尿酸を下げる薬、フェブリク(フェブキソスタット)を飲んでいる日本人は多いでしょう。恐らくアロプリノールよりもフェブキソスタットの処方が多いのは日本くらいでしょうから。フェブリクは日本の薬ですから、有能なセールスマンが頑張っています。
しかし、アメリカではこの薬はBoxed Warning(枠組み警告)が付けられています。Boxed Warningは医薬品のリスクについてラベルに記載される警告文で、深刻で、場合によっては命の危険がある副作用を引き起こすリスクが考えられる場合に付けられます。警告文が黒枠で囲まれているので、黒枠警告(black box warning)とも呼ばれています。FDAによる最も強い警告です。
実際にフェブキソスタットを使用している人は知っていると思いますが、なぜ、この薬に強い警告が付けられているかというと、アロプリノールと比較して、死亡率が高いという研究があるからです。その研究、CARES試験を見てみましょう。この研究のスポンサーは武田薬品です。フェブキソスタット(フェブリク)が帝人ファーマが創製し、武田がアメリカでの独占的開発・販売権を保有している薬です。スポンサーとしては何としても良い結果が欲しいですよね。
対象は痛風の診断を受けており、ランダム化前に主要な心血管疾患の病歴がある6190人です。
患者はフェブキソスタットまたはアロプリノールを1日1回投与されるよう無作為に割り当てられました。アロプリノールの投与量は、腎機能に応じて変更されました。腎機能が問題ない場合、血清尿酸値が6.0mg/dL未満になるか、600 mg のアロプリノールを投与されるまで、毎月100mg ずつ増量しました。腎機能がやや低下している患者には、血清尿酸値が6.0mg/dL未満になるか、400mgのアロプリノールを投与されるまで、100mgずつ増量しました。
フェブキソスタットの投与量は腎機能に応じて変更されませんでした。フェブキソスタットの投与をランダムに割り当てられた患者は、最初に1日1回40mg を投与され、2 週間の治療後に血清尿酸値が6.0mg/dL未満であれば、この投与量を継続しました。2週目の診察時に血清尿酸値が6.0mg/dLを超えていた場合、残りの試験期間中、フェブキソスタットの投与量は1日1回80mg に増加されました。
フェブキソスタット群では、最終用量として、患者の61.0%が1日40mgを、39.0%が1日80mgを投与されました。アロプリノール群では、患者の21.8%が200mg、44.6%が300mg、25.2%が400mg、4.3%が500mg、4.1%が600mgを投与されました。
不思議なことに、全体では患者の56.6%が治験治療を早期に中止しました。何があったのでしょう?
フェブキソスタットへの曝露期間の中央値は728日、アロプリノールへの曝露期間の中央値は719日でした。追跡期間の中央値は、フェブキソスタット群で968日、アロプリノール群で942日でした。
主要複合エンドポイントは、心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、または不安定狭心症に対する緊急血行再建術の初回発現です。その主要評価項目イベントはフェブキソスタット群とアロプリノール群で同様の発生率でした(それぞれ10.8%および10.4%、期間中央値32か月)。これが多いのか少ないのかはわかりません。
しかし、問題なのは、心血管疾患による死亡、全原因死亡のリスクです。アロプリノール群と比較して、フェブキソスタット群で心血管死が1.34倍、全原因死亡が1.22倍にもなってしまったのです。心血管死の原因のうち、心臓突然死が最も多く、フェブキソスタット群で83人(2.7%)、アロプリノール群で56人(1.8%)に発生しました。
スポンサーが行った研究であるにもかかわらず、トンデモナイ結果が出てしまいました。
このCARES試験が行われた背景は、フェブキソスタットの開発中に、アロプリノールと比較して致命的ではない心血管イベントがわずかに増加したことが示されたため、FDAがこの薬剤の承認条件として、大規模な長期心血管イベント研究の実施することを求めたのです。そしたら、やはり心血管疾患による死亡、全原因死亡のリスク増加が認められてしまったのです。
飲まなくて良いのであれば飲みたくないですよね。特に無症候性高尿酸血症の場合であれば、尿酸値をコントロールすることで得られるメリットが明らかになっていないので、死亡のリスク増加の可能性に目をつぶってまで、飲まなきゃいけない薬だとは思えません。「尿酸値が高いから」という理由だけで飲むほど安全性がわかっている薬ではありません。そして、薬で尿酸値を変えることがどんなことを招くか…それは次回以降で。
尿酸値の上昇の原因のほとんどは糖質過剰摂取でしょう。食事を変えることが重要です。
「Cardiovascular Safety of Febuxostat or Allopurinol in Patients with Gout」
「痛風患者におけるフェブキソスタットまたはアロプリノールの心血管安全性」(原文はここ)
「ゲゲゲの鬼太郎」などの作者
水木しげる作の、アニメを発見。
製薬会社の研究員が、
本当に効果のある薬を開発した所、
「(病気が無くなってしまったら)
会社が潰れる!」
と、会社に開発ストップされてしまう
お話でした。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
本質をついていますね。
「本当に効果のある糖質制限」
と置換えられますね。