相撲は世界一不健康なスポーツかもしれない その3

以前の記事「その1」「その2」の続きで、今回は力士の死亡率、死因についてです。

力士の平均死亡年齢は56.0±14.2(22~87)歳ですが、年次別にみると1898~1947年における死亡年齢の平均は46.0±11.1(23~75)歳、1948~1962年は57.5±11.2(33~82)歳、1963~1977年は60.6±12.0(27~85)歳、1978~1992年は65.2±12.9(22~87)歳と段々と寿命は延びてきています。人口動態統計を基に1925年と1985年の年齢階級別死亡者数から20歳以上男子の平均死亡年齢を推計すると、それぞれ56.1歳と69.1歳なので、やはり比較的短命であると言えます。(図は原文より)

上の図はBMIによる生存率のグラフです。BMI32.9以下(点線)とBMI42以上(実線)となっていて、古いデータではありますが、なんとBMI42以上の力士は35歳では半分になっていて、50歳を迎えられる人はいませんでした。

これが国技の現状です。(現状はもう少し良いか…)

比較的最近のデータで昭和60年から平成4年までの7年間に現役力士は10名死亡しています。その年齢、死因は次のようです。(図はここ「大相撲における内科的、整形外科的傷害予防」から)

10代~20代の若い青年が心血管疾患をはじめ青年とは思えない死因で死んでしまっているのです。

昭和生まれの横綱の亡くなった年齢、死因は次のようです。

若乃花  82歳 腎細胞がん
朝 潮  58歳 脳出血
柏 戸  57歳 肝不全(腎臓病で透析)
大 鵬  72歳 心室頻拍
佐田の山 79歳 肺炎
玉の海  27歳 虫垂炎手術後に併発した急性冠症候群及び右肺動脈幹血栓症
琴 櫻  66歳 敗血症による多臓器不全(以前に糖尿病により左足切断している)
輪 島  70歳 咽頭がん及び肺がん
北の湖  62歳 直腸癌による多臓器不全
千代の富士61歳 すい臓がん
隆の里  59歳 急性呼吸不全(若いころから糖尿病)
双羽黒  55歳 慢性腎不全

その他、大関では貴ノ浪さんが43歳、北天佑さんが45歳、貴ノ花さんが55歳で死去されています。みなさんがんです。それ以外にも潮丸さん(東関親方)は血管肉腫というがんで41歳、逆鉾さん(井筒親方)はすい臓がんで58歳で亡くなっています。

これだけのサンプル数から、短命かどうかは何とも言えませんが、比較的40~60代で亡くなっているように見えます。

双羽黒以降の横綱は亡くなっていませんが、引退原因になった疾患やその後の持病を調べると、大乃国さん(睡眠時無呼吸症候群、蜂窩織炎)、旭富士さん(慢性膵炎)、曙さん(心不全により意識不明の重体、心停止による記憶障害)、武蔵丸さん(末期の腎不全で妻から腎臓提供)となっています。肥満、糖質過剰摂取などが大きく関係していると考えられます。

力士のことを本当に考えるのであれば、毎年の健康診断でOGTTなどを行い、境界群になったり、高中性脂肪血症になった時点で体重の減量、食事の改善を勧告し、改善しない場合には出場停止などにすべきでしょう。そして、その1でも書いたように、階級別にすべきです。10代~20代で職業力士のために体を壊してまで肥満になる、糖質を過剰摂取する必要があるのでしょうか?

力士の健康を日本相撲協会はもっと問題にすべきでしょう。

 

「力士の死亡率と死亡率の危険因子」(原文はここ

糖質過剰症候群

6 thoughts on “相撲は世界一不健康なスポーツかもしれない その3

  1. 昭和60年から平成4年までの7年間に現役力士は10名死亡

    前頭が1人、9人が三段目以下。
    玉の海のように横綱にまで昇進しての死ならば、選択肢の1つと思えるが、給料が1文も出ない幕下にすら達しない内の死は、「無駄死に」の1語に尽きる。
    世界一不健康なスポーツですね → 相撲

    1. らこさん、コメントありがとうございます。

      やっている力士は、これほど健康に有害だとは思っていないのでしょうかね?

  2. 以前,豪栄道は糖質制限を取り入れているという報道がありました。
    今も続けているかはわかりませんが。
    <優勝の要因は「食事を変えたから」大相撲大関・豪栄道豪太郎(30歳)>
    https://news.1242.com/article/104210

    私自身がかなり厳格な糖質制限者(糖質制限歴9年目)で,かつ大相撲ファンでもあるので,以前から力士の糖尿病は気になっていました。
    今回の清水先生のエントリーを読み,こうした情報を公開してくださることに感謝するとともに,心底,暗澹たる気持ちになりました。
    たとえば,今注目されている若手力士の貴景勝は,身長が低いため,体重を増やし身体を大きくすることで勝ち上がってきました。その体型は,力士としてももう異形の部類に感じます(体が球形に近い)。今は若いから問題ないのかもしれませんが…。

    1. たかはしさん、コメントありがとうございます。

      貴景勝本当に球形の体つきですよね。異常に見えます。
      若いから問題ないのではなく、積み重なっていく酸化ストレスが病気をもたらすのですから、のんきなことは言えないと思います。

  3. 清水先生、こんにちは。

    千代大龍秀政という力士の食生活についてウィキペディアに書かれてありました。それ
    によると、

    * 「『原液7割・水3割』のカルピスを愛飲していた」「原液でも飲んでいた」
    * 「2012年8月には空腹時の血糖値が『480』と測定された」
    * 「2013年11月、両目の網膜剥離と緑内障を発症」
    * 「2015年1月、両足血行障害を発症」

    よく「力士の食事の回数は一日二食」「食事の間隔が長いと身体が飢餓状態になり、その状態で食べるから太る」としたり顔で抜かしている人がいますが、
    「相撲部屋で提供される食事が1日に2回」というだけの話であって、この力士に限らず、実際には1日に何度となく間食をしまくっているはずです。それも、炭水化物・砂糖・果糖たっぷりのものを。炭水化物をガツガツ食べていれば、どんどん太れますからね。
    「力士の身体は脂肪の塊に見えるだけで、全部筋肉だ!肥満じゃない!」などと平気で抜かす人もいますが、本気でこんなことを言っているのだとしたら正気ではありません。筋肉もあるけれど、相当な量の脂肪も蓄えています。
    「では、力士は毎日激しい運動をしているのに明らかにでっぷりと脂肪が付いているのは何故ですか?」→答えは明らかで、炭水化物が多いものを大量に食べているから、に他ならない。この千代大龍秀政という力士こそがその証拠です。だから空腹時の血糖値が「480」とかいうぞっとするような数値になるわけだし、膵臓もぶっ壊れ、目の機能も低下したのです。

    先日、コロナで命を落とした力士について報道されましたが、彼も炭水化物付の食生活で、身体の免疫力が弱まっていたところで、そこにコロナが止めを刺した、といったところではないでしょうか。

    相撲協会をはじめ、この異常な実態に対して疑問にすら思わない人たちを、私は正直に申し上げて「おぞましい」と感じます。こんなものが日本の「国技」だなんて、本当におぞましい。肥満・糖尿病・心臓病・心血管疾患の患者の大量生産を促進するスポーツのどこが「国技」なのでしょうか。

    1. クリードンさん、コメントありがとうございます。

      相撲協会にも顧問医師がいるはずです。それでもこのような状態ですから、どうしようもないでしょう。

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