よく、メコバラミン(メチコバール)というビタミンB12の薬を飲んでいる人を見かけます。しかも漫然と飲み続けています。患者さんにメコバラミンの効果を尋ねても、ほとんどの人が効果を感じていません。効能効果は「末梢性神経障害」です。
耳鼻科で突発性難聴などに処方されることがありますが、多くは整形外科でしょう。痛みやしびれに効果があると言われていて、そのような症状があれば処方されてもおかしくはありません。しかし、効いたという話はほとんど聞きません。
さて、このビタミンB12ですが、血中濃度を測定できますが、通常ではまず測定しません。PPIを飲んでいたり、胃を切除されている場合、またはビーガンの人を除いては、まずはビタミンB12欠乏となりません。
このビタミンB12の血中濃度が高い場合、死亡率が高くなるという研究があります。基準値は180~914(pg/mL)です。ただ、この基準値は健康と思われる人のほとんどの人がこの範囲に入っているという程度の意味しかなく、人間にとって最も健康的な値というわけではありません。透析をしている人ではビタミンB12の濃度が550pg/mL以上だと死亡リスクが高くなるという研究(その論文はここ)もあります。今回の研究は腎機能や年齢にかかわらずビタミンB12の有害性を示しています。(図は原文より)
上の図は横軸がビタミンB12の血中濃度です。縦軸は死亡リスクです。ビタミンB12が400ちょっとを超えると段々とリスクが高くなります。基準値の収まっていてもリスクは高くなる可能性があります。
上の図は生存率です。Q1がビタミンB12の血中濃度が最も低い群でQ4が最も高い群です。最も高い群が最も生存率が低くなっています。Q1に対するQ4の調整後のリスク比は1.85で、一般成人において血中のビタミンB12濃度が高いと死亡リスクが有意に上昇していました。
高齢、高血圧、eGFRの低下、尿中アルブミン排泄量の上昇、肝臓酵素濃度の増加などのベースラインの特性は、ビタミンB12の血中濃度の上昇と正の関連がありました。つまり、ビタミンB12の上昇は様々な疾患や状態の結果である可能性があります。しかし、以前の記事「糖尿病性腎症はビタミンB群のサプリで悪化するかもしれない」で書いたように、どうやらビタミンB群のよるリスク増加は十分に可能性がありそうです。
そのような状態で、効果もないのにビタミンB12の薬やサプリメントを飲む必要はないでしょう。
整形外科などで処方されたメコバラミンは効果がありますか?無ければすぐに止めともらった方が良いかもしれませんね。
「Association of Plasma Concentration of Vitamin B12 With All-Cause Mortality in the General Population in the Netherlands」
「オランダの一般集団におけるビタミンB12の血漿濃度と全原因死亡率との関連」(原文はここ)
疲れにアリナミン!
野菜不足には青汁、元気の源マカ/黒酢ニンニク、
ロコモにはグルコサミン/ヒアルロン酸/プロテオグリカン、
認知機能低下にはEPA/DHA、老化にセサミン、
二日酔いにシジミ習慣でスッキリ、
血圧が120を越えたら胡麻麦茶….
飲むだけで改善されれば日本は健康大国ですが、勿論そんな事はありません。
気休めにしては高い買い物と思います。
(企業のお金儲けに付き合う余裕は有りません)
Twitterや著書などで筋トレを布教されているtestosteroneさん
「8時間寝て、食事整え、週3回運動習慣で、
人生上手く行く!」
の方を私は支持実践してます。
鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。
世の中の健康に良いと言われているものや寿命を延ばすと言われているものを全部摂取したら、300歳くらいまで生きられそうですね。(笑)
8時間睡眠が良いかどうかはよくわかりませんが、糖質制限+運動が私は一番いいと思っています。
ビタミン12が豊富な食材といえば水煮のサバ缶。サプリはいらないでしょう。
ところで、「脚気の歴史」(著者 板倉聖宣)に興味深い記述を発見しましたので紹介します。1943年(昭和18年)に陸軍医務局発行の「軍陣医学提要」の「脚気」の項目に以下の記述があるそうです。
【明治17年以後、米食を米麦食に変えたことで、急激に軍隊の脚気の減少をみたのであるが、これは森軍医総監の達見によって主唱せられたる結果であると・・・】
森軍医総監というのは森鴎外のことですね。しかし、たしか森鴎外は生涯にわたり、陸軍内における麦飯支給には反対し続けたはずです。陸軍医務局による「歴史の偽造」のひとこまといえるでしょう。
ちなみに海軍はいちはやく麦混ぜ飯にきりかえたので、脚気による死亡をほぼゼロに抑え混ぜたということです。このへんの知識は糖質制限の本にくわしく載っています。
やまもとさん、コメントありがとうございます。
歴史は苦手でよくわかりませんが、脚気は糖質過剰摂取の現代だから問題でしょう。
糖質過剰の乳幼児の犠牲者も後を絶たないのではないでしょうか?