スタチンはあなたの体の重要な機能を低下させる

生物学的、生化学的事実として、コレステロールは人体にとって非常に重要です。このことを否定することは現在のところできません。だから、コレステロールを目の敵にすることは間違っています。

私たちの体は非常に多くの細胞が集まったものです。コレステロールはその一つ一つの細胞の細胞膜の構成成分です。欠かすことはできません。もし、コレステロールが無くなれば、細胞は死んでしまい、人間も死んでしまいます。

脳は1300gしかありませんが体全体のコレステロールの4分の1程度が集まっています。神経の電気信号を伝える部分もコレステロールで覆われています。以前の記事「LDLコレステロール値が高い方が認知症になる可能性が低い」で書いたように、LDLコレステロール値の低下が認知症と関連しているとも考えられています。

さらにコレステロールはホルモン産生に不可欠です。性ホルモンやその他のホルモンの材料になるのです。

コレステロールは消化にも不可欠です。コレステロールは胆汁酸になります。胆汁は脂肪の消化吸収に重要です。コレステロールが豊富な胆汁により、必須脂肪酸や脂溶性ビタミン(A、D、E、K)を吸収することができます。これらの栄養素が不足すると、様々な病気を発症する可能性があります。体内では日光を浴びると非常に重要なビタミンDが合成されますが、その原料もコレステロールです。

このような非常に重要なコレステロールを「悪玉」と考えるきっかけとなったのが、1913年にロシアのAnitschkowという人が発表した研究です。この実験では、ウサギにコレステロールを摂取させたのです。そうしたところウサギはアテローム性動脈硬化を発症しました。それにより「コレステロールがアテローム性動脈硬化の原因」という誤った仮説が定着したのです。しかし、草食動物であるウサギのエサにはコレステロールは含まれていません。ウサギの体はコレステロールや動物性脂肪を消化するようには進化していないのです。もともとコレステロールや動物性脂肪を食べない動物に無理やりコレステロールを与えた実験をしたのです。ウサギの血管が詰まってしまい、病気になるのも当然です。

一方、肉食動物はエサとして摂取したコレステロールに対応できます。コレステロールの摂取量に合わせて肝臓で合成するコレステロール量を調節し、体内のコレステロール濃度を適切な範囲にできるのです。もちろん人間もできます。

そして、1960年代に飽和脂肪酸の摂取量と虚血性心疾患による死亡に強い関連があることが、Ancel Keysによる7カ国研究で報告され、雑誌「TIME」の表紙を飾りました。そして、この7カ国研究は自分の都合の良いデータだけで分析したことはよく知られています。

しかし、彼はその前の1955年の研究で「成人男性では、血清コレステロールレベルは、本質的に、普通の人間の食事の範囲では食事でのコレステロール摂取量から独立していると結論付けられている」と述べていて、さらに1997年には「食事中のコレステロールと血液中のコレステロールとの間には何の関係もない。 そして私たちはそのことをずっと知っていた。」と述べていたそうです。

そして、人間にとってコレステロールが本当に「悪玉」である根拠がはっきりしないまま、スタチンが開発され、発売されてしまいました。スタチンで製薬会社は大儲けをしました。そのスタチンの効果も非常に怪しいことは以前の記事「LDLコレステロールを低下させることの有益性の証拠はない!」「スタチンの有効性への疑問」などでも書きました。しかし、お金というものは非常に大きな力を持っているのです。(図は原文より)

上の図は1987年に発表されたFraminghamの研究で、14年間の総コレステロールの変化と死亡率を示しています。上のグラフが総コレステロールが減少した群、下のグラフが総コレステロールが増加した群です。Cancer(がん)、CVD(心血管疾患)、All cause(全原因)の死亡率で0よりも右側に行くほど死亡率が高いことを表しています。

そうすると、総コレステロールが低下した群では心血管疾患でも全原因でも死亡率が増加してしまっています。総コレステロールが増加した群でも心血管疾患での死亡率は増加していますが、その率は総コレステロールが低下した群よりも小さく、逆にがんの死亡率は低下し、全原因死亡率は変化していません。まともに考えれば、コレステロールが増加した方が健康的だと解釈できます。

人間にとって必須のコレステロールの合成を阻害するスタチンにはどのような有害性があるのでしょうか?

