リポタンパク質のLDLにはインスリン様作用があるかもしれない

リポタンパク質のLDLはLDL受容体にくっ付いて細胞内に取り込まれます。一方インスリンもインスリン受容体にくっ付いて作用を示します。LDLは脂質の代謝に関連し、インスリンは糖質の代謝に関連しますが、インスリンは脂質の代謝にもかかわっています。インスリンがLDL受容体の発現を増加させることがわかっています。

インスリン抵抗性は、機能障害のあるLDL受容体によるクリアランス不良となり、LDLが血管内に蓄積することに関連しています。

そこで、LDL受容体とインスリン受容体の関係を調べてみると、面白いことがわかります。この2つの受容体は細胞表面で複合体を形成しているようなのです。そしてインスリンが増加すると、この2つの受容体は分離するようなのです。そしてLDL受容体の機能活性が3倍程度に増加したのです。インスリンが低下すると、またこの2つの受容体は複合体になるようです。

さらに面白いことに、LDLはLDL受容体とインスリン受容体の複合体を介して、インスリン様の作用を示すようなのです。(図は原文より)

上の図はAはグルコースの取り込みを示しています。左からコントロール、LDL、インスリンです。インスリンが最もグルコースの取り込みを増やしていますが、LDLでも少し増加しています。

Bはグルコースを取り込むGLUT1を示しています。左側が細胞質で、右側が細胞膜です。コントロールとLDLを加えて5分後~30分後まで測定しています。そうすると、LDL5分後で最もGLUT1が細胞質から細胞膜に移動しているようです。

CはGLUT1の移動をLDLとインスリンとで比較したものです。インスリンが最もGLUT1の細胞質から細胞膜への移動を促進しますが、LDLでもコントロールと比較するとかなり移動が起きているようです。下の図はそのメカニズムの図です。

面白いことに、LDL受容体はインスリン受容体と相互作用し、LDLはオートファジーとグルコースの取り込みに対するインスリンの作用を模倣しているのです。つまり、LDLにも糖質の代謝作用、グルコース取り込み作用があると考えられるのです。

そうすると、スタチンによって糖尿病が増加するメカニズムの一つがこれで説明できる可能性があります。以前の記事「スタチンの使用は、はっきりとした糖尿病発症のリスク増加がある!」でも書いたように、スタチンは糖尿病発症のリスクを増加させるのです。

スタチンが糖尿病発症を増加させるメカニズムははっきりしていませんが、末梢インスリンシグナル伝達の変化、インスリン抵抗性の悪化またはインスリン分泌障害なども考えられています。そして、今回の研究のようにLDLそのものがグルコースに対してインスリン様作用を示すのであれば、LDL低下により血糖値が上昇する可能性があると考えられます。

LDLは必ずしも悪玉ではありません。LDLを低下させることは、有害であるかもしれません。

LDLコレステロール

「The association between insulin and low-density lipoprotein receptors」

「インスリンと低密度リポタンパク質受容体の関係」(原文はここ

「Low density lipoprotein mimics insulin action on autophagy and glucose uptake in endothelial cells」

「低密度リポタンパク質は、内皮細胞のオートファジーおよびグルコース取り込みに対するインスリン作用を模倣する」(原文はここ