新型コロナワクチン接種歴のある、不整脈を合併した原因不明の心停止の患者はできる限り剖検するべきかもしれません。「予想外の」心臓の微小瘢痕と微小血栓の剖検所見が認められるかもしれません。
すでに下のように、Stray先生がXで採り上げていますが、今回は国立病院機構水戸医療センターからの報告です。
ブースターワクチン(3回)接種した日本人高齢者3人の剖検例: 心臓の微小瘢痕の多発
国立病院機構水戸医療センターからの報告。
1月の死亡者が多い理由の一つ(あくまでもone of them)かも知れません… https://t.co/FaZUuFnBjT pic.twitter.com/hzPsjQpyNy
— Stray (@K9FCR) March 9, 2025
患者1
患者は75歳の女性で、気管支拡張症のため当院に通院中でした。心肺停止のため救急車で救急外来に搬送されました。直ちに心肺蘇生を開始し、心拍は再開しました。心電図では虚血性心疾患の兆候は見られませんでしたが、心室性期外収縮と非持続性心室頻拍が認められました。血液検査では心酵素が正常範囲内で、左室駆出率は維持されていました。入院後、カテコラミンによる血圧補助をしながら気管支鏡検査を実施し、左下葉から血栓が吸引されましたが、活動性出血は認められませんでした。酸素投与、カテコラミン点滴による治療を行ったが、その後多臓器不全となり心停止に陥り死亡しました。来院時は心肺停止状態であり原因は不明でしたが、その後多臓器不全に陥ったものの新たな心室性不整脈の出現、心停止の原因など病状は不明であったため、家族に状況を説明し、解剖の同意を得ました。
患者2
患者は91歳の女性で、2年前に心不全で入院し、心不全が悪化したため再入院しました。前回の退院以来、心臓保護薬(?)を処方されていました。初回入院時に心不全の明らかな原因を特定できませんでした。2回目の入院で、新たに心房細動を発症しました。左室駆出率は維持され、心拍数は約60回/分にコントロールされていました。酸素、利尿薬、カテコラミンによる治療にもかかわらず、患者の反応は良くなく、尿量は減少しました。家族と相談した後、緩和ケアの方針を選択しました。その後、入院後12日目に血圧が低下し、心停止に陥り死亡しました。患者さんは高齢であるものの、心不全という背景疾患は不明であり、献体することでこれらの疾患の原因が少しでも分かれば医学の進歩に貢献できることを説明し、ご家族の同意を得て解剖を行いました。
患者3
症例は73歳男性で、当院で皮下結節を伴うT細胞リンパ腫に対し、化学療法を3コース受けていました。結節は消失し退院しました。1年3か月後、皮下結節が再燃し、4コース目の化学療法のため入院となりました。化学療法を開始しましたが、1週間後に38℃台の発熱があり、新型コロナと診断されました。新型コロナによるリンパ腫の再燃で全身状態が悪化し、心電図モニタリングで不整脈が記録されたため、家族は緩和ケアに同意しました。全身状態はさらに悪化し、心停止になりました。患者は癌で亡くなったため、死因究明よりも医学や医学教育の発展に有益であれば、遺族は剖検を行うよう要望しました。
下の表は患者の特徴です。(図は原文より、表は原文より改変)
患者 1 | 患者2 | 患者3 | |
---|---|---|---|
性別 | 女性 | 女性 | 男 |
年齢 | 75 | 91 | 73 |
心臓の重さ、g | 255 | 500 | 330 |
COVID-19ワクチン接種回数 | 5 | 5 | 6 |
COVID-19歴 | − | − | + |
CTR、% | 59 | 59 | 51 |
左心室駆出率、% | 65 | 58 | 65 |
PAF/PAC | + | + | + |
PVC/VT | − | + | + |
BNP、pg/dL | 116 | 127 | |
クレアチニン、mg/dl | 0.77 | 2.47 | 0.63 |
血小板、×10 3 /μL | 237 | 157 | 200 |
死因 | 不明 | 不明 | リンパ腫 |
悪性腫瘍 | なし | 肝細胞癌 | リンパ腫 |
新型コロナウイルス感染歴のあるのは1人だけでしたが、3人とも新型コロナワクチンは5回以上の接種です。
上の図は患者2の心筋の病理の画像です。微小瘢痕(黄色の矢印)が、右心房上部 (RA)、右心室 (RV)、肺静脈と左心房の接合部 (LA)、および左心室 (LV) に見られます。病理には詳しくないので、私には詳細はわかりません。
多発性微細瘢痕は肺や腎臓を含む他の臓器では、すべての患者で観察されませんでした。左心室の微小瘢痕については、64個の瘢痕が追跡され、その平均直径は211 μm、平均面積は143,810 μm2、平均距離は383 μm でした。これらの瘢痕が毛細血管床レベルでの血栓塞栓症による炎症によって生じたものであり、各瘢痕が同じ様相を呈していることから、炎症が一度に同時に生じたと考えられるようです。
上の図は、心筋の微小瘢痕内の毛細血管の拡大画像です。毛細血管内には、停滞した破砕された赤血球(黄色の矢印)を含む血栓が見られます。
この病院で見つかった、心停止患者の病理標本3例における心筋内に多数微小瘢痕は、この病院の約30年にわたる臨床病理カンファレンスにおいて、心筋梗塞以外の症例で認められたことはこれまで一度もなかったそうです。また、病理学的に心筋内に微小瘢痕が認められたという報告は、著者たちが調べた限りではなかったそうです。心筋梗塞以外の心筋瘢痕の報告は、新型コロナ関連患者においてMRIで検出された心臓の瘢痕の報告があります。しかし、 MRIで瘢痕と診断される領域はある程度の大きさがあり、 MRIではこのような微細瘢痕であっても明確に検出できません。
これらのまれな心臓の多数微小瘢痕が約6か月という短期間で剖検で発見され続けているという事実は、背景に何かあるとしか思えません。
新型コロナワクチン接種歴に関しては、3人の患者全員が最後の入院までブースターワクチン接種歴があったこと、不整脈と新型コロナワクチン接種との関連が最近報告され、世界的な調査では、どのタイプの新型コロナワクチンも不整脈を誘発するようで、コロナワクチンは心臓伝導異常を引き起こす可能性があること、これらのメカニズムは分子模倣(molecular mimicry)またはスパイクタンパク質の生成、炎症反応の増大、そして最終的な瘢痕と線維症から生じると推測されていること、今回の病理学的症例研究では、左心房と肺動脈の接合部(心房細動に対するカテーテルアブレーションの一般的な部位)および右心房の上部にも微小瘢痕が観察されたこと、コロナワクチン接種後の血栓症は報告されていることなどから、著者らは新型コロナワクチン接種が原因不明の心停止の原因であると疑っているようです。
微小瘢痕はすぐに致死的になるわけではないかもしれません。しかし、不整脈を起こす原因とはなり得るでしょう。そして、それがやがて致死的不整脈を起こす可能性があります。遅発性ワクチン死の原因の一つとして考えるべきでしょう。若年者にも致死的不整脈は起きるので心配です。
新型コロナワクチンを推奨している日本循環器学会は十分な説明が必要でしょう。
「Cardiac Multiple Micro-Scars: An Autopsy Study」
「心臓の複数の微小瘢痕:剖検研究」(原文はここ)