高コレステロール血症の治療薬であるスタチンは本当に効果的なのでしょうか?
新しい報告では20年間追跡調査をした結果、長期的にも利益があると言っています。
「LDL-Cholesterol Lowering for the Primary Prevention of Cardiovascular Disease Among Men with Primary Elevations of LDL-Cholesterol Levels of 190 mg/dL or Above: Analyses from the WOSCOPS 5-year Randomised Trial and 20-year Observational Follow-Up」
「190mg / dL以上のLDLコレステロール値を有する男性の心血管疾患の一次予防のためのLDLコレステロール低下:WOSCOPS 5年無作為化試験および20年間の観察フォローアップによる分析」(原文はここ)
しかし、この研究には非常に不可解なことがあります。結果だけを見れば、20年間の追跡調査で、心血管系の疾患での死亡率が28%低下したとしていますが、これはあくまで相対的リスクであり、絶対的リスクはプラセボ群が9%とスタチン使用群が6.7%であり、実際には2.3%の違いしかありません。絶対リスクと相対リスクでは相対リスクの方が劇的に効果があるように見せることができるので、わざとこのような報告の仕方をします。実際にはほとんど差がないのです。このように誇大広告をすることで、スタチンは売り上げを伸ばしてきました。しかし、効果のほどは疑問です。以前記事にしたようにスタチンのNNTは100を超えています。100人以上治療して初めて1人に効果が得られ、それ以外の人には効果は期待できないのです。
さらに、今回の報告で最初の5年間の治験の後、スタチン群の大部分の患者さんはスタチンを止めていて、約3分の1の人がスタチンを続けていたようです。また逆にプラセボ群の約3分の1の人が治験後の15年間にスタチンを飲んでいたそうです。
そんな状態の20年間の追跡調査で、スタチンの長期的効果が判断できるわけがありません。
誇大広告もいいところだと思います。もうLDLコレステロール値を気にする時代は終わっていると思います。逆にLDLコレステロールが非常に重要だという証拠も多くあるのでまた記事にします。