職場の砂糖入り飲料販売を禁止してみたら?

職場で砂糖入りの飲み物を手に入れることができるのは珍しくはないでしょう。病院ですら、大量の砂糖入り飲料を販売しているのですから。では、職場の砂糖入り飲料を販売禁止にしたらどうなるか?今回の研究ではそれをやってみたそうです。従業員は自分の飲み物を持ち込むか、敷地を出て別の場所で飲み物を買うことができますが、彼らは職場で甘い飲み物を買うことができませんでした。半分の人たちには砂糖入り飲料摂取量の削減を目的とした簡単な動機付け介入を行い、残りの半分にはその介入は行いませんでした。

動機付け介入では、健康についての教育を行う人と約15分の動機付け面接をし、その面接では、1日当たりの砂糖入り飲料摂取量についてカップに入った角砂糖を使用して摂取する糖質量を説明し、リスクと糖質摂取量の削減に関する個人的なガイダンスを提供し、参加者が砂糖入り飲料摂取に関連する健康目標を設定するのを助け、教育資料を提供しました。その後何回か電話での介入も行いました。(図は原文より)

上の図は表の一番上が販売禁止から6か月後と12か月後の1日の砂糖入り飲料の摂取量で、その下は10か月後のBMI、腹囲、矢状腹部径(臥位になった状態での背中からお腹までの距離。詳しくはここを参照)、ウエストとヒップの比、インスリン抵抗性を示すHOMA-IRです。左から順にすべての参加者、痩せた人(BMI25未満)、過体重と肥満の人(BMI25以上)で、ベースラインとフォローアップ時の数値です。BMI、ウエストとヒップの比、インスリン抵抗性は変化なく、腹囲と矢状腹部径はやや減少しました。実は約半分の人が体重を減らした半面、約半分は体重を増やしてしまっていました。だから、結果が良い数値を示さなかった可能性が高いのです。体重を増やした人は、職場での砂糖入り飲料の代わりに、外で他の糖質を摂取していたのでしょうね。170人の参加者のうち117人(68.8%)が腹囲を減少させ、平均で2.1cm減になりました。これらの参加者は、体重も減少した傾向がありました(117人のうち75 人(64.1%])が体重減少)。

上の図は砂糖入り飲料の消費量の推移です。緑が全体、オレンジが痩せた人、青が過体重と肥満です。どのグループも6か月後、12か月後の消費量を減らしています。過体重や肥満のグループでは約半減でしょう。もともと痩せた人の消費量は肥満の人ほど多くなかったようです。しかし、この数値は自己申告なので、このような研究に参加している人は過少申告している可能性があります。

販売禁止と簡単な動機付け介入を行った人では、介入を行わなかった人の1日当たりの246.0mLの消費量減少に対して、762.0mLと大きく減少しました。この介入と砂糖入り飲料摂取とのこの関連性は、高BMIグループで有意に大きくなりました。上の図は薄い青色のバーが販売禁止のみの人の自己申告による砂糖入り飲料摂取量の減少を示し、濃い青色のバーは、簡単な介入と販売禁止の人によって報告された減少量です。

尿酸とHDLコレステロールの値は時間の経過とともに改善しましたが、総コレステロールとLDLコレステロールの値は、痩せたグループで増加しました。簡単な動機付け介入に割り当てられた過体重と肥満の人は、販売禁止のみの人と比較して、脂質(総コレステロール、LDLコレステロール、およびアポリポタンパク質B)の統計的に有意な改善を示しました。砂糖入り飲料摂取量の変化と総コレステロールの変化との小さな関連性は認められましたが、中性脂肪、HDLコレステロール、LDLコレステロール、アポリポタンパク質B、または肝臓の酵素の値には関連性は認められませんでした。

コンセプトは面白いのですが、なんとも中途半端な結果の研究です。見た目には砂糖入り飲料の大きな減少を示していますが、恐らく参加者の多くは過少申告をしていて、外では別の形で糖質を摂取している可能性が十分にあります。このような自己申告に頼る研究の限界です。糖質摂取そのものの有害性を十分に理解していないと、なかなか難しいと思われます。

砂糖入り飲料摂取を減らすことは健康を改善できると思われますが、糖質過剰摂取をしている個人が自分で達成することは困難かもしれません。しかし、職場だけでも販売禁止にすれば、大きく変化するのではないかと考えれますが、ただ何を食べるか、何を飲むかは大人であれば個人の自由です。その自由を奪うことは問題があるかもしれません。ただし、経営側が職場で何を販売するかは自由であり、外からの持ち込みは自由なのであれば問題ないでしょう。

ただ、子供が自由に健康を害する飲食物を手に入れることにもやはり問題があります。だから学校での砂糖入り飲料やスナックなどの販売は禁止すべきだと思います。さらに、コンビニやスーパー、自動販売機での子供だけの購入も制限すべきです。

また、大人の選択の自由はあったとしても、やはり病院では問題です。タバコやお酒を売っている病院の売店、コンビニは存在しません。それと同様に砂糖を加えたものを販売することは非常に大きな問題です。そこは病院なのですから。

糖質は嗜好品です。そして、健康に有害です。そうであるならば、子供や病気の人が簡単に誰でも手に入れられる状況は改善すべきでしょう。実際に海外ではそのような変化を見せている国や病院は存在します。(「イギリスの病院では患者とスタッフの健康のために砂糖の入った食品や飲料の提供を禁止している!」「ニュージーランドのスーパーマーケットでは子供に糖質入りドリンクの販売を止めた」「様々な国が肥満との戦争を始めている!チリは掃討戦に突入!」など参照)

でも日本では、病院の医師をはじめ、他のスタッフも率先して病院内のコンビニや売店で糖質てんこ盛りの弁当、砂糖入り飲料、カップラーメンなどを購入している姿は珍しくなく、病院内のコーヒーショップではスイーツまで販売しています。日本の病院で販売を規制するのはかなり難しい状況だと思います。

「Association of a Workplace Sales Ban on Sugar-Sweetened Beverages With Employee Consumption of Sugar-Sweetened Beverages and Health」

「砂糖入り飲料の職場販売禁止と従業員の砂糖入り飲料の消費および健康との関連付け」(原文はここ

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