジアゼピンというものです。これはいわゆる眠剤、睡眠薬です。リリカの副作用で傾眠、意識障害などが認められるのはGABA受容体に作用しているとしか思えません。そして、これは私は副作用ではなく本作用の一部だと考えています。つまり、中枢の抑制作用が痛みの緩和をもたらしているのだということです。脳がボーとしてしまい、その分痛みを感じづらくなる程度の作用しかないのでは?と思っています。だから、「やっぱりリリカは効かない 副作用たっぷりの科学的根拠のない適応症」「坐骨神経痛にリリカは効かない」で書いたようにプラセボとの差がほとんどないのです。

製薬会社はGABA受容体に作用しないのであれば、なぜここまで多くの眠気やめまいが起きているのかちゃんと説明してほしいものです。

そして、このGABA受容体に作用していると考えられる更なる理由が、リリカの依存症です。海外では「日本もリリカを野放しにしたままで良いのか?」で書いたようにリリカの依存症や乱用が問題になっています。眠剤や安定剤であるベンゾジアゼピンも非常に依存を起こしやすい薬で有名です。そして、さらにGABA受容体に作用して中枢の抑制が起きているからこそ、上の「重要な基本的注意」の2番が出てくるのです。

この2番の内容「本剤の急激な投与中止により、不眠、悪心、頭痛、下痢、不安及び多汗症等の症状があらわれることがある」の意味は、離脱症状です。麻薬やベンゾジアゼピンを急にやめると離脱症状が認められます。GABA受容体に作用して、脳が抑制され続けていたのに、急にその作用する薬が無くなると、その反対の作用、つまり脳が興奮状態になるのです。その興奮状態で不眠、悪心、頭痛、下痢、不安及び多汗症等の症状などが起きると考えられるのです。そうすると、長期にリリカを使用すると依存になり、やめようとすると離脱症状が起きてなかなかやめられなくなるのです。だから、できる限り短期で少量で使用すべき薬だと思うのです。そして、そのことを患者さんにもちゃんと説明すべきだと思います。

「重要な基本的注意」の3番は、体重増加です。果たして、この副作用で薬を中止すべきかどうかは議論があるところだと思いますが、製薬会社からは、なぜ体重増加が起きるかという説明は一切ありません。ひとつの考えは、浮腫です。国内第Ⅲ相試験の主な副作用の中で末梢性浮腫が10数%に認められています。この浮腫が全身に起きて、水分の蓄積が起きて体重増加になっているのでは、と考えられます。私は浮腫であっても、体重増加であってもリリカを中止すべきだと考えます。

浮腫でひどい場合には次のようになる可能性があります。(写真はこの報告より)

患者さんは76歳女性です。20年来の慢性痛で、腰の手術後に神経障害性疼痛ということでリリカを開始されました。その後このような状態になりました。もちろんもともと肥満がある方だったということもあります。しかし、明らかにリリカ処方後に浮腫が起こり、その後どんどん悪化して、中止後に浮腫が改善しています。

浮腫は降圧薬のカルシウムブロッカーと同じメカニズムで起きると考えられています。カルシウムブロッカーの副作用にも浮腫があります。

ただ、もしかすると、以前の記事「瘀血(おけつ)とグリコカリックス(勝手な仮説)」で書いたように、グリコカリックスを傷害している可能性もあるのではと思います。それによって血管の透過性が亢進して、浮腫が起き、全身に起きると体重増加が起きるのです。

そして、もう一つ体重増加のメカニズムの推測は、もう一つの重大な副作用と関連しています。発生頻度は低いと考えられていますが、もう一つの重大な副作用とは低血糖です。低血糖の症例報告は次のようです。

「60代の女性。脊柱管狭窄症,変形性関節症の疼痛で当初はガバペンを処方されていました。
リリカが長期使用可能になったので,リリカ300mg/日に変更しました。投与15日目450mg/日に増量しました。投与17日目に自宅で意識消失し、数時間後家族が発見しました。血糖値は21mg/dLでした。投与27日目血糖値は31mg/dLでした。(この10日間どうしていたかは不明です。)ブドウ糖を数回静注しましたが、改善せず入院しました。そしてやっとリリカの投与を中止しました。中止1日後に回復しました。」

どうしてリリカによって低血糖が起きるのかは現在のところ不明です。もしかすると先ほどのGABA受容体が関係している可能性があります。GABA受容体はすい臓のβ細胞にも存在しています。その受容体の活性化により、インスリン分泌を促し、グルカゴンの分泌抑制をすることが示唆されています。リリカがこのすい臓のGABA受容体に作用して、インスリン分泌を促進しすぎて、低血糖になってしまった可能性も考えられるのです。もしかしたら最初の方に書いた意識障害も低血糖によるものの可能性があります。上の低血糖の症例で、ブドウ糖を数回注射しても改善しないというのは非常に恐ろしいことです。

そうすると、重大な低血糖にまではならなくても、インスリン分泌により脂肪蓄積から体重増加にもつながります。「重要な基本的注意」では「肥満に注意し、肥満の徴候があらわれた場合は、食事療法、運動療法等の適切な処置を行うこと」と、医師に丸投げ状態です。しかもほとんどの医師はこの体重増加に対応できる食事療法の知識はありません。また運動療法で体重管理ができるのであれば苦労しません。運動療法で体重管理ができるというエビデンスもないのに、公式な添付文書にこのような記述があるのは非常におかしな話です。全くマヌケな注意事項です。実はリリカで最大12.9kg体重増加した例が認められています。

