止めるな危険?尿酸値を下げる薬の投与中止は投与継続よりも死亡率を高める可能性がある

以前の記事「尿酸を下げる薬フェブリク(フェブキソスタット)は危ない?」で書いたように、フェブリク(フェブキソスタット)はアロプリノールよりも全原因死亡率および心血管死の発生率が高いことが示されています。

その結果が得られたCARES試験のデータを再分析すると、興味深いことがわかります。(ここ参照、下の図もここから)

上の図は、CARES試験において、全原因死亡率が薬中止の前後でどのように変化するかを示しています。死亡率は、上のアロプリノール投与中では0.038人/日(28人/719日)で下のフェブキソスタット投与中では0.049人/日(36人/728日)でした。

治療中止後30日以内に、アロプリノール群46人(1.533人/日)、フェブキソスタット群で58人(1.933人/日)の死亡が発生しました。さらに死亡率は、中止後1か月から追跡終了時まで、アロプリノール群で1.217人/日(235人/193日)、フェブキソスタット群で1.133人/日(238人/210日)でした。アロプリノールとフェブキソスタットの中止後にはおよそ40倍の死亡率の急激な増加が観察されましたが、この現象の正確な原因は不明です。

また、別の再分析した研究を見てみましょう。(ここ参照、下の図もここから)CARES 試験データを使用して、フェブキソスタットまたはアロプリノールの投与中止により、主要な心血管イベント (MACE) および 心血管疾患による死亡が増加するかどうかを分析しました。

6190人の患者のうち、薬投与中にMACEが発生したのは448人 (7.2%)、薬中止後には208人 (3.3%) でした。100人年あたりのMACEの発生率は、投与中は3.11、中止後は6.71でした。下の図のように、投与中よりも中止後のMACE発現リスクが2.32倍高くなりました。

さらに、下の図のように6か月間で見てみると、中止後のMACEは、投与中と比較して1か月以内では7.40倍、6か月以内では5.22倍と有意に増加しました。

また、総患者数6190人中442人が中止後死亡しましたが、中止後6か月以内の心血管疾患死亡率は、非心血管疾患死亡率よりも高く、45.7%対27.9%でした。

このような薬の中止後に起こる、死亡率の増加、心血管疾患の増加の原因の一つは尿酸値の急激な変化、薬をやめたことによる尿酸値のリバウンドになるのではないかと考えられているようです。

上の図のように、確かにリバウンドしています。しかし、1週間後でおよそ1mg/dL、2週間後でも2mg/dL程度です。食事によっても尿酸値が増加することを考えても、これくらいの変化で果たして心血管疾患の発症や死亡率が増加するのかは非常に疑問です。

尿酸値を下げる治療は、MACE、全原因死亡率、腎不全などの臨床結果に利益をもたらさないという研究もあるのです。(それについては次回以降で)

尿酸値を下げても有益でないのに、元に戻ったら有害?なんか変な感じがします。

このような研究を受けて、尿酸値を下げる薬をやめるな!という医師もいるでしょう。飲み始めたら一生止められない薬、止めたら最悪死んでしまう薬なんて怖いですよね。

私は、そんな薬は止めるな!の前に飲むな!と思ってしまいます。

ある研究(ここ参照。学会発表レベルなので注意が必要です。下の図もここから)を見てみましょう。痛風患者における急性痛風発作および/または尿酸値の変動を伴う場合の心血管イベントと尿酸低下薬の開始との関連性を調査しました。アロプリノールまたはフェブキソスタットの投与を開始した痛風患者を対象にしています。投与開始者は、アロプリノールまたはフェブキソスタットの投与開始日の少なくとも60か月前に尿酸降下療法を投与されたことがない患者と定義しました。入院した心筋梗塞、虚血性脳卒中、および脳出血の複合心血管イベントを調査しました。

