食べる順番ダイエットの効果は?

先日、次のような記事が出ていました。「食べる順番で重点指導、体重減少に効果」(その記事はここ

いわゆる食べる順番ダイエットで、食べる順番の食事療法は食後の高血糖や体重増加を防ぐ方法として考えられています。その理論は、炭水化物より食物繊維を先に食べることで、消化管からの糖の吸収が抑えられるとされています。また、タンパク質なども先に摂取することで血糖値を下げる消化管ホルモンの分泌が増加し、胃の動きを緩やかにし、食欲を抑制する効果があるというものです。さて、本当でしょうか?その中身を見てみましょう。

具体的には、最初の5分間は、ご飯やパン、麺類など炭水化物を多く含むものは避け、野菜やきのこや海藻などの食物繊維が豊富なものから食べ、肉や魚、卵などのタンパク質を食べた後に、ご飯なども自由に食べられるという方法です。

関西電力保険組合に加入する従業員で、健診で糖尿病リスクが高いと診断された42人を対象に6か月間実施されました。その人たちを3つのグループに分けました。一般的な生活習慣改善指導をするグループA(従来群)、食べる順番を重視した食事指導をするグループB(食べる順番群)、栄養バランス(野菜、キノコ、海草などからの食物繊維の摂取量を増やし、ジャガイモ、豆、果物、総脂肪摂取量におけるn-3多価不飽和脂肪の割合を増やしますを重視した指導をするグループC(栄養バランス群)です。(図は原文より)

上の図はそれぞれのグループの食事、栄養素の内容です。Visit1は研究前の状態、Visit3は約6か月後です。食事はアンケートなので曖昧なことは否めません。それを承知の上で見てみると、従来の食事をするグループAは総エネルギー摂取量は変化していません。食べる順のグループBと栄養バランスのグループCでは、エネルギー摂取量が減少しています。グループBとCでは炭水化物量が1日20g程度減少しています。脂質はグループCでは10g近く減少しています。タンパク質はグループBとCで6g程度減少しています。

それでどうなったか?グループAに対して、グループBではBMIと体重が有意に減少していました…(?)具体的にはグループAでは6か月でBMIが0.3増加し、体重も0.9㎏増加しました。この参加者たちはたった6か月で0.9㎏体重が増加する食事を摂っているみたいです。1年で1.8㎏、5年で9㎏…さすが糖質過剰摂取ですね。最初の図ではエネルギー摂取量が1,800~1,900kcal程度ということを考えると自己申告の摂取エネルギー量は過少申告でしょう。そのようなどんどん肥満化する従来の食事と比較して、食べる順のグループBではBMIで-0.17、体重で-0.5㎏減少です。素晴らしい(?)6か月でたった0.5㎏しか減らないのです。おしっこやうんこをしただけでも200~300gは減少するでしょう。誤差範囲程度の減少にすぎません。6か月あれば糖質制限では10㎏ぐらいは減っているでしょう。栄養バランスのグループCでは有意差は無かったようですが、同様にBMIで0.2、体重で0.58㎏の減少です。

VFA(内臓脂肪)、WC(腹囲)はすべての群で減少しています。不思議なことに体重の増加したグループAでも内臓脂肪が減少しています。今回の研究では食事だけでなく運動の指導も受けているので、その効果があったのでしょうか?GLP-1やGIPの変化はありませんでした。グルカゴンはグループCでは低下していました。

FPG(空腹時血糖値)はすべての群で減少しています。グループBでは6以上の減少です。しかしHbA1cに関しては変化していません。しかし、空腹時のインスリンに関してはグループBで1近く増加しているのです。インスリン抵抗性を表すHOMA-IRも変化なし~やや増加です。HOMA-IRは2.5以上でインスリン抵抗性ありと判断されますが、6か月後のグループBでは2.5を超えてしまっています!

HDLコレステロール値はどのグループも変化していませんが、中性脂肪(Triglycerides)はグループAでは約45、グループBでは約28増加しています。単純に中性脂肪/HDL比を計算すると、グループAで2.5→3.2、グループBで3.5→4.1、グループCで3.0→2.9です。グループC以外では中性脂肪/HDL比が悪化しています。

以前の記事「糖質制限とLDLコレステロール上昇」「中性脂肪が低くHDLコレステロール値が高いと虚血性心疾患のリスクは低い」などで書いたように、中性脂肪/HDL比は重要であり、中性脂肪値が低く、HDLコレステロール値が高い方が有益であると考えられます。私は中性脂肪/HDL比は1.3以下を推奨しています。中性脂肪/HDL比が4より大きいことが、冠動脈疾患発症の最も強力な独立した予測因子であると考えられています。岡山大学の研究では中性脂肪/HDL比が3.03以上では急性冠症候群を惹起しやすい冠動脈のハイリスクプラークが有意に増加するそうです。食べる順のグループでは中性脂肪/HDL比が4を超えてしまっているではないですか!

さて、この論文の結論はどうなっているでしょうか?