コレステロールは大まかに言って、アセチルCoAからHMG-CoAになり、その後メバロン酸になり、コレステロールになります。このHMG-CoAからメバロン酸が合成される際のHMG-CoAレダクターゼを阻害します。それによってメバロン酸から先の合成経路に勧めなくなるのです。実はメバロン酸から先の経路で非常に重要な物質が作られています。(図は原文より改変)

CoQ10およびヘムAのようなミトコンドリアの電子伝達系の必須成分は、コレステロール生合成のプレニル中間体というものから合成されます。プレニル中間体はメバロン酸よりも後にできるものなので、スタチンによって合成が阻害されてしまいます。つまり、スタチンはミトコンドリアに対して毒性があるのです。ミトコンドリアでエネルギーであるATPの合成が行われているので、スタチンの使用は細胞のエネルギーの枯渇を引き起こす可能性があるのです。横紋筋融解症や筋肉痛は、スタチンによるミトコンドリア毒性の結果である可能性が高いと考えられます。心臓はミトコンドリアが作り出すATPに大きく依存しているので、必然的にスタチンのミトコンドリア毒性によって大きな影響を受けます。スタチンがアテローム性動脈硬化症および心不全を促進するとも考えられています。

また、プレニル中間体から作られる抗酸化作用のあるセレン含有タンパクはスタチンによって低下します。つまり、スタチンにより酸化ストレスが増加するのです。

プレニル中間体は、ビタミンK2にも合成されます。ビタミンK2合成が阻害された結果は非常に様々な影響を与えます。ビタミンK2は、凝固因子、オステオカルシン(骨から分泌される非常に多くの役割があると考えられている重要な物質)などを調節しています。

また非常に重要な物質であるビタミンDの原料になるコレステロールの一種もメバロン酸以降に作られるものです。スタチンを飲んで、日に当たらない生活をして、肉や卵などを控えめにしていたとしたら、人体はどうやってビタミンDを作るのでしょう。これが高齢者のビタミンD不足の原因にもなっています。

(上の図はこの論文より)上の図は実際にスタチンでどの程度影響が起きるかを示しています。SBP:収縮期血圧 Catalase:カタラーゼ SOD:スーパーオキシドディスムターゼ GSH peroxidase:グルタチオンペルオキシダーゼ UCP:脱共役タンパク質 Myosin HC:ミオシンH鎖 Oxidative phosphorylation:酸化的リン酸化 Glucose:ブドウ糖(血糖値) Insulin:インスリン AUC:曲線下面積

CoQ10、カタラーゼ、SOD、グルタチオンペルオキシダーゼは抗酸化物質です。ミトコンドリアのエネルギー産生(ATP産生)に関連しているのはCoQ10、UCP、酸化的リン酸化、ComplexⅣです。

グラフの黄色いバーは筋肉にも関連しています。

スタチンを使っていない人を1として、スタチン使用群で1以上は増加しているもの、1以下は低下しているものです。そうすると、収縮期血圧やHbA1c、血糖値、インスリンはスタチン使用群の方が増加しています。それ以外の筋肉に関わるものやミトコンドリアの機能に関わるもの、抗酸化物質は全て低下しています。

このように、スタチンは我々人間の体にある重要なメカニズムを混乱させ、非常に重要な物質の合成を阻害してしまうのです。そして、人間の体の重要な機能を低下させるのです。

それでもまだ、コレステロールを下げたいですか?

「A Critical Review of the Consensus Statement from the European Atherosclerosis Society Consensus Panel 2017」

「ヨーロッパのアテローム性動脈硬化症協会Consensus Panel 2017のコンセンサス声明の重要なレビュー」(原文はここ

コメント

  1. ゆでたまご より:

    スタチンは人体に対して毒性が非常に強く安易に使えない薬であることがよくわかりました。私は副作用が出たので最近スタチンを止めましたが、担当医からゼチーア10mgを飲むように指導を受けました。内因系路がダメなら、外因系路でLDLコレステロールを下げようということです。食後高脂血症など持病があるなど特別な事情があれば別でしょうが、予防で単にLDLコレステロールを下げる目的では、私は糖質制限をしているので外因系路でコレステロールが少なくなった分、肝臓でコレステロールが増産されるだけであり、副作用のリスクと費用面からゼチーア10mgはやめようと思います。このように自分で考え判断し、担当医と話をするようになったのも先生のひとりごとのおかげです。ありがとうございます。
    ちなみに最近の血液検査では以下の通りでした。
    HDL-C 76mg/dl、LDL-c 161mg/dl、TG 79mg/dl
    よってTG/HDL-C =1.04 < 1.30

    • Dr.Shimizu より:

      ゆでたまごさん、コメントありがとうございます。

      HDL-C 76mg/dl、LDL-c 161mg/dl、TG 79mg/dl
      よってTG/HDL-C =1.04 < 1.30 

      なかなか良い数字だと思います。数字で一喜一憂するのではなく、ちゃんと数字の意味を考えないとダメだということですね。
      LDLコレステロール値が下がればとりあえず医師は責任回避になります。医師の安心のために薬を飲む必要はありません。
      ご自身で考え判断されたのであればそれが一番ではないでしょうか。