アロプリノールまたはフェブキソスタットの投与開始前2年以内および投与開始後2年以内に発生した心血管イベント(急性心筋梗塞(3538人)、脳梗塞(5127人)、脳出血(1593人))による入院を特定しました。上の図のように、アロプリノールまたはフェブキソスタットの投与開始前2年間に発生した心血管イベントは4333件(1人時間あたり0.014)で、投与開始前30日間に発生した心血管イベントは1032件(1人時間あたり0.081)でした。また、アロプリノールまたはフェブキソスタットの投与開始後7日以内に、83件の心血管イベント(1人時間あたり0.030)が発生しました。

アロプリノールとフェブキソスタットは通常、急性痛風発作の数週間後に開始されることを考慮すれば、投与開始前30日間に心血管イベントが大きく増加することは、当然のように思えます。痛風発作は強い炎症を起こしますから。しかし、薬開始後7日以内でさえ、通常時のおよそ2倍の心血管イベントを起こすことを考えると、薬で尿酸値を下げることの危険性も考える必要があるでしょう。

尿酸値を下げる薬は始めるときも危険、止めるときはもっと危険。そうであるならば、始めない方が良いでしょう。始めてしまえば、一生医療に依存することになりかねません。

それともう一つ、尿酸値を下げる薬を飲み始めると、痛風発作を起こしやすいことが知られていますが、何か詐欺みたいな話ですよね。尿酸が高いと痛風になると困るから薬を飲み始めたら、逆に痛風になってしまうのですから。尿酸値が急激に低下すると、関節液中の結晶塊の結合がゆるくなり、結晶が脱落して痛風を起こすことが考えられるそうですが、本当のところの機序は不明なのではないでしょうか?

下の図はフェブリクの添付文書に書かれているものです。0~2週ではフェブリクを飲んだ方が痛風関節炎を起こしやすく、2~6週ではプラセボの方が発現割合は高くなりますが、6~10週では再度逆転し、フェブリクの方が痛風を起こしやすくなります。10~16週では40mgだとフェブリクが3倍近い発現率です。2週間ごとくらいに増量してもこんなものです。

痛風関節炎の発現割合
投与群0〜2週以下2週超6週以下6週超10週以下10週超16週以下
プラセボ(38例)0.0%5.3%2.6%2.7%
20mg/日(43例)0.6%(10mg/日)2.5%(20mg/日)4.9%(20mg/日)2.4%(20mg/日)
40mg/日(41例)3.4%(40mg/日)7.5%(40mg/日)
60mg/日(36例)8.8%(60mg/日)
80mg/日(41例)17.9%(80mg/日)

さらに、アロプリノールとフェブリクを比較したのが下の表です。

痛風関節炎の発現割合
投与群0〜12日以下12日超6週以下6週超8週以下
アロプリノール200mg/日(121例)1.7%(100mg/日)3.3%(200mg/日)0.9%(200mg/日)
本剤40mg/日(122例)1.6%(10mg/日)5.7%(40mg/日)3.3%(40mg/日)

アロプリノールよりも断然痛風関節炎の発現割合が高くなっています。つまり、尿酸値を下げる薬、特にフェブリクを開始すると、痛風発作を起こしやすくなり、強い炎症を惹起します。そうすると一部の人では心血管イベントを起こしやすくなるかもしれません。

尿酸値を下げる薬は尿酸値を下げる以外の何らかのメカニズムがあるのかもしれません。それによって痛風を起こしやすくさせたり、急激にその作用が無くなることにより、中止後の死亡率が大きく増加するのかもしれません。

薬は本来の人間のメカニズムの一部を強制的に変えてしまいます。それが良い方に出れば薬の効果と言い、悪い方に出れば副作用と言います。通常は両方が出てしまいますが、副作用が軽微であれば無視され、重篤であれば大騒ぎになります。でも個人差が大きいので、ほんの一部の人で重篤になっても、それは無視されるかもしれません。しかし、本人にとっては当然無視できない出来事です。

薬をやめるリスクもありますが、薬を開始するリスク、飲む続けるリスクの方がはるかに重要なのかもしれません。生活習慣、特に食生活の改善で良くなるのであれば、それをするべきでしょう。安易に薬に頼れば、その後が大変なことになるかもしれません。

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