スタチンの筋肉の副作用は実はものすごく多い

アメリカでは、スタチンの使用者を対象とした調査が行われております。USAGE調査(「アメリカでのスタチンの使用と教育のギャップについて」)は、アメリカで実施された10,100人以上のスタチン使用者を対象とした調査です。

その中で、患者がスタチンを中止した理由について書かれています。(図はUSAGE調査のホームページより)

上の図はスタチンを中止した理由について示しています。横軸の中止理由は、左から副作用、コスト、有効性(の欠如)、その他、わからないまたは覚えていない、です。そうすると62%とダントツで副作用で中止した人が多いのがわかります。薬の値段のコストは17%、有効性を感じないという理由は12%と非常に少ないことを考えると、いかに副作用で中止した人が多いか、ということです。

以前の研究では、スタチン使用者の50%が最初の処方から数か月以内に中止し、1か月後に最大25%が中止することが示されています。新規使用者の75%近くが1年目の終わりまでに治療を中止しているそうです。日本ではここまでではないでしょう。

この調査の回答者の10人中3人は、筋肉痛や筋力低下の副作用を経験し、34%は医師に相談せずにこれらの副作用のためにスタチンの使用をやめました。つまり、実に3割の人が筋肉の副作用を経験しているのです。

しかし、例えば「クレストール」というスタチンの添付文書には、臨床試験での筋肉痛の副作用な3.2%、CPK上昇は1.6%であると書いてあります。また使用成績調査ではCK上昇2.3%、筋痛1.4%と書いてあります。つまり、添付文書に書かれている筋肉の副作用の割合は現実の10分の1程度しか起きないような書き方です。非常に大きなギャップです。

「3割は多すぎるのでは?」と感じるかもしれませんが、ヨーロッパの動脈硬化学会の論文でもそれに使い数字で、筋肉の症状の訴えは7~29%の発生率であると書かれています。(その論文はここ

今回の研究で示すことが、実際の筋肉の副作用の発生率多さと臨床試験やスタチン研究、添付文書での発生率の低さのギャップを理解するのに役立つと思います。

今回の研究はシンバスタチン(商品名:リポバス)のRCT(ランダム化比較試験)です。RCTはエビデンスレベルの非常に高い研究として考えられますが、操作をすれば、いくらでも都合の良い結果が出せるという良い例です。20,536人の心血管リスクの高い個人を対象としたランダム化試験で、1日40mgのシンバスタチンをプラセボと比較して副作用の発生率はどうかの研究です。

対象者は4週間のプラセボとその後の4〜6週間の1日シンバスタチン40 mg服用という、無作為化前の「慣らし」治療を受けました。そして、この慣らし治療の段階でランダム化の前に11,609人の患者がこの研究から脱落しているのです。つまり、この研究は最初の段階では32,145人だったのですが、3分の1はランダム化されずに、脱落して研究の対象外となっているのです。

では、その脱落理由は?はっきりとわからない理由がほとんどで、研究に途中で不参加をした人が非常に多くいました。8,171人は慣らし治療中に脱落し、3,438人は慣らし治療後にランダム化のための受診に訪れた際に脱落しています。その3,438人の理由は下記のようです。(表は原文より改変)

理由全体
慣らし治療中に診断されたがん28
慣らし治療中の狭心症、心筋梗塞、脳卒中での入院94
脂質低下薬開始271
新しい原因不明の筋肉症状531
その他の有害事象161
患者の希望または長期に参加することが疑わしい2992
患者の医師が参加を思いとどまらせた25
他の理由135
  
合計3438

つまり、この段階で531人もの筋肉の症状が発生した人が脱落しているのです。さらに患者の希望であったり、理由が不明の人の中にも恐らく多くの筋肉の症状を経験している人がいると思われます。途中で脱落した8,171人の中の理由不明の中にも、かなりの数の筋肉の副作用を示して人はいるのではないかと推測されます。

そして、ランダム化後の研究の結果では筋肉症状は10件、0.1%の発生にとどまり、プラセボとの差は0.06%であるとし、発生率は5年間で0.1%未満で非常にまれな副作用だと結論しているのです。明らかにおかしい!

あらかじめ筋肉の副作用を示す人を脱落させておいて、残りの人だけでランダム化試験を行うという、非常に恣意的な研究です。恐らく、添付文書の筋肉に関する副作用の少なさも、このような操作がどこかで行われていると考えられます。つまり、都合の悪い対象者は、何らかの理由を付け、脱落させれば良いのです。これがRCTの実際です。

以前の記事「スタチンはあなたの体の重要な機能を低下させる」で書いたように、スタチンは非常に有害な作用を示します。コレステロールを下げることは本当に必要でしょうか?

スタチンでの筋肉に関連する副作用は非常に多く起きていると思われます。そして「ホーキング博士とスタチン」で書いたように、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の原因の一つはスタチンだと考えられます。

「Effects of simvastatin 40 mg daily on muscle and liver adverse effects in a 5-year randomized placebo-controlled trial in 20,536 high-risk people」

「20,536人の高リスク者を対象とした5年間の無作為化プラセボ対照試験における筋肉および肝臓の副作用に対するシンバスタチン40 mgの毎日の効果」(原文はここ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です