人生100年時代と言われます。100歳以上でも生きている高齢者は健康なのでしょうか?健康とは何なのでしょうか?
医学が決めた健康的である、ということを見直さなければならないかもしれません。
今回の研究はイタリアの南部の100歳以上の高齢者を分析しています。(図は原文より)
上の図はそれぞれの危険因子による生存率です。aは高コレステロール血症、bは糖尿病、cは高血圧、dは喫煙、eは心血管危険因子の数です。明らかに高コレステロール血症がある人の方が生存期間が長くなっています。血圧もやや高血圧がある方が初期の頃は生存率が高いです。心血管危険因子の数は多くなるほど生存率が高くなります。危険因子が多いほど長生きというのは非常に矛盾しています。つまり、100歳以上の長生きの人にとって危険因子は逆に保護因子です。
上の図はaがミニメンタルステート検査という認知症の検査です。点数が低いほど認知機能が低下しています。bはADL、つまり日常の活動性です。cは握力です。dは栄養不良です。これらはどれも思った通り、認知機能が高く、日常の活動性が高く、握力が高く、栄養状態が良いほど生存率が高くなります。特に栄養状態は生存率に大きく寄与しています。
上の図は死亡のリスク比を示しています。aは総コレステロール、bはLDLコレステロール、cはHDLコレステロール、dは収縮期血圧、eは拡張期血圧です。拡張期血圧は76.6mmHgを最低としてU字曲線を描いています。HDLコレステロールは58mg/dL を最低として、それ以上だとリスクが高くなります。総コレステロールとLDLコレステロール、血圧は高くなればなるほど死亡リスクが低くなります。総コレステロールでは195mg/dL以上、LDLコレステロールでは113mg/dL以上、収縮期血圧は133.3mmHg以上でリスクが高くなります。
現在の医療では、高齢になってきたときにでさえ薬を使ってコレステロールを低下させ、血圧を低下させることを目標にしています。しかし100歳まで生きている人のこのようなデータを見ると、医学的な危険因子というものが矛盾しているように思えます。
「LDLコレステロールを低下させることの有益性の証拠はない!」で書いたように、LDLコレステロールを低下させる有益性の証拠はありませんし、「コレステロール値に一喜一憂しないために」「コレステロールを恐れ過ぎてはいけない LDLコレステロール値が低いほど死亡率が上がる!」などで書いたようにLDLコレステロール値が低いほど死亡率が上がるというのはもはやゆるぎない事実ではないでしょうか?
血圧に関しても、「高齢者は血圧を下げすぎてはいけない! その1」「高齢者の血圧が高いのは意味がある。何でも正常値にする危険性」などでも書いたように、高齢者の血圧を下げ過ぎることは非常にリスクのあることです。
HDLコレステロールに関しては確かに高すぎることもリスクが高くなるという研究はあります。しかし、私は「HDLコレステロールは高ければ良いってもんじゃない? その3」などで書いたようにHDLの質の問題があります。アルコールの摂取量が増加するとHDLが増加します。しかし、そのHDLは恐らく質が低いでしょう。LDLもHDLも質が重要なのではと考えています。
今回の結果は、危険因子が多いほど生存率が高いなんて、非常に面白い結果であり、よく考えるべき結果です。健康は決して数値だけでは決定できません。
いずれにしても、定説となってしまった、高血圧悪玉説は間違いである可能性が高いです。特に高齢者には当てはまりません。程度問題ではありますが、高齢者では140~150の血圧なんて当たり前であり健康的であるのです。
高コレステロール悪玉説は年齢にかかわらず、間違いです。科学的根拠に乏しく、スタチンの企業戦略にしか思えません。
高齢になったら薬の断捨離が必要ですね。
「Cardiovascular risk profiling of long-lived people shows peculiar associations with mortality compared with younger individuals 」
「長寿者の心血管リスク プロファイリングは、若年者と比較して死亡率との特有の関連性を示してい ます」(原文はここ)