「The group receiving health guidance with dietary instructions focusing on meal sequence exhibited similar adherence and greater reduction in body weight than the group receiving conventional health guidance.」

「食事の順序に焦点を合わせた食事指導を伴う健康指導を受けたグループは、従来の健康指導を受けたグループと同様のアドヒアランスを示し従来のグループよりも体重の大幅な減少を示した。」

さらにこの研究を行った大学の教授は

「食べる順番に重点を置いた食事療法はダイエット、健康増進につながる。継続もしやすいので、指導を呼びかけたい」

と語っているようです。継続はしやすいかもしれませんが、健康増進には全くつながっていません。インスリン抵抗性、中性脂肪/HDL比で見ると健康が悪化しています。

この論文の利益相反を見てみると

「D. Yabe received consulting or speaker fees from MSD K.K., Novo Nordisk Pharma Ltd. and Nippon Boehringer Ingelheim Co., Ltd. D. Yabe also received clinical commissioned/joint research grants from Nippon Boehringer Ingelheim Co., Ltd., Eli Lilly and Company, Taisho Toyama Pharmaceutical Co. Ltd., MSD K.K., Ono Pharmaceutical Co. Ltd., Novo Nordisk Pharma Ltd., Arklay Co. Ltd., Sanofi K.K., Astellas Pharma Inc. and Takeda Pharmaceutical Company Limited. Y. Hamamoto received consulting or speaker fees from Novo Nordisk Pharma Ltd. T. Kurose received consulting or speaker fees from Sanofi K.K. T. Kurose also received clinical commissioned/joint research grants from the Japan Vascular Disease Research Foundation. Yut. Seino received consulting or speaker fees from Eli Lilly Japan K.K., Sanofi K.K., Novo Nordisk Pharma Inc., Glaxo-Smith-Kline, Taisho Pharmaceutical Co., Ltd., Taisho Toyama Pharmaceutical Co., Ltd., Astellas Pharma Inc., BD, Nippon Boehringer Ingelheim Co., Ltd., Johnson & Johnson and Takeda Pharmaceutical Company Limited. Yut. Seino also received clinical commissioned/joint research grants from Nippon Boehringer Ingelheim Co., Ltd., Eli Lilly and Company, Taisho Toyama Pharmaceutical Co. Ltd., MSD K.K., Ono Pharmaceutical Co. Ltd., Novo Nordisk Pharma Ltd., and Arklay Co. Ltd. H. Kuwata, Y. Fujiwara, K. Murotani, M. Sakaguchi, S. Moyama, N. Makabe, Yus. Seino, H. Asano, S. Ito and H. Mishima report no conflict of interest relevant to this study. H. Takase and N. Oota are employees of Kao Corporation.」

第一著者の分だけ製薬会社を赤文字にしました。食べる順番ダイエットを推奨して、ほんのわずかな誤差範囲とでも思われるような体重減少を強調して、裏に隠れている有害性を隠して、どの方向に誘導しようとしているのでしょうか?食べる順番だけを強調して、糖質過剰摂取をやめさせないのです。直接薬の宣伝をしていないにしても、これで医師も製薬会社もWin-Winですね。

(この研究の概要のわかりやすい日本語の文章はこれを参照)

「Dietary instructions focusing on meal-sequence and nutritional balance for prediabetes subjects: An exploratory, cluster-randomized, prospective, open-label, clinical trial」

「糖尿病前症患者の食事順序と栄養バランスに焦点を当てた食事指導:探索的、クラスター無作為化、前向き、非盲検、臨床試験」(原文はここ

コメント

  1. 鈴木武彦 より:

    マラソンや筋トレに取り組み、そしてヨーガは20歳のころから継続しています。
    やはり、効率的にパフォーマンスをあげたい(楽したい)ので、関連の雑誌や専門的な
    書籍はよく見ます。
    残念なのは、今回の先生のブログに挙げられたような、(結局は)間違った「健康情報」
    が常識として流布されている現状です。
    自己責任ではありますが、そういう一見もっともらしい情報をみると、脱力してしまいます。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      様々な企業や人が手を組んでいるので、本当のことが非常に目にくくなっていますね。
      特にネットニュースなどは非常に内容が薄いものも多いので、題名だけで判断してしまう人も多いのではないでしょうか?

  2. ジョージ より:

    プラークですけど、昨年は左頸動脈に1.6mmが確認されましたが、
    その後、次に気を付けることにしました。
    ①食べる順番(一応、時流に乗ってやってみました)
    ②ご飯は毎食100g以下
    ③甘い菓子は控えめ、ジュース類は飲まない
    ④パンは週2回まで
    ⑤果物は朝キューイ、夜バナナ 1日200g
    ⑥酒は、金から月まで週4合(3日連続で禁酒)
    ⑦油もの料理は、プラークに大敵、控えめ
    ⑦EPA製剤を服用
    すると、総合病院での頸動脈エコーでは、プラークなし
    念のため、クリニックでも「0.6mm)
    プラークは改善されました!

    何より怖いのは、動脈硬化ですから。
    血糖値は100⇒89まで改善です!
    ありがとうございました

    • Dr.Shimizu より:

      ジョージさん、コメントありがとうございます。

      プラーク改善良かったですね。
      まだまだ糖質量が多いようですが。
      糖質を摂取しなければ脂質は敵ではありません。