ゾルピデム(マイスリー)による自殺、健忘行動および認知症

眠れないからといって安易に睡眠薬に頼っていませんか?ベンゾジアゼピン系の薬はすぐに依存をもたらしますので、注意が必要です。(「ベンゾジアゼピン(眠剤や安定剤)は1か月で半数が依存になる」参照)

そして、長期的に様々な影響をもたらします。(「睡眠薬や抗不安薬のベンゾジアゼピンによって起きる長期的な影響」参照)

では、ベンゾジアゼピンよりは依存が少ないと言われている、ゾルピデム(マイスリー)はずっと飲んでいて大丈夫なのでしょうか?もちろん依存性はあります。

そして、最近、動物実験上ですが、ゾルピデム(マイスリー)が「脳のゴミ排出システム」を妨げる可能性があることが指摘されました。(ここ参照)

以前の記事「睡眠はあなたの脳を洗い流す」で書いたように、寝ている間に、脳内でニューロンは静かになり、数秒後に血流が増加します。その後、脳脊髄液(CSF)という液体が流入し、リズミカルなパルス波で脳を洗い流しているのです。アミロイドβは認知症の原因ではないのですが、アミロイドβの蓄積は脳にダメージを与えるでしょう。そのような老廃物を排出するシステムをゾルピデムは妨げている可能性があります。脳を洗い流すシステムはグリンパティックシステムというそうです。

グリンパティックシステム:脳脊髄液が脳表クモ膜下腔から動脈周囲に沿って脳内に進入し、アストロサイト足突起表面のアクアポリン4チャネル依存性に脳細胞外腔に入り間質液と混合された後、静脈周囲腔に入り、脳表クモ膜下腔に戻る。その後一部はリンパ管へと排泄されるという仮説。ここ参照)

そして、そこにはノルエピネフリンという物質の分泌が大きくかかわっているようなのですが、そのノルエピネフリンの分泌の振動が影響するようです。

ゾルピデムはノルエピネフリン振動とグリンパティックの流れを抑制してしまい、グリンパティックシステムを低下させるようなのです。そのため、認知症につながる可能性が指摘されたのです。

また、ゾルピデムは夢遊病、夢遊運転、夢遊料理、夢遊食事、夢遊会話、まれに夢遊性交などの複雑な行動と関連付けられており、通常はその出来事に対する順行性健忘を伴います。(ここ参照)

ゾルピデムの慢性使用中に自殺願望的な健忘行動を呈した症例が報告されています。(ここ参照)

さらに、ある研究では、ゾルピデムを服用してから一定期間(80か月以上)が経過すると、自殺リスクは約2倍になりました。(ここ参照)

また更に以前の記事「睡眠薬と死亡率およびがんとの関連」で書いたように、すべての睡眠薬およびゾルピデムは死亡率、がん発症率のリスクが増加しますが、驚くべきことに、ゾルピデムをたった年間18錠未満の使用でも死亡リスクは3.93倍にもなっています。使用量が増加するとさらにリスクは増加し、132錠を超えると5.69倍死亡リスクが増加します。

睡眠薬に関しては、オレキシン受容体拮抗薬などに主役が移ってきているので、ゾルピデムを使用している人は少ないかもしれません。でも、もしまだ使用している人がいるのであれば十分に注意してください。

不眠が続くということは、それだけですでに何らかの体の異常、代謝の異常が存在すると思います。生活習慣、特に食習慣を変える必要があるでしょう。

「Norepinephrine-mediated slow vasomotion drives glymphatic clearance during sleep」

「ノルエピネフリンを介した緩やかな血管運動が睡眠中のグリンパティッククリアランスを促進する」(原文はここ

2 thoughts on “ゾルピデム(マイスリー)による自殺、健忘行動および認知症

  1. 薬はある程度覚悟の上で
    現在の不調改善を優先するの
    でしょうけれど、
    医療者側は(真実を伝えたら患者様が減るでしょうから)
    敢えて副作用は言わないと思うので
    怖いですね。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      多くの日本人は医療に頼り過ぎです。
      医療を受けることはリスクを伴うことをもっと理解するべきです。

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