これまでも、高齢者の血圧に関して記事にしてきました。(「高齢者の血圧を下げると死亡率が上がる」「高齢者は血圧を下げすぎてはいけない! その1」など参照)80歳を超えていても、若い成人と同じようにガンガン血圧を下げられていることもあります。血圧を下げる薬をやめると元気になる方もいらっしゃいます。
高齢者になるとどうしても動脈硬化が進行してきますので、血圧は高くなります。その動脈硬化となった状態で血液を各臓器に流さなければならないので、ある程度の高血圧が必要になると思います。それを無視して若い人のような血圧を維持するために薬をいくつも投与されれば、重要な臓器の血流は低下し、有害な状態を招く可能性があります。
今回の研究では、65~84歳と85歳以上の死亡率と血圧の関係を分析しています。6年間の死亡率を見てみると、収縮期血圧130mmHgの65〜84歳の男性は、収縮期血圧180mmHgの男性と比較して生存率が有意に高かったのですが、収縮期血圧180mmHgの85歳以上の男性は、収縮期血圧130mmHgの男性と比較して有意に高い生存率を示しました。また、収縮期血圧130mmHgの65〜84歳の女性は、収縮期血圧180mmHgの女性と比較して有意に高い生存率を示しました。85歳以上の女性では、収縮期血圧の低血圧カテゴリーと高血圧高血圧カテゴリーの間に生存率の差はありませんでした。(図は原文より)
上の図は、収縮期血圧の10mmHgの増加毎に関連する死亡のリスクを、年齢層と性別で示しています。そうすると、65歳~84歳の男性では、収縮期血圧の10mmHg増加毎に伴う死亡のリスクが4%増加し、85歳以上の男性では、収縮期血圧の10mmHg増加毎にリスクが8%減少しました。65歳~84歳の女性では、収縮期血圧の10mmHg増加毎に伴う死亡のリスクが10%増加し、85歳以上の女性では収縮期血圧増加との死亡の関係はありませんでした。
上の図は同様に、拡張期血圧の10mmHgの増加毎に関連する死亡のリスクを示しています。65〜84歳の男性は、拡張期血圧の上昇に関連した死亡のリスクが低下していますが、女性の場合、拡張期血圧のレベルは死亡率とは関係がありませんでした。
収縮期血圧も拡張期血圧も併存する疾患などによってリスクは当然高くなります。糖尿病、がんや脳卒中、日常の活動性の低下などは大きくリスクになっています。
上の図は、65〜84歳と85歳以上の男性の収縮期血圧の6年間での死亡の確率を示しています。ベースラインの収縮期血圧と死亡率の間のU字型の関係が示されています。 65~84歳の男性では、6年のフォローアップ中に死亡する最低死亡率に関連する収縮期血圧は134mmHgでしたが、85歳以上の男性では182mmHgでした。女性の同様の分析では、65~84歳までの人と85歳以上の人との間の最低死亡率に関連する収縮期圧のレベルに有意な差は示されませんでした。
今回の研究では男性の高齢者で血圧の上昇と死亡率の低下の関係が認められました。女性ではリスクの関連を認めなかったので、いずれにしても高齢者で積極的に若い人のような血圧を目標にすべきではないと考えられます。
80歳を超えたら、薬の断捨離が必要かもしれません。
心血管疾患
「The relationship between blood pressure and mortality in the oldest old」
「最高齢における血圧と死亡率の関係」(原文はここ)
機会があって調べた事がありますが、
高圧薬の副作用は、凄まじいと感じました。
命がけで血圧を下げる為の薬でしょうか?
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
副作用はほとんど起こらないものも添付文書には書いてあるので、一概に恐ろしいものではありませんが、
副作用のない薬は存在しませんので、リスク&ベネフィットで考えないとだめだと思います。