肥満は舌まで太って呼吸を止める

睡眠時無呼吸症候群の主要な危険因子は肥満です。肥満になれば物理的に空気の通り道が狭くなるのは当然でしょう。肥満では喉だけでなく、舌にまで脂肪が付いてくるようです。

今回の研究では、減量と舌の脂肪について分析しています。肥満と軽度から重度の閉塞性睡眠時無呼吸を有する67人が、体重減少介入(集中的なライフスタイルの変更または肥満手術)の前後に睡眠の評価とMRIを受けました。BMIの平均は42.6で、6か月の体重減少介入により平均で9.5%の体重減少がありました。(図は原文より)

上の図は舌の脂肪の変化率(縦軸)と左側のグラフの横軸が体重の変化率、右側の横軸が無呼吸低呼吸指数(AHI:睡眠1時間あたりの「無呼吸」と「低呼吸」の合計回数)の変化率です。睡眠時無呼吸症候群の重症度はAHI5~15を軽症、15~30を中等症、30以上を重症としています。そうすると、体重が減れば、舌の脂肪も減少します。当然でしょうね。舌の脂肪が減ればAHIも減少しています。

 

上の図は体重減少に伴う上気道軟部組織構造の変化です。 睡眠時無呼吸の男性患者のベースラインと6ヶ月後の変化で、舌(赤)として定義されています。 軟口蓋(マゼンタ)、副咽頭脂肪パッド(黄色)、外側咽頭壁(緑)です。細かい構造は何のこちゃわかりません。全体的に体重減少によりボリュームが減っています。

上の図は舌のボリュームです。赤い部分が筋肉で、黄色が脂肪です。左の減量前と比較して、右の減量後の舌はずいぶんと脂肪が減っているのがわかります。脂肪のボリュームは半減しています。AHIは121から24.6へと劇的に改善しています。

舌脂肪の減少は、AHIの減少と強く相関し、減量を調整してもなお相関関係がありました。

この研究の結論の最後の言葉はちょっと笑えます。

「睡眠時無呼吸症候群の患者には、舌脂肪を減らす新しい治療法を検討する必要があります。」

…だって。舌の筋トレでもするのでしょうか?そうではなくて、体重を減少させれば良いのでは?舌の脂肪だけを減らすよりも、もっと効果があると思いますが…。

いずれにしても、肥満は舌まで太って、無呼吸をもたらすのです。糖質制限をすれば、睡眠時無呼吸症候群もかなり改善すると思います。CPAP(シーパップ:持続陽圧呼吸療法、機械で圧力をかけた空気を鼻から送り込み、空気の通り道を広げて睡眠中の無呼吸を防止する治療法)も良いですが、それでごまかしていては、糖質過剰症候群の他の症状がどんどん出てくるでしょう。

 

「Effect of Weight Loss on Upper Airway Anatomy and the Apnea Hypopnea Index: The Importance of Tongue Fat」

「上気道の解剖学および無呼吸低呼吸指数に対する体重減少の影響:舌脂肪の重要性」(原文はここ

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