めまいも糖質過剰症候群である その2 メニエール病

以前の記事「めまいも糖質過剰症候群である その1」では、めまいの原因として最も多い良性発作性頭位めまい症と糖質過剰摂取について書きました。耳が原因となるめまいの第2位はメニエール病です。

メニエール病の症状には、難聴、耳鳴り、めまいの再発、および耳の圧迫感または膨満感などがあります。はっきりとした原因は不明とされています。

臨床的に明らかなメニエール病を持つすべての人は内リンパ水腫(内耳の過剰な水分貯留)を持っていますが、その逆は当てはまりません。したがって、この関連には他の因子が直接的または間接的に関与しており、内リンパ水腫だけがこの病気の発生の原因となる唯一の存在ではないでしょう。メニエール病の半分以上の人では糖質の代謝異常を持っています。

高インスリン血症に関連する症状は、血糖値の変化だけでなく、明らかに重要なナトリウムカリウムATPアーゼ(細胞膜に存在し、アデノシン三リン酸(ATP)をエネルギー源に細胞の内側から外側へナトリウムイオンをくみだし、代わりにカリウムイオンを取り込む酵素)活性の変化につながります。それにより内リンパ水腫をもたらすと考えられます。

さらに、異常な高血糖や高インスリン血症が長期間にわたると、細動脈、毛細血管、細静脈などに悪影響を及ぼします。内耳の微小循環が損なわれると、内リンパ水腫を引き起こす可能性があります。

ある研究では、メニエール病の人に対して5時間の100gブドウ糖経口負荷試験を行うと、78.12%は異常値を示しました(下の図、図は原文より)。クラフトのインスリン曲線でのタイプII2(39.06%)およびタイプIIIA(18.75%)が最も頻繁なタイプであることを示しています。正常血糖で高インスリン血症は29人(45%)に認め、反応性の低血糖症は、64人の患者のうち10人(15.62%)でのみ見つかりました。

24人の患者(37.5%)は過体重であり、10人(15.62%)は肥満でした。 30人の患者(46.87%)は、脂肪分布が中心性肥満でした。

「Glucose and insulin profiles and their correlations in Ménière’s disease」

「ブドウ糖とインスリンのプロファイルとメニエール病の相関」(原文はここ

他のちょっと古い研究では、メニエール病の人のインスリンレベルは、75人の患者のうち58人、77%で異常でした。75人のメニエールの人の2時間の食後インスリン値の平均は83μUであり、この値はメニエール病ではない人の平均値62μUよりも34%高いものでした。5時間のOGTTを受けた61人のメニエールの人の2時間と3時間のインスリンの合計は平均205μUであり、これはメニエール病ではない人の平均値122より68%高いものでした。

そして、異常なインスリンレベルの患者58人のうち54人は、低炭水化物の食事療法を行いました。複合炭水化物(でんぷん)は1食当たり20gに制限され、3か月後に27gに増加しました。しかし、通常の糖質制限食とは違い、食事回数を6回摂取しました。患者の体重が通常の理想レベルを下回った場合、摂食間隔は少なくとも1〜2時間で、1日8食以上に増やしました。精製された糖は避けて、牛乳や果物などの単純な糖質は、1食当たり10gに最初は制限され、3か月後には13gに増加しました。そして、カフェインもアルコールも無しで追加のナトリウムも摂りませんでした。つまり、現在われわれの行っている糖質制限食とはちょっと違いますが、1回に摂る糖質量としては非常に制限された糖質制限です。

このような食事療法の効果は非常に顕著でした。Committee on Hearing and Equilibrium(直訳すると、聴力と平衡に関する委員会)の基準に従えば、49人(91%)の人が、食事療法の最初の6か月後にめまいのコントロールを達成しました。しかもこのコントロールが10年の間、同じ91%の割合で維持されています。8%が聴覚レベルが正常レベルに改善したと報告しました。10%は耳鳴りの完全な軽減を報告したのです。

