またまたコレステロールパラドックス

医療の世界は都合が悪いことはパラドックスと呼びます。前提が間違っていることは認めません。

コレステロールは高い方が長生きですが、医療の世界ではコレステロールは悪者です。コレステロールが高い人が長生きしてしまっては自分たちの仮説が成り立ちません。だから、パラドックスと呼ぶしかありません。

今回の研究では、イタリアのサルデーニャの長寿の人を対象にしています。90代以上の168人(81人の男性、87人の女性)で、年齢範囲は、男性が90~107歳、女性が90~106歳でした。スタチンまたはループ利尿薬を服用している人は除外されています。

男性の85.2%と女性の69.0%は、週に3回以上身体活動を行っていました。素晴らしいです。

総コレステロール値は89mg/dLから324mg/dLの範囲で、LDLコレステロールは31mg/dLから254mg/dLの範囲でした。(図は原文より、表は原文より改変)

脂質パラメータ(中央値、範囲)男性女性
総コレステロール、mg/dL199.5 [89, 314]202.5 [89, 324]
HDLコレステロール、mg/dL38 [23, 68]39 [23, 74]
中性脂肪、mg/dL127 [52, 304]130.5 [52, 304]
LDLコレステロール、mg/dL129.9 [48, 245]132.8 [31, 254]
VLDLコレステロール、mg/dL26 [10.4, 60.8]26.1 [10.4, 60.8]
非HDLコレステロール、mg/dL160 [57, 274]161 [48, 285]
中性脂肪/HDL3.21 [1.09, 8.44]3.12 [1.13, 8.44]
LDL/HDL3.32 [0.6, 7.2]3.39 [0.8, 6.5]
男性の中央値の総コレステロールは199.5mg/dL、女性は202.5mg/dLでした。LDLコレステロールの中央値は男性で129.9mg/dL、女性で132.8mg/dLでした。
男性1人、女性1人は、家族性高コレステロール血症の診断に一致するコレステロール値を示し、それぞれLDLコレステロールは254mg/dLと245mg/dLでした。専門家はこんな高いコレステロール値で長生きしてもらっては困るかもしれませんね。
上の図は、性別ごとに分けた脂質パラメータのベースラインの分布を示しています。LDLコレステロールのピークは150mg/dL付近ですね。ちなみに、LDLコレステロールの基準値は70~140mg/dL未満です。基準値越えの人がたくさんいるようです。ただ、HDLコレステロールもかなり低めで、中央値が38~39です。また中性脂肪値も高めで、中央値127~130です。
上の図は、LDLコレステロールおよびHDLコレステロール値に応じ生存分析を示しています。aは男女とも、bは男性、cは女性です。LDLコレステロールが130mg/dL を超え人の生存は有意に長くなりました。130以上の方が1年前後長生きできるようです。
一方、HDLコレステロールによる統計的に有意な差はありませんでした。その他、非HDLコレステロールが158mg/dLを超えたり、総コレステロールが200~249mg/dLのカテゴリの人も、有意に長生きでした。

LDLコレステロールは130未満と比較して130以上では死亡の可能性は0.606倍でした。

コレステロールは様々な機能を持ちます。コレステロールはすべての細胞の不可欠です。特に、老化した細胞でのコレステロール値の上昇は細胞を安定させる可能性があります。コレステロールは、コルチゾール、エストロゲン、プロゲステロン、テストステロンなどのホルモンの前駆体です。これらのホルモンは、代謝や免疫など、高齢者のいくつかの機能に重要です。コレステロール値の低下は、加齢に伴うホルモン欠乏を悪化させる可能性があるでしょう。

コレステロールは、日光によるビタミンD合成の前駆体です。ビタミンDは、高齢者の免疫系機能、骨の健康、および全体的な健康に重要な役割を果たしていると考えられます。

さらに、コレステロール値が高いと、免疫システムが強くなり、感染症や病気に対する防御や回復力が向上する可能性があるでしょう。

また、コレステロールは脳の健康に不可欠で、特に、コレステロール値が低いと、認知機能の低下やアルツハイマー病などの病気と関連しているとされています。

今回の研究では、スタチンで治療していない90歳以上の高齢者で、総コレステロール、LDLコレステロール、非HDLコレステロール値と6年生存率との間に正の相関関係がありました。さらに、100歳以上になった参加者2名は、驚くべきことに家族性高コレステロール血症の診断と一致するコレステロール値(LDLコレステロール>240 mg/dL)を示しました。スタチンも飲んでおらず、LDLコレステロールが240を超えているのに、100歳以上になっているのです。ただ、90歳以上の彼らはもちろん糖質制限でもありません。糖質制限よりもHDLは低いし、中性脂肪は高いし、BMIも24~28が長生きです。

逆に言えば、90歳~100歳以上まで生きる人は、コレステロールとか中性脂肪とかBMIとかあんまり関係ないのかもしれません。以前の記事「100歳以上の高齢者では医学的な心血管危険因子から見ると不健康?」で書いたように、医療が決めた心血管危険因子の数が多くなるほど生存率が高くなります。100歳以上の長生きの人にとっては医療の危険因子は逆に保護因子であるかもしれないのです。

ある程度の年齢を超えたら、医療に頼らず、運動をして、食べたいものを食べて、ストレスをできる限り減らし、毎日笑っていられる暮らしが一番かもしれません。医療が決めた数値だけに囚われると不健康になってしまうかもしれません。

コレステロールって本当に低ければ低いほど良いのでしょうか?ご自身でよく考えましょう。

「The Cholesterol Paradox in Long-Livers from a Sardinia Longevity Hot Spot (Blue Zone)」

「サルデーニャ島の長寿ホットスポット(ブルーゾーン)の長寿者のコレステロールパラドックス」(原文はここ

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