みなさんも「白衣高血圧」という言葉を聞いたことがあると思います。白衣高血圧とは、「診察室や医療現場で測定した血圧が高血圧(140/90 mmHg以上)であっても、診察室外血圧が正常域血圧(家庭血圧 135/85 mmHg未満など)を示す状態です。診察室血圧で高血圧と診断された患者の15~30%が白衣高血圧に相当し、その頻度は高齢者で増加します。」(ここを参照)
白衣高血圧患者の臓器障害および予後について、特に脳卒中では無症候性脳梗塞および脳卒中予後とも正常血圧と差がないことを示した研究もあるようです。(ここ参照)ただ、既に臓器障害やインスリン抵抗性を合併している白衣高血圧は「白衣高血圧症候群」として別個に扱う必要があることが提唱されています。
なぜ、急にこんなことを書くかというと、最近高地トレーニングのスタジオで血圧を測定した時に、なんと血圧が150を超えていたのです。ビックリしてもう一度測定しましたがやはり高かったのです。しかし、自宅で測定するといつも120台以下です。家の血圧計がおかしいのかと思い、家電屋さんに行って、そこに展示してあるいくつもの血圧計で片っ端から測定していきました。130台を示すこともありましたが、ほとんどの機器は自宅と同じように120台以下でした。
高地トレーニングという状況に、緊張したのか、興奮したのか、やはり年なのか?まあでも全く気にしていません。
今回の研究では、そんな白衣高血圧の状況を示しています。(図は原文より)
上の図は縦軸が割合です。横軸は左がクリニックの測定で、真ん中が自宅測定、右が4~6か月後のクリニック測定です。140以上の高血圧でが薄いグレーのバー、140未満が黒のバーです。そうすると、クリニックで高血圧を示した人のうち、なんと65.6%が自宅では140未満だったのです。しかし、再度クリニックで測定すると140未満の人は29%にまで下がってしまったのです。
平均(SD) | 最小 | 最大 | ||
クリニック血圧、mmHg | ||||
収縮期(n = 90) | 158(14) | 131 | 207 | |
拡張期(n = 90) | 91(12) | 63 | 132 | |
自宅血圧、mmHg | ||||
収縮期(n = 90) | 133(10) | 107 | 158 | |
拡張期(n = 90) | 81(8) | 63 | 99 | |
クリニック血圧(試験後)、mmHg | ||||
収縮期(n = 70) | 148(18) | 111 | 195 | |
拡張期(n = 70) | 85(11) | 60 | 112 | |
クリニック血圧カットオフポイント | ホーム血圧 <140/90 mmHg、数(%) | |||
<160/95 mm Hg(n = 39) | 25(64.1) | |||
> 160/95 mm Hg(n = 51) | 34(66.7) | |||
<155/92 mm Hg(n = 32) | 22(68.8) | |||
> 155/92 mm Hg(n = 58) | 37(63.8) |
上の表を見るとクリニックの血圧と自宅の血圧ではずいぶん違うことがわかります。平均で20以上の差があります。最大では40近い差です。クリニックの血圧の高さの程度は自宅の正常の血圧となんら関連はないようです。
白衣高血圧というのは予想以上に多いのかもしれません。慌てて血圧の薬を使用したり増やしたりする前に、自宅での血圧をちゃんと測定してみることも重要かもしれません。
心血管疾患
「Home Blood Pressure Monitoring in Cases of Clinical Uncertainty to Differentiate Appropriate Inaction From Therapeutic Inertia」
「適切な不作為を治療的慣性から区別する臨床的不確実性における家庭血圧モニタリング」(原文はここ)
先生もよくおっしゃっている「脳の罠」、脳=心が身体に与える影響力は想像以上なのでしょうね。
有効活用できれば、と思います。