今年発表されるはずの厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年度版)」によると、成人の1日の塩分摂取量の目標量は、男性で7.5g未満、女性で6.5g未満です。各種ガイドラインで高血圧や慢性腎臓病(CKD)の重症化を予防するには、男女ともに1日6g未満が望ましいとされています。
では、健康な人が1日の推奨量とほぼ同量の塩分6g一気に摂取したらどうなるのでしょうか?10人の健康なボランティア(男性6人、女性4人、平均年齢39±4歳)を対象として、10時間の絶食後、朝に実験に参加してもらいました。彼らは、 400mlの野菜スープを6gの食塩を含むものと含まないものに無作為に割り付けられました。そして、次の訪問の際に、もう一方のスープを飲みました。 スープは20分以上かけて飲まれ、試験中に他の液体は摂取されません。(図は原文より、表は原文より改変)
塩 | 塩なし | |
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重量(kg) | 80.4±4.5 | 80.5±4.5 |
血圧(mmHg) | 101/66±4/2 | 108/70±6/2 |
脈拍(/分) | 70±5 | 67±3 |
ナトリウム(mmol/L) | 138.9±0.6 | 139.7±0.7 |
塩化物(mmol/L) | 105.8±0.5 | 105.9±0.9 |
浸透圧(mosmol/L) | 278.2±1.4 | 279.3±1.8 |
尿中ナトリウム濃度(mmol/24h) | 105±18 | 106±16 |
上の表はベースラインの状態です。食塩なしのスープを飲む前の血圧は塩なしのときと比較して、やや高くなっていましたが、それ以外は違いはありません。注目すべきは絶食後だからなのか、ナトリウムと浸透圧がやや低めであることです。
上の図は▲が塩なしスープ、■が塩の入ったスープを飲んだ後の血中のナトリウムの推移です。4時間にわたり、塩入スープではナトリウムが上昇しました。でもその上昇はわずか2程度です。具体的には、塩入りスープはナトリウム濃度を2.12mmol/l増加さ、138.94から141.06になりました。でも、これって正常値ど真ん中ですよね。何ら問題のない数値です。
塩なしスープはナトリウム濃度を1.22低下させ、139.72から138.49になりました。これも正常範囲ですが、より下限に近付いています。
上の図は、浸透圧の推移です。塩入りスープは血漿浸透圧を3.80mosmol/l増加させ、 278.28から282.07になりました。正常値は約280~290なので、塩入スープで正常範囲に戻っただけです。
塩なしスープは血漿浸透圧を4.37低下させ、279.30から274.93になっています。低すぎます。
上の図は、血圧の変化です。上が収縮期血圧、下が拡張期血圧です。収縮期血圧で見ると、塩入スープでは、60分後には14mmHg程度増加しています。塩なしスープでも6mmHg程度増加していますので、その差は8mmHg程度です。絶食だったので脱水傾向にあったのが是正されて、血圧が上昇したのでしょう。
ベースラインで塩入りスープの血圧は101mmHg程度だったので、塩のスープのおかげで115mmHgまで血圧が回復したように見えます。全くの正常値です。6gの塩のために確かに血圧は増加しますが、正常範囲の中で、全く問題ない状態になっているだけです。血圧が上がること=有害ではありません。
上の図はナトリウムの変化量と収縮期血圧の変化の関係を示しています。ナトリウム濃度の変化が大きいほど、血圧の変化も大きく、ナトリウム濃度が1mmol/l増加すると、収縮期血圧は1.91mmHg上昇することになります。まあ、でも図を見ても個人差が大きいようですね。30mmHg以上上がった人もいれば、逆に血圧が低下した人もいます。
塩なしスープ摂取後の血漿ナトリウム濃度の変化と収縮期血圧の変化との関係は有意ではありませんでした。
これほどの量の食塩を一気に摂取してもこの程度です。6gの塩分は恐らくラーメン1杯分でしょう。問題ありますか?
血圧の変動を塩分摂取だけの観点から見ても仕方がありません。ほとんどの人は様々なものを食べています。そのときの複合的な変化が血圧に現れているだけです。そして、実際には食後に血圧が低下する人は少なくありません。塩分が血圧にそれほど影響するのであれば、食後に血圧が低下することはないでしょう。
インスリン分泌、交感神経の活性化など、トータルで考えるべきですし、急性期の変化と長期に渡る慢性的な変化は別に考える必要があると思います。
高血圧の原因は糖質過剰摂取でしょう。
「Dietary salt influences postprandial plasma sodium concentration and systolic blood pressure」
「食事中の塩分は食後血漿ナトリウム濃度と収縮期血圧に影響を与える」(原文はここ)
高血圧予防に塩分制限したり
血糖値を気にして何故か
肉食を我慢している方が、
ご飯やパンや麺類は気にせず
食べているのは矛盾してると思うのは、
糖質制限者だけなのでしようか?
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
ブドウ糖は唯一の脳のエネルギー源ですから・・・というウソを信じている人がほとんどですから。