悪性リンパ腫も糖質過剰症候群である

最近、フリーのアナウンサーが悪性リンパ腫であることを公表しました。ここ40年で悪性リンパ腫は男女ともに非常に増加しています。(図は最新がん統計より)

男性で40年間に約2.5倍、女性では約3.5倍です。以前は罹患率が血液系のがんの白血病と同じくらいであったのに、悪性リンパ腫はかなりの増加率です。

非常に多くの研究で悪性リンパ腫と肥満との関連を示してます。例えば、日本人の研究では、成人期初期のBMIが5増加するごとに、男性と女性の両方で悪性リンパ腫のリスクが有意に増加しました。(オッズ比 男性:1.28、女性:1.37)(論文はここ

肥満との関連以外でも、糖尿病との関連も示されています。例えば、中国の研究では、糖尿病と悪性リンパ腫の非ホジキンリンパ腫との関連は下の表のようです。(表はこの論文より改変)

年齢調整後の
HR(95%CI)
様々な調整後の
HR(95%CI)
全体1.94(1.30〜2.90)2.00(1.32–3.03)
男性
  全体1.96(1.01–3.80)2.20(1.10–4.40)
  未治療の糖尿病4.72(1.15–19.42)4.60(1.10–19.15)
女性
  全体1.93(1.16–3.19)1.89(1.12–3.19)
  未治療の糖尿病2.00(1.16–3.44)1.90(1.11–3.25)

 

特に未治療の糖尿病の男性では糖尿病ではない人と比較して4倍以上と非常に悪性リンパ腫のリスクが高くなることがわかります。

さらに糖尿病診断後の最初の5年間で、非ホジキンリンパ腫の発症リスクは男性と女性でそれぞれ2.82および60.78と最も高く、そのリスクは糖尿病の持続期間が長くなるにつれて減少していました。女性では糖尿病と診断された後、5年間は非常に危険な時期となるのです。

悪性リンパ腫は糖質過剰症候群だと考えられます。糖質過剰摂取によるインスリンの過剰分泌、インスリン抵抗性、高IGF-1血症、高血糖などにより起こると考えられます。

 

それ以外にも興味深い研究があります。食事アンケートを使用しているので、信用度が下がってしまいますが、人工甘味料や砂糖入り飲料と悪性リンパ腫との関連を示したものがあります。

その結果は人工甘味料入りのダイエットソーダの1日1回以上の摂取により、ダイエットソーダを摂取しなかった男性と比較して、非ホジキンリンパ腫のリスク比は1.31、多発性骨髄腫のリスク比は2.02に増加しました 。

また、通常の砂糖入りソーダのより多い消費量は、非ホジキンリンパ腫のリスク比は男性で1.66と増加が認められました。

アスパルテームだけの摂取量で分析すると最も摂取量の多い群(男性で1日143㎎以上)は非ホジキンリンパ腫のリスク比が男性で1.64となり、多発性骨髄腫のリスク比が3.36でした。

女性ではどれも統計的な有意ではありませんでした。何か性差をもたらすものがあるのでしょう。メタノールをホルムアルデヒドに変換する酵素の活性が女性よりも男性で高いことが原因かもしれません。

ちなみに人工甘味料としてアスパルテームを使用した飲料には、通常、1杯分にあたる約330mL中に185mgのアスパルテームが入っています。(ここ参照)

アスパルテームはアミノ酸のフェニルアラニンとアスパラギン酸の2つが結合したもののメチルエステルです。アスパルテームを摂取するとこれらのアミノ酸とメタノールに分解され、全身に循環します。メタノールは代謝されてホルムアルデヒドになります。ホルムアルデヒドは発がん物質です。500㎎のアスパルテームは50㎎のメタノールになり、50㎎のホルムアルデヒドになるようです。ヒトでは、ホルムアルデヒドの一日摂取許容量(ADI)は0.15mg/kg体重だそうです。50㎏の体重ではたった7.5㎎です。食事に由来するアメリカでのメタノールの最大の1日摂取量は2.28mg/kg体重です。50㎏の体重では114㎎です。

もちろん、この研究も糖質過剰摂取+人工甘味料摂取です。糖質制限をした場合にはどうなるかはわかりません。しかし、できれば(特に男性は)人工甘味料も避けるべきだと思います。

 

「Consumption of artificial sweetener- and sugar-containing soda and risk of lymphoma and leukemia in men and women」

「人工甘味料と砂糖を含むソーダの消費、および男性と女性のリンパ腫と白血病のリスク」(原文はここ

2 thoughts on “悪性リンパ腫も糖質過剰症候群である

  1. 仙台市にある東北公済病院という割と大きな病院で、糖尿病患者の教育入院に糖質制限を取り入れています。

    東北医科薬科大学病院では、メタボ体型の教授や栄養士が相変わらず無根拠・思考停止的に糖質制限を批判し、「バランス良く(糖質過剰に)食べる」を推奨し、マッチポンプ的な対応を繰り返してます。

    夏井先生著書『患者よ医者から逃げろ』を読んで府に落ちました。
    「専門医」ほど、治療の変更したがらない
    一因が記載されていました。
    糖尿病・糖質制限に関しても、患者にとっての良い悪いではなく、
    経済や政治的な事情で「専門医」の選択肢には無い、という事なのでしょうか。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      医師が普通に考えることができるのであれば、糖尿病の教育入院に糖質制限を取り入れる病院が増えてくると思います。
      しかし専門医は確かに学会の縛りがありますから。

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