新型コロナウイルスと血栓症 その7 高血圧と血栓症

新型コロナウイルス感染での重症化リスクで最も多い基礎疾患は高血圧です。ニューヨークの新型コロナの死者の約55%は高血圧を持っていました。重要化する可能性も2倍以上とも考えられています。高血圧は心血管疾患や糖尿病の人でも当然併存していますので、最も多いのも納得できます。

一方、今回の新型コロナウイルスの重症化は血栓症との関係がかなり深いと思われます。では、高血圧で血栓症は起きるのでしょうか?

高血圧があるとどちらかというと出血をイメージしそうですが、実際のところは高血圧の合併症は出血性よりも血栓症の方が多く認められます。高血圧が血管の内皮を障害するのか、血管内皮障害が高血圧をもたらすのか?その両方向で作用すると思いますが、もともとの原因は糖質過剰摂取だと考えられます。

拙著「糖質過剰症候群」で書いたように、糖質過剰摂取は血管の内腔にびっちりと生えている毛のような組織、「グリコカリックス」を減少させます。グリコカリックスは血管の内皮を保護し、血管拡張作用、凝固阻害因子の保持、血小板凝集抑制、炎症反応の調節、血管の透過性の維持などの役割を担っています。

つまり、血管のグリコカリックスが障害されている病態では、高血圧となり血栓症ができやすい状態となっているのです。高血圧そのものもグリコカリックスを障害すると考えると、高血圧を治療することに意味はあるのですが、グリコカリックス障害の根本原因である糖質過剰は変化していないので、薬で血圧が正常化していても血栓症のリスクは残るかもしれません。

では、高血圧だと凝固系、線溶系はどのようになっているのでしょうか?高血圧のある29人の男性(平均45歳)と同じ年齢の15人の正常な男性で研究されました。(図は原文より)

データを上の表に示します。フォンウィルブランド因子(vWF)の濃度は、正常群と比較して、高血圧群で有意に高く、高血圧群では正常群と比較して、Dダイマーとアルファ2-アンチプラスミン(線溶阻止因子)の有意な増加と抗プラスミン活性(抗線溶活性)の減少を示しました。また、高血圧群の平均フィブリノーゲン濃度は、正常群よりも高かったのですが、統計的有意差はありませんでした。凝固因子に有意差はありませんでした。

上の図の表は運動負荷テストを行った時の変化です。運動後、vWF、アルファ2アンチプラスミン、Dダイマー、t-PAの濃度は両群で大幅に上昇し、相対的な増加の大きさは両群で同様でした。

下のグラフは運動前拡張期血圧と運動前のvWFとDダイマーの濃度の関係で、有意な正の相関がありました。 つまり、拡張期血圧が高いほど凝固しやすいことになります。

思ったほど大きな違いがありませんでしたが、フォンウィルブランド因子(vWF)の違いは内皮機能障害のマーカーとして考えられています。(ここ参照)

他の研究でも高血圧とフォンウィルブランド因子(vWF)との相関を示しています。(図はこの論文より)

上の図の横軸は収縮期血圧で、縦軸はフォンウィルブランド因子です。

フォンウィルブランド因子は内皮細胞損傷部位などでのフィブリンや血小板に富む血栓の形成に大きな役割を果たすと考えられます。

通常高血圧を伴う、虚血性心疾患や脳梗塞をはじめとする心血管疾患、血栓性疾患、炎症性疾患ではフォンウィルブランド因子の増加と関連しています。(ここ参照)高血圧は単独の病態ではないので、血圧と血栓症の関連だけを取り上げるのは非常に難しいですが、糖質、特に果糖の過剰摂取により、交感神経が活性化したり、血管抵抗が増加したり、血管拡張物質が低下したりして高血圧をもたらしていることを考えると、高血圧は血栓症と十分に関連があると考えられます。

新型コロナウイルスにより、全身に炎症が起き、血管炎で血管が障害されているかもしれません。高血圧があると、もともと血管が脆弱な状態であると考えられます。

やはり新型コロナウイルスには糖質制限でしょう。

糖質過剰症候群

 

「Coagulation and inhibitory and fibrinolytic proteins in essential hypertension」

「本態性高血圧症における凝固および抑制および線溶タンパク質」(原文はここ

6 thoughts on “新型コロナウイルスと血栓症 その7 高血圧と血栓症

  1. いつも、ありがとうございます。いつもはどう関することが多いのですが、今回は異論が有ります。糖質と言うよりも、精製物や化学合成物とした方が良いように思います。糖質の場合は、精製糖質と玄米などでは血中濃度の上がり方が違うのは御存知ですね。自然海水塩と精製塩も同じですね。

    あと、乳脂肪と血圧や動脈硬化や血栓の出来やすさも関係しているということも知られていますね。これは、血栓の出来やすさの日本人と欧米人の差の理由の一つと考えられるのでは無いでしょうか?

    本名で、FBをしていて、新型コロナの情報を集めています。

  2. >新型コロナウイルスにより、全身に炎症が起き、血管炎で血管が障害されているかもしれません。高血圧があると、もともと血管が脆弱な状態であると考えられます。
    やはり新型コロナウイルスには糖質制限でしょう。

    理屈で考えても実例からみても、主食概念を取り払い、糖質制限・高タンパク・高脂質の食生活が望ましいに決まっているのですが、依然として世の中の多くの人は糖質たっぷりの食品をパクパクと食べて、「白米を食えないなら死んだほうがましやろ」とか、「どや顔」で言う人もけっこういます。

    それはともかく、「コロナ禍のあらし」は終息の方向に向かっているのでしょうか。政治家も法律実務家もそうですが、ある意味「割り切り」が肝心です。経済の悲惨な状況にも配慮しないとダメです。政治家は善悪ではなく結果がすべて、結果責任です。グズグズしているとコロナ死の何十倍、何百倍の「経済破綻死」が目前に迫りつつあります。決断の時ですね

    1. やまもとさん、コメントありがとうございます。

      「収束」に向かっていると思います。終わりはないでしょうから。しかし、もう経済はボロボロでしょう。
      海外からの旅行者もしばらくは難しいでしょうから。

  3. 糖質制限という言葉への疑問の続きです。

     栄養的な糖質制限への疑問は以下にまとめて有ります。

    「『老けない人は焼き餃子より水餃子を選ぶ』…糖質制限への疑問、栄養的視点から」
    https://kuhuusa-raiden.hatenablog.com/e…/20160303/1456968143

     乳脂肪と血栓系との関連は以下に詳しいです。糖質制限への疑問もかかれています。

    「生活習慣病を予防する食生活」
    http://www.eps1.comlink.ne.jp/~mayus/

  4. 糖質制限に関しては様々な意見がありますが、玉石混交の、「石」の意見が多すぎるように思います。

    私はこれからも、実感と自己責任で
    スーパー糖質制限を継続していきます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です