さらに悪いことに、このような体重増加や浮腫というメジャーな副作用について、処方している医師が結構知らないのです。患者さんは医師に体重増加や浮腫について訴えても、「気のせい」とか「リリカには関係ない」と言われた人が結構いるのです。それにはいつも驚かされます。

「重要な基本的注意」の4番も実は深刻です。弱視、視覚異常、霧視、複視等の眼障害が生じる可能性がある、としています。そして、この視覚障害がなぜ起こるかもわかっていません。薬を飲んで物が二重に見えるなんて、おかしすぎです。脳にそれだけ強く働いている可能性もあります。これも発生頻度は低いと言われていますが、実際にはそこまで珍しくないと思います。私は2人知っています。民医連というところのホームページで書かれているデータはどこで集められたかはわかりませんが、本当だとしたら衝撃的です。

承認試験時の視覚障害は497例中42例(8.45%)、うち半数が中等度・重度、そのうち、回復は12例、未回復9例、その中には失明した例もあります。副作用が発現するのは、眼球運動を低下・鎮静させるためと考えられるようです。

未回復や失明もあるのであれば、視覚障害が認められたらすぐにやめるべきでしょう。失明というのは他の要因もないと考えられませんが。しかし、これまた処方している医師が視覚障害という副作用を知らないこともあります。

個人情報がわからない範囲で私の経験を書きます。

私の患者さんで、他の病院からリリカが処方された方がいました。間もなく、その方は物が二重に見えるという訴えをされました。私は「リリカの副作用の可能性があるから、処方を中止してもらった方が良い。」とアドバイスをしました。他院のリリカを処方している医師は「リリカとは関係ない」と言って、処方は継続されました。その後、だんだんとうつのような状態になって、「頭が回らなくなってしまった」というので、「すぐにリリカを止めた方が良い!」と強く言いましたが、なぜか聞いてもらえませんでした。(私に対する信用が無かったのでしょう。)そして、その方はその他院の医師から某大学の精神科に回されました。その後に私の外来を受診され、精神科の診断は「双極性障害」(以前の躁うつ病)で、明日入院すると言いました。私は診断基準を考えても、「双極性障害」では全くないという確信のもと、「リリカをはじめてからいろいろおかしくなったので、リリカを止めるべき!精神科に入院しない方が良い」と言ってしまいました。その後その患者さんと会うことはないので、どうなったかわかりません。余計なお世話だったのかもしれません。私が間違っていたかもしれません。しかし、それまで精神的に何ともなかった人がリリカを飲むのをきっかけとしてどんどん様々な変調を来し、どんどん変わっていきました。まずはリリカを止めるべきだということは正しい判断だと今も思っています。

もちろん、全ての人がこのような状況になるとは思っていませんし、リリカで助かったと思う方もいるでしょう。しかし、薬を飲んで、体に変調を来したときにはやはり中止すべきです。簡単に薬の副作用を否定してしまうのは危険です。

「重要な基本的注意」の5番には、非常にまともな、しかし「逃げ」と思われる文章が書かれています。

本剤による神経障害性疼痛の治療は原因療法ではなく対症療法であることから、・・・本剤を漫然と投与しないこと。

ほとんどの薬は根本治療ではなく、対症療法です。症状を和らげたり、ごまかしているにすぎません。だから、漫然と投与してはいけません。しかし、漫然と投与されるケースが非常に多いと思います。それを行っているのは医師です。

つらい症状を少しでも和らげたい気持ちは非常にわかります。しかし、副作用は時として悲惨な状況を招きます。リリカで痛みが2~3割程度しか楽にならないのであれば、それはプラセボ効果か中枢神経の抑制効果に過ぎないでしょう。腰痛や関節痛、坐骨神経痛など適応外の症状にリリカの安易な使用は止めるべきです。当初の適応「帯状疱疹後神経痛、脊髄損傷後疼痛、糖尿病性神経痛、線維筋痛症」であっても、効果を十分見極めて、漫然と投与すべきではありません。リリカの効果は「鎮痛」であって、根本的な原因は一切改善しませんから。

(消されないことを祈っています…)

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コメント

  1. ミホ より:

    清水先生、こんにちは。

    インターネット社会になり、一般人でも薬の添付文書が読めるようになり、自分が飲んでいた薬や母の飲んでいる薬を調べました。

    副作用らしき症状があっても医師は認めようとしないものですね。

    母の飲んでいる薬にPPIがあったので、次回受診時に減らしてもらうつもりです。

    リリカ…可愛い名前をしてとんでもない薬ですね。

    先生が消されないことを祈っています(笑)
    (…笑っていいんでしょうか??)

    • Dr.Shimizu より:

      ミホさん、コメントありがとうございます。

      リリカにしてもPPIにしても、すべてが悪いわけではありませんが、もっと慎重に使うべき薬だと思っています。
      安易に処方され過ぎているのが問題です。
      ビッグファーマの力はすごいですね。医師の方がもっと考えるべきだと思っています。

      ブログの更新が長く途絶えたら、消されたと思ってください。