2型糖尿病発症予測にはBMIより腹囲身長比

BMIは世界的に最も普及している指標と言えます。しかし、筋肉量、体脂肪率や内臓脂肪量が適切に考慮されていません。内臓脂肪の増加はインスリン抵抗性を増加させ、糖尿病発症を促進するでしょう。腹囲は内臓脂肪の蓄積を簡便に評価できます。健診で容易に測定できる項目から求められ、肥満や内臓脂肪を評価できる指標としては腹囲調整 BMI、体形指数(a body shape index:ABSI)、腹囲身長比があります(計算式は以下の通り。図は京都府立医科大学大学のプレスリリースより)

腹囲調整 BMIは BMI と腹囲と組み合わせた指標で、脂肪量に加えその分布も考慮した指標になります。ABSI は BMI と腹囲から計算され、年齢や性別の影響を受けにくい指標です。腹囲身長比は腹囲と身長の比で、中心性肥満の評価に有効です。

今回の京都府立医科大学の研究では、これらの指標のうちどの指標が2型糖尿病発症の予測に最も有用であるのかを分析しました。

55,623 人(男性 115,036 人、女性40,587 人)分のデータを用いて、最大13年間追跡し、それぞれの指標と2型糖尿病の新規発症に関して分析を行いました。追跡期間中に男性8,005人、女性795人が2型糖尿病を発症しました。

上の図は、それぞれの指数が標準的な値より1単位分(1標準偏差)変化した場合の2型糖尿病発症のリスクを示しています。ABSI以外はどれも性差はほとんどなく、リスク増加は1.4倍から1.5倍程度でした。

どの指標が優れているかを分析した結果、男性では腹囲身長比が他の指標よりも曲線下面積が有意に高く、女性では腹囲調整 BMI と腹囲身長比がABSI、腹囲より曲線下面積が有意に高くなりました。男性の腹囲身長比のカットオフ値は0.497、女性の腹囲調整BMIのカットオフ値は18.6 kg/m、女性の腹囲身長比のカットオフ値は0.510でした。

簡易的に考えると、男女とも腹囲身長比0.5未満が一つの目安でしょう。

さらに、新潟大学の研究では、日本国内の18~74歳の56万人の医療ビッグデータを分析し、メタボリックシンドローム診断基準を構成する各項目(腹囲(WC)、血圧、血糖、血中脂質)の基準値を、実際に心血管疾患(虚血性心疾患、脳卒中)を起こしたか否かの結果に基づいて再設定し、それによる修正診断基準を作成しました。(図は新潟大学のプレスリリースより)

上の図は現在の基準と新基準案です。腹囲は現在男性85cm、女性90cmとなっていますが、男性83cm、女性77cmと女性が大きく減少しています。これは私も概ね賛成です。女性の腹囲90cmは大きすぎるとずっと感じていました。でも、本当は身長によって腹囲も変わるので、「身長×0.43」とかにすべきでしょう。また、中性脂肪値とHDLコレステロールについても賛成です。特に女性でこれを達成するには、糖質制限が必要になる人が多いのではないかと思います。女性の収縮期血圧120以上、空腹時血糖90以上というのは厳しすぎで、全く受け入れられませんが。

修正新基準では、⼼⾎管疾患⾼リスク者⾒逃しが⼤幅に減り、特に⼥性において9割⾒逃されていた⾼リスク者をスクリーニングすることが可能となった、と言っています。基準が厳しくなると、医療にとって都合の良い方向に行きがちですが、そのほとんどは本当は医療は必要なく、生活習慣、特に食習慣の改善で対処できてしまいます。薬で対応しようとしては、医療から離れられなくなります。

上の2つの研究の肝は内臓脂肪です。糖質過剰摂取による内臓脂肪の増加は様々なリスクを増加させます。

糖質制限を適切にすれば、内臓脂肪が大きく減少するので、腹囲身長比0.5未満、腹囲男性83cm、女性77cmは容易にクリアできるのではないでしょうか?腹囲身長比0.5以上の場合、腹囲男性83cm、女性77cm以上の場合は、内臓脂肪が多くないか、ポッコリお腹になっていないか、自分自身をしっかりと評価し、食事改善をしましょう。

「Associations between anthropometric indices as complementary predictors and incidence of type 2 diabetes; Panasonic Cohort Study 21」

「補完的予測因子としての人体計測指標と2型糖尿病の発症率との関連性; パナソニックコホート研究21」(原文はここ

「Usefulness of New Criteria for Metabolic Syndrome Optimized for Prediction of Cardiovascular Diseases in Japanese」

「日本人における心血管疾患の予測に最適化されたメタボリックシンドロームの新基準の有用性」(原文はここ

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