以前の記事「PPI(プロトンポンプ阻害薬)は食道がんのリスクを高める」ではPPIが食道がんのリスクを高めることを書きました。では胃がんはどうでしょうか?
イメージ的にはPPIは胃などの消化管潰瘍の治療薬ですし、逆流性食道炎を抑える薬なので、「胃にやさしい」と思うかもしれませんが、食道がんのところで書いたように決して「やさしく」はないようです。食道がんの研究と同じくスウェーデン人のPPI使用者797,067人の研究です。(表は原文より改変)
胃がん | 胃腺がん | 噴門部がん | 非噴門部がん | |
Total | 3.38 | 3.38 | 3.55 | 3.33 |
性別 | ||||
男 | 3.65 | 3.66 | 3.84 | 3.56 |
女 | 3.07 | 3.02 | 2.84 | 3.11 |
年齢 | ||||
40歳未満 | 22.76 | 25.30 | 27.33 | 21.88 |
40–49 | 7.36 | 7.76 | 7.54 | 7.30 |
50–59 | 5.63 | 5.82 | 5.50 | 5.69 |
60–69 | 3.85 | 3.81 | 3.94 | 3.81 |
70歳以上 | 2.76 | 2.77 | 2.77 | 2.76 |
上の表は性別、年齢別のPPIによる胃がんの標準化発生率です。おおむね3倍以上の発生率の増加です。40歳未満では20倍以上も増加しており、年齢と共に発生率の増加は低下しています。
期間 | SIR(95%CI) |
1年未満 | 12.82(12.19〜13.47) |
1.0〜2.9年 | 2.19(1.98〜2.42) |
3.0〜4.9年 | 1.10(0.91〜1.31) |
5年以上 | 0.61(0.52〜0.72) |
上の表はPPI使用期間との発生率との関連です。1年未満が最も発生率の増加が激しいです。
胃がん | 噴門部がん | 非噴門部がん | |
すべて | 3.38 | 3.55 | 3.33 |
胃食道逆流 | 3.04 | 3.84 | 2.78 |
消化性潰瘍 | 8.75 | 3.51 | 10.45 |
胃十二指腸炎 | 3.68 | 2.71 | 3.99 |
消化不良 | 3.07 | 3.10 | 3.07 |
ヘリコバクター・ピロリ | 9.76 | 4.19 | 11.67 |
ピロリ菌なし | 2.91 | 3.50 | 2.73 |
NSAID使用 | 1.82 | 2.07 | 1.75 |
NSAID使用のみ | 1.41 | 2.29 | 1.14 |
アスピリン使用 | 2.42 | 2.73 | 2.33 |
アスピリン使用のみ | 1.93 | 2.73 | 1.68 |
上の表はPPI使用の適応症別です。ピロリ菌感染で最も発生率が高いのですが、消化性潰瘍でも非常に高く、逆流症でも3倍以上です。しかも、NSAIDsやアスピリンによる消化管出血予防に対しての使用であっても2倍前後発生率が高まります。
食道がんと同じくH2ブロッカー単独では発生率の増加はありませんでした。
胃がんのほとんどはピロリ菌感染が原因と言われていますが、ピロリ菌がない場合でもPPIにより胃がん発生率は増加しています。食道がんと同じように、胃酸分泌が強力に抑制されるため、胃のpHは高くなり、そのため本来の胃の腸内細菌叢が崩れ、変化したために胃がんが起きるのではないかと思われます。
無駄なPPIはすぐに中止を検討しましょう。
「Maintenance therapy with proton pump inhibitors and risk of gastric cancer: a nationwide population-based cohort study in Sweden 」
「プロトンポンプ阻害薬を用いた維持療法と胃がんのリスク:スウェーデンにおける全国集団ベースコホート研究」(原文はここ)
イヤもうなんて言うか、一年以上前になりますが、先生のご助言が無かったら私は今でもPPIを服用し続けていたかも知れません。というか、たぶん続けていたでしょう。
当時重症の逆流性食道炎で、食道癌が怖くて治療していたのに、それがまさかの逆効果^^;
念のため年に一度は胃カメラで確認を続けていこうと思いますが、糖質制限のかいあって現在では全く症状はありません。
先生にはランニングの楽しい世界にも導いて頂いて^^何度お礼を申し上げても足りないくらいです。
ねけさん、コメントありがとうございます。
症状が無くなって良かったですね。私は好き勝手なことを書いているだけです。
何を信じるかはそれぞれなので、ねけさんがご自身で選んだ答えが良かったのです。
PPIの病気リスク増加の第3弾(もう4~5弾?)近日リリースです。お楽しみに。