糖質制限で筋肉は減らない その1 糖質制限、高タンパク高脂質食の糖新生

糖質制限の反対派はいまだに「糖質制限をすると筋肉が減る!」と言っています。しかし、糖質制限では自ずと高タンパク質、高脂質の食事となります。糖質で摂っていたエネルギーを他の栄養素で摂るためです。タンパク質をいっぱい摂って筋肉が減るとは考えられませんし、私は何年も糖質制限を続けても筋肉は一向に減る気配はありません。

また、著書や以前の記事「エネルギー消費量は食事で変わる」で書いたように、通常の糖質過剰の食事よりも糖質制限の方がエネルギー消費量が増加すると言われています。

今回の研究ではタンパク質30%、脂質70%、炭水化物(糖質)0%という極端な糖質制限ではありますが高タンパク高脂質食と、通常の食事タンパク質12%、脂質33%、炭水化物(糖質)55%の食事を摂った後のエネルギー消費を分析しています。

2つの食事の効果を対比するために、体内グリコーゲン貯蔵は徹底的なグリコーゲン低下運動試験によって予め枯渇させられました。血糖値に差があるかどうか、および糖新生への影響、糖新生に影響を与えるインスリンなどを測定しました。対象は平均23歳の健康な男性10人です。

その結果、内因性グルコース産生、つまりグリコーゲン分解および糖新生に由来するグルコースは、24時間で通常食で226gで高タンパク高脂質食の方が181gと通常食の方が多くなりました。また、内因性グルコースに占める糖新生の割合(fractional gluconeogenesis)と絶対糖新生量(absolute gluconeogenesis)については、糖新生の割合は通常食0.64、高タンパク高脂質食0.95であり、絶対糖新生量は24時間で通常食で145g、高タンパク高脂質食で171gと高タンパク高脂質食の方が高くなりました。さらに空腹時血糖値も通常食で91、高タンパク高脂質食で80と通常食の方が高くなりました。 空腹時インスリンには差が認められませんでした。(図は原文より、表は原文より改変)

通常タンパク食高タンパク食
kcal/日kcal /日 
総エネルギー消費量 2,414 2,421
睡眠代謝率 1,7711,800
安静時代謝率 1,9492,030
食事による熱産生 178230
活動誘発熱発生 466391
エネルギー収支5041

上の表は通常タンパク食と高タンパク、高脂質、低糖質食を食べたときのエネルギー消費です。ほぼエネルギー収支はトントンです。安静時代謝率は高タンパク高脂質食の方が有意に高くなりました。それ以外では違いは認められませんでした。

 通常タンパク食 高タンパク食
摂取 消費/酸化 バランス 摂取 消費/酸化 バランス 
kcal /日 kcal /日 
エネルギー 24652414502465242241
タンパク質 276338-62751562187
糖質 136110613027247-240
脂質8261015-1901706161096

上の表はそれぞれの食事のエネルギー摂取量と、エネルギー消費量及び酸化量、エネルギーバランスを示しています。それぞれの栄養素のエネルギー摂取量と消費及び酸化量を見比べると、タンパク質では高タンパク高脂肪食の方がプラスバランスになっています。当然摂取量が多いので、その分消費も増えますが、筋肉が減るわけがありません。糖質は通常食ではかなりプラスバランスである一方、高タンパク高脂質食では大きくマイナスバランスです。

当然、24時間の呼吸商は、高タンパク高脂質食の方0.76で通常食0.85よりも低くなり、脂肪をよりエネルギーに変換していることがわかります。

上の図は横軸が各食事を比較した時のエネルギー消費量の差です。単位はMJになっているので、240をかけるとkcalになります。縦軸は各食事の糖新生の差です。そうするとエネルギー消費量の増加は糖新生の増加と非常に関連しているのがわかります。高タンパク高脂質食のエネルギー消費の増加は糖新生増加と大きく関連するのです。

平均して、高タンパク高脂質食では、糖新生により26gのより多いグルコースが生成され、その結果約35kcalのエネルギー消費量の増加をもたらしたと考えられるようです。通常食と比較した高タンパク高脂質食後のエネルギー消費量の増加は約82kcalであったので、増加したエネルギー消費量に対する増加した糖新生の寄与は約42%であったと考えられます。26gのグルコースのエネルギー含有量はおよそ106kcalであるので、糖新生を通してグルコースを生成するためのエネルギーコストはグルコースのエネルギー含有量の約33%と考えられます。

つまり、糖質制限をした場合、高タンパク高脂質食になりますが、血糖値の維持のために糖新生が活発になります。その糖新生の増加がエネルギー消費量の増加につながっているのです。そして生産されたグルコースのエネルギーの内、3分の1程度が糖新生をするためのエネルギーとして使われる計算となります。

糖質制限では糖新生に意外とコストをかけていることがわかります。そしてエネルギー消費量は増加しますが、タンパク質はプラスバランスなので、しっかりタンパク質を摂っているのであれば筋肉が減少することはあり得ません。筋肉が減少するのはカロリー制限です。

「Gluconeogenesis and energy expenditure after a high-protein, carbohydrate-free diet」

「高タンパク質、炭水化物フリー食後の糖新生とエネルギー消費」(原文はここ

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コメント

  1. nao より:

    糖質制限で筋肉が減るは、「間違った糖質制限」(必要なエネルギー量を取らない)
    で怒ることですよね。この辺はやはりちゃんとした糖質制限を知ってもらう必要が
    あるのででしょうね・・・・・

    • Dr.Shimizu より:

      naoさん、コメントありがとうございます。

      そうですね。仰る通り、糖質制限+カロリー制限をしてしまう間違いが非常に多いです。
      カロリー神話は非常に根強いですから。

  2. ターヤン より:

    いつも有益な情報ありがとうがざいます。
    先生もご存知の筋肉博士の山本氏が、糖質制限をしてタンパク質を取りすぎると、アミノ酸を材料にして糖新生が活発になって糖質を作り出すので、なかなかケトーシスにならないと言ってます。https://youtu.be/Z3AeykXkrro
    僕の今までの理解でも、糖新生が活発になるということは、すなわち筋肉が減るという解釈でした。
    もう少しだけ簡単に説明していただけると助かります。

    • Dr.Shimizu より:

      ターヤンさん、コメントありがとうございます。

      糖新生は活発になりますが、筋肉を分解してまで糖新生を起こしているとは思えません。
      糖質制限ではグリセロールも豊富ですし、食事からのタンパク質も豊富なので、筋肉を減らす必要はないのです。
      栄養的ケトーシスの定義をケトン体値500μmol/Lとするなら、しっかりと糖質制限をすれば多くの人はタンパク質を摂ってもケトーシスとなるでしょう。
      私は500以上のこともあれば500以下のこともあります。タンパク質を2g/kg以上摂ることが多いですから。
      もしケトン体値500以下であっても、通常の人よりは高いでしょう。個人差だと思います。
      てんかんやがんの治療のケトン食ではかなり高いケトン体になります。