コレステロールの神話は、いまだに強烈に多くの人に根付いています。スタチンで収益を上げたい製薬会社が多額の資金を使ってプロモーションを行い、医師までも洗脳した結果でしょう。これまでは本当に上手くいきました。(参照「スタチンは誇大広告で成り立っている?」)
しかし、近年どんどんとスタチンの効果に疑問を持ったり、コレステロールが下がったにもかかわらず心血管系疾患になる人が多いことがわかり、コレステロール悪玉説が崩壊してきています。
コレステロールは非常に人体にとって重要な物質です。人間を形作る細胞の膜の材料ですし、ホルモンの原料にもなります。それを、根本的な問題を解決せずに、無理やり低下させれば、悪影響があって当たり前でしょう。
この研究では、60歳以上の人、合計68,094人で、LDLコレステロールが全死因または心血管系疾患での死亡のリスク要因として調査された30の集団を含む19のコホート研究を調べました。対象者の92%を占める16の集団でLDLコレステロールと全原因死亡率との逆相関が認められました。それ以外では関連は認められませんでした。
つまり、LDLコレステロール値が低い方が死亡率が高く、LDLコレステロール値が高い方が死亡率が低いのです。
さらに、2つの集団ではLDLコレステロール値が最も低い群が心血管系の死亡率が最も高いという結果でした。
これまでのコレステロール仮説とは全く逆の結果です。それでもまだあなたはコレステロールを下げ続けますか?スタチンを飲んでも心血管疾患になった場合、この結果を合わせて考えれば、「コレステロールを薬で下げても無駄なんだな」と普通に考えれば思います。しかし、コレステロールしか見ていない医者は「スタチンをもっと強力に使い、もっとLDLコレステロール値を下げなければダメだ!」と思ってしまうわけです。(本当は思っていなくても、薬を処方するためにはその考えを貫き通さなければダメなのかもしれません。)
生物はホメオスタシスといって、体を一定の状態に保つメカニズムを持っています。もちろんそのメカニズムも限界があるので、過剰な負荷がかかれば破綻します。その一つが糖質過剰摂取によるインスリン抵抗性とそれに続く様々な疾患です。
そして、体の中のメカニズムはあることに有利な場合、他のあることには不利になる場合があります。だから、ふたつのうちどちらかを過剰にひいきしてしまえば、もう一方が反乱を起こし、それによる病気になります。今は簡単に「ふたつのうち」と書きましたが、実際には本当に複雑に絡み合っているので、そのすべてがまだ解明されているわけではありません。
コレステロールもLDLコレステロールの中に確かに悪さをするものがあります。しかし、それは全てのLDLコレステロールが悪いことを意味しません。それにもかかわらず、LDLコレステロールを標的として治療することは、良いLDLコレステロールも減ることにより、そのしわ寄せが別の面で現れます。そして、実際にはLDLコレステロール値が低い方が死亡率が高くなるのです。
ある一人の「シミズ」という人間が犯罪を犯したとしましょう。警察が「シミズという名の人間はみんな犯罪を犯す可能性が高いから、全員逮捕だ!」となってしまったら、善良な「シミズ」も捕まってしまいます。善良な「シミズ」の中に社会に非常に貢献している人もいるかもしれません。その人まで逮捕されたら、社会に打撃があります。
LDLコレステロールは悪者ではありません。LDLコレステロールを「ダークサイド」に導く「社会」が悪いのです。その「社会」とは「高中性脂肪」の社会です。そしてその高中性脂肪を作り出す黒幕は「糖質」です。もう、このことは仮説ではなく生物学的な事実です。
悪いのは糖質を過剰摂取した結果、中性脂肪が高くなることです。そして、HDLコレステロールが低いことです。これは糖質制限であなたの体の中の「社会」は理想的に変化します。中性脂肪とHDLコレステロール比を2未満、できれば1.3未満にしましょう。2以上の人はすぐにでも糖質を減らしましょう。
「Lack of an association or an inverse association between low-density-lipoprotein cholesterol and mortality in the elderly: a systematic review」
「高齢者のLDLコレステロールと死亡率との関連の欠如または逆相関:系統的レビュー」(原文はここ)