横綱白鵬は今場所、連敗し、休場となりました。(関連記事はここ)その一つの原因が蜂窩織炎です。親方は「場所前の稽古でかかとが割れて菌が入った。熱を出して病院で治療している」と説明しているようです。
この蜂窩織炎、もちろんどんな人でもなる可能性がありますが、やはり肥満や糖尿病との関連も大きいと思われます。
例えば、BMIと蜂窩織炎の関連についてです。
代謝的に不健康な人は、つまり空腹時血糖値100mg/dL、または血圧130/85mmHg以上または血圧の降圧薬の現在の使用、または中性脂肪値150mg/dL以上または脂質低下薬の現在の使用、または低HDLコレステロール(男性40mg/dL未満、女性50mg/dL未満)、またはHOMA-IR2.5以上として定義されるインスリン抵抗性がある人とし、過体重や肥満でもこれらに当てはまらない場合は代謝的に健康な人としました。(表は原文より改変)
BMI | 年齢および性別を調整したハザード比(HR) | 多変数調整されたHR | |
---|---|---|---|
モデル1 | モデル2 | ||
全体 | |||
<18.5 | 1.07 | 1.07 | 1.06 |
18.5–22.9 | 1 | 1 | 1 |
23–24.9 | 1.07 | 1.07 | 1.08 |
25–29.9 | 1.1 | 1.09 | 1.12 |
≥30 | 1.22 | 1.19 | 1.28 |
代謝的に健康な人 | |||
<18.5 | 1.05 | 1.06 | 1.04 |
18.5–22.9 | 1 | 1 | 1 |
23–24.9 | 1.12 | 1.11 | 1.13 |
25–29.9 | 1.08 | 1.06 | 1.1 |
≥30 | 1.26 | 1.23 | 1.31 |
代謝的に不健康な人 | |||
<18.5 | 1.09 | 1.1 | 1.08 |
18.5–22.9 | 1 | 1 | 1 |
23–24.9 | 1.05 | 1.04 | 1.05 |
25–29.9 | 1.12 | 1.10 | 1.13 |
≥30 | 1.23 | 1.20 | 1.26 |
BMI | 年齢および性別を調整したHR | 多変数調整されたHR | |
---|---|---|---|
モデル1 | モデル2 | ||
全体 | |||
<18.5 | 0.54 | 0.55 | 0.57 |
18.5–22.9 | 1 | 1 | 1 |
23–24.9 | 1.59 | 1.55 | 1.48 |
25–29.9 | 2.58 | 2.47 | 2.21 |
≥30 | 5.22 | 4.80 | 3.78 |
代謝的に健康な人 | |||
<18.5 | 0.83 | 0.82 | 0.78 |
18.5–22.9 | 1 | 1 | 1 |
23–24.9 | 2.01 | 2.01 | 2.16 |
25–29.9 | 4.38 | 4.31 | 4.96 |
≥30 | – | – | – |
代謝的に不健康な人 | |||
<18.5 | – | – | – |
18.5–22.9 | 1 | 1 | 1 |
23–24.9 | 1.15 | 1.12 | 1.04 |
25–29.9 | 1.61 | 1.55 | 1.31 |
≥30 | 4.12 | 3.86 | 2.77 |
上の表は蜂窩織炎での入院のリスクです。先ほどの発症だけの表よりもBMIとの関連は顕著となり、過体重や肥満では調整モデルにもよりますが、3倍前後~5倍前後のリスク比です。
つまり、メタボであろうとなかろうと肥満や過体重は蜂窩織炎のリスクを高め、入院するほどの重症な蜂窩織炎では非常にリスクが高いことがわかります。
他の研究(その論文はここ)では、糖尿病と蜂窩織炎との関連について、リスク比は2型糖尿病で2.03、1型糖尿病で2.84であり、HbA1cによるリスク比は次の表のようになっていました。(表はこの論文より改変)
HbA1c | 6未満 | 6~7 | 7~8 | 8~9 | 9~10 | 10~11 | 11以上 |
1.22 | 1 | 1.07 | 1.28 | 1.63 | 1.74 | 2.29 |
ほとんどの力士は過体重か肥満であり、糖尿病の割合も一般の人よりも多いのではないでしょうか?相撲は人と人が組み合うスポーツなのに、非常に珍しく体重による階級が存在しません。だから、有利に戦おうと多くの力士は体重を増やすのです。もちろん昔の舞の海や最近の炎鵬などは小柄で、そこまで太っていない力士もいなくはないですが、ほとんど他の力士は肥満です。脂肪の下には筋肉がモリモリだとは思いますが、その筋肉のメリットを帳消しにするほどの脂肪が付いています。
力士は昔から糖質過剰摂取で体重を増やしています。練習をしてもあれだけ太ることができるというのは、いかに糖質をふんだんに摂って、インスリンをガンガンと分泌しているかですね。
こんなに不健康なスポーツは他にはないでしょう。だから、相撲人口も減り続けているのかもしれません。(もちろん子供の数自体が減っていますが)
相撲にも体重の階級を作り、体重を無理に増やさなくても勝負ができるようにしないと、これからも病気との戦いをしながらの力士が後を絶たないでしょう。糖質制限をして筋肉メインの体が必要です。
次回以降には力士の糖尿病、死亡率などについて書いてみたいと思います。
糖質過剰症候群
「Metabolic Obesity Phenotypes and Risk of Cellulitis: A Cohort Study」
「代謝性肥満の表現型と蜂巣炎のリスク:コホート研究」(原文はここ)
ガンで死ぬ元力士はメチャクチャ多いです。
第2弾期待してます。
らこさん、コメントありがとうございます。
本日の記事と、近日中にもう一つ記事をリリース予定です。