「Etiology and treatment of fluid retention (hydrops) in Ménière’s syndrome」

「メニエール症候群の体液貯留(水腫)の病因と治療」(原文はここ

別の研究では、従来の治療に反応しないメニエール病の103人が5時間のOGTTを受けたところ、80人(77.7%)に高インスリン血症の曲線が認められました。さらに17人(16.5%)に平坦なインスリン曲線が認められました。したがって、患者の94.2%が異常な検査結果だったということになります。さらに、患者の24%で中性脂肪値が上昇していました。これらの人に精製された糖(および他の精製炭水化物)、カフェイン、およびアルコールを避ける食事をさせました。そうすると、めまいは60.2%で完全に消失し、さらに24.3%の人で改善しました(改善と完全な消失の合計では84.5%)。聴力は患者の3分の1で改善されました。耳鳴りは、患者の16.5%で完全に消失し、さらに37.9%で改善しました(完全消失と改善の合計で54.4%)。さらに、改善した多くの人はこの食事をやめようとしたところ、症状は1時間から7日以内に再発または悪化したのです。

「Integrative Approaches to Ménière’s Disease」

「メニエール病への統合的アプローチ」(原文はここ

このようなことから考えると、明らかに糖質過剰摂取による高血糖や高インスリン血症がメニエール病の症状を起こしていると考えられます。

めまいの第1選択の治療法は糖質制限でしょう。

5 thoughts on “めまいも糖質過剰症候群である その2 メニエール病

  1. なるほどです。世界最大の総合格闘技団体UFCの代表者ダナ・ホワイトが長い間メニエール病で苦しんでいて手術等もしましたが、友人のジョー・ローガンによると彼は今、再発予防のためケトジェニックダイエットをしているそうです。
    格闘技ファンの私は彼の5百万人いるツイッター・フォロワーの一人ですが、前にこんなツイートしてました。https://twitter.com/danawhite/status/1006965377983762432
    コメント中のKeto Vitalstと言うのはKETO初心者がなりやすいKeto Fluや筋肉の痙攣を緩和するサプリです。私はサプリの類はまったく取らずにケト適応できましたが、アメリカでは糖質依存症から脱却時の禁断症状(笑)を助けるサプリまであるんですね。

    1. 駐在君さん、コメントありがとうございます。

      さすがアメリカですね。こんなサプリまであるなんて。
      情報ありがとうございます。

  2. おはようございます。
    鈴木武彦(1967.1.17生 マラソン 糖質制限 24時間断食 など継続中)です。
    先日は、マラソン中の糖質摂取についての質問にお答えいただきました。
    参考にしてこれからも頑張ります。ありがとうございました。

    さて、先生のブログを拝見しますとニューバランス派と推察いたします。
    私も、脚にやさしい、ニューバランスを愛好し、最近はやはりHANZOシリーズを愛用してました。

    MGCを始めとして、トップ選手が余りにもNIKE一辺倒の現状を目の当たりにして、遂にNIKEズームフライニット購入、使用してみたところ、素晴らしい!!

    もうご使用になっているのかもしれませんが、又周囲からも推薦の声はおありでしょうが、私の感想は、やはり今までで最高のシューズでした。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      私は別にニューバランス派ではありません。ただ軽いシューズを選んだところそのようになっただけです。

      NIKEシューズは以前の記事に書いたように、反発性を生みだすばねのようなものが入っているので、やはりズルい感じがします。
      でも、MGCでほとんどの人がNIKEを履いていたのを見ると、もうこの流れは仕方がないのかな?と思います。
      そうなるとNIKEを試してみても良いのか?とも考えますが、耐久性や重さの問題もあるので、まだ躊躇しています。

  3. おはようございます。
    鈴木武彦(1967.1.17生 マラソン 糖質制限 24時間断食 など継続中)です。
    NIKEシューズへのコメント、ご返信ありがとうございます。

    確かに「履くドーピング」という記述も目にしたこともありますし、水泳ではSPEEDというメーカーの「浮く水着」は禁止になりました。

    昔ドクター中松という発明家の方が、靴底にバネを付けた「ジャンピングシューズ」を
    “発明”していましたが、NIKEも参考にしたのかもしれませんね(笑)

    改めてNIKEを履いた感想は、自然に良いフォームで走れている様な気がします。
    重さはほとんど感じませんでした。
    耐久性の問題もあるのですね。 確かに大迫選手も、練習ではズームフライ以外の(NIKEの)物を履いている様です。

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