甲状腺がんとインスリン抵抗性

以前の記事「米国の若年成人における肥満関連がんの割合の急激な増加」の中で、アメリカで甲状腺がんが全ての世代で増加していることを書きました。

アメリカだけでなく、世界で増加しているのですが、その一部は恐らく超早期に発見できることが増加したことによる可能性があります。

上の図はがんの統計2017からのものです。日本でも甲状腺がんは男性でも女性でも増加しています。ただ、女性の方がかなり多いです。

早期診断以外に甲状腺がんの増加の要因は何でしょうか?ひとつの大きな要因として考えられているのがインスリン抵抗性です。

様々な研究で、肥満と甲状腺がんの関連が指摘されています。ある研究ではBMIが5上昇すると、リスクが男性で1.33倍、女性では1.14倍になるそうです。男性の方が肥満との関連は強そうです。他の研究では正常のBMIと比較してBMIが35以上だと甲状腺がんが女性で1.74倍、男性で2.14倍でした。

肥満に伴い増加するレプチンや低下するアディポネクチンも甲状腺がんの増加と関連しているとも考えられています。

しかし、それらの大元にあるのはインスリン抵抗性です。(図は原文より)

上の図はこの論文より

上の図は横軸が甲状腺刺激ホルモン(TSH)の濃度、縦軸が甲状腺腫瘍が悪性であった割合です。白いバーが全ての患者、黒いバーがレボチロキシンという甲状腺ホルモンの投与患者を除外したものです。ちなみにTSHの基準値は0.500~5.000μIU/mLです。基準値以上のTSH5以上だけでなく、基準値範囲の高めの数値、1.4以上あると悪性の割合が有意に高まります。

甲状腺細胞の分裂、増殖はTSHだけでなく、インスリンやインスリン様成長因子(IGF)などで調整されているのではと考えられています。甲状腺がんの細胞ではしばしばインスリン受容体やIGF-1受容体が過剰発現しているようです。

インスリン抵抗性があれば当然高インスリン血症を来します。それによりTSHも増加し、甲状腺がんの危険因子となる可能性が高くなるのです。

しかも、インスリンは血管内皮増殖因子の発現を刺激して、血管新生を増殖させるので、腫瘍の成長を促進してしまいます。

さらに、インスリン抵抗性はヨウ素欠乏を引き起こすと考えられています。ヨウ素は甲状腺ホルモンの合成と調節に必須です。ヨウ素の摂取量は過剰であっても重度の欠乏であっても甲状腺がんと関連しているようです。インスリン抵抗性はヨウ素の吸収を低下させるのではと考えられています。

また、エストロゲンはインスリン増殖作用を増強するので、女性に甲状腺がんが多い可能性があります。

インスリン抵抗性と慢性自己免疫性甲状腺炎(橋本病)との関連も指摘されています。橋本病などで陽性率の高い抗TPO抗体はインスリン抵抗性が高いPCOS(多嚢胞性卵巣症候群)では19.6~26.9%と高頻度です。(対照では3.3~8.3%)

2型糖尿病では橋本病の発症率が10~43%と高率であり、肥満でも10数%の発症率です。

2型糖尿病ではTSHが通常よりも高値を示すという報告もある。

インスリン抵抗性と高インスリン血症によりヨウ素欠乏、TSHの上昇、エストロゲンのシグナル伝達、慢性自己免疫性甲状腺炎を含む他の甲状腺がんの危険因子に影響を与えると考えられます。

インスリン抵抗性の最も大きな原因は糖質過剰摂取です。糖質制限は甲状腺がんからあなたを守ってくれる可能性が高いでしょう。

「Insulin Resistance: Any Role in the Changing Epidemiology of Thyroid Cancer?」

「ンスリン抵抗性:甲状腺癌の疫学の変化における何らかの役割?」(原文はここ

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