日本は新型コロナウイルスによる感染で緊急事態宣言が延長されましたが、各地で自粛がどんどん緩んできています。それにも関わらずどんどんPCR検査陽性者数、陽性率は減少しています。8割接触減を行わないと感染がなかなか減らないと脅されていたのも、もう慣れっこになってしまいました。実際には急速に減少です。北海道は札幌の感染者が減少したばかりなので解除されないでしょう。でも私はもう解除してほしいです。解除してまたどうなるのか…?
世界において、新型コロナウイルスのパンデミックでは5月13日現在で約30万人の死者が出ています。1日に今でも5,000人以上が亡くなっています。そして、その多くは70歳以上の高齢者が中心です。感染症での死亡としては高齢者になるほどリスクが高くなるのは当然でしょう。また、重症化や死亡のリスクとしては高血圧、糖尿病、肥満などが挙げられています。
しかし、世界中で糖質過剰摂取による糖尿病や肥満によって毎年大量の死者が出ていると考えられます。もちろん単純に感染症といわゆる生活習慣病を比較することはできませんが、世界中いたるところで大量の死者に繋がっているという意味では同様です。
WHOによると、2016年には推定160万人の死亡が直接糖尿病によって引き起こされました。(ここ参照)これは、1分あたり3人の死亡、毎日4,300人もの驚異的な数です。 そして、高血糖に起因する死亡のほぼ半分は、70歳未満で発生しています。ここは感染症との大きな違いです。
また、ちょっと古いですが2009年のWHOの「GLOBAL HEALTH RISKS」というレポートでは、2004年の時点の死亡のリスク因子が挙げられています。(図はここより)
上の図を見ると、高血圧で年間750万人が死亡し、過体重や肥満では280万人が死んでいると報告しています。高血圧で1分に14人、1日20,548人が死亡し、肥満では1分に5人、1日7,671人が死亡している計算になります。
WHOによると、世界的な肥満は1975年以降ほぼ3倍になりました。(ここ参照)
2016年には、18歳以上の19億人を超える成人が過体重か肥満であり、これらのうち、6億5,000万人以上が肥満でした。18歳以上の成人の39%が2016年に過体重であり、13%が肥満でした。
さらに大人だけでなく、5歳未満の3,800万人の子供は、2019年の時点で過体重または肥満でした。2016年には、5歳から19歳の3億4千万人以上の子供と青年が過体重または肥満でした。
新型コロナウイルスのように急速な勢いで拡大しているわけではないかもしれませんが、肥満も高血圧も、そして糖尿病もゆっくりとしたパンデミックです。これらの糖質過剰症候群は感染して広がるわけではありませんが、感染しているかの如く、どんどん増加しています。
ウイルス感染と糖質過剰症候群のパンデミックの最も大きな違いは、自分自身で防げるかどうかです。新型コロナウイルスは感染しないように気を付けていても知らないうちに感染する可能性が十分にあります。しかし、糖質過剰症候群はほとんどの場合自分自身で防御可能です。
新型コロナウイルスでは時に急速に悪化し、死亡してしまうことがありますが、糖質過剰症候群はゆっくりと悪化していくので、なかなか死に近づいている気がしないかもしれません。しかし、新型コロナでは死を免れた後は自然と改善します。しかし、糖質過剰症候群はそのままにしていれば悪化の一途で、知らないうちに死に近づいています。
しかも、新型コロナウイルスの死亡リスクには高血圧、糖尿病、肥満、心血管疾患など糖質過剰症候群のオンパレードです。つまり、新型コロナウイルスによる死亡も糖質過剰摂取をやめていればもう少し死亡者数を減少できていたと推測できます。
実際に、「新型コロナウイルス感染では高血糖があると数倍死亡率が高い その1」「その2」などで書いたように、食後血糖値を十分に抑制できていれば死亡のリスクは数分の1になっていたと思われます。食後血糖値を上げるのは糖質です。
フランスの報告でも新型コロナで人工呼吸を必要とする可能性について、過体重や肥満では大きなリスクがあります。(図はこの論文より)
以前の記事「新型コロナウイルスと肥満」でも取り上げたこの論文によると、BMI25未満の人と比較してBMI35以上だと7倍以上も人工呼吸が必要になる可能性があります。
日本でも新型コロナウイルスによる初めての20代の死者が出ました。(この記事参照)28歳の力士です。この力士のBMIは39.9です。報道によると基礎疾患として糖尿病があったようです。もちろん、入院までの期間が少し長かったなど、別の要因もあるとは思います。しかし、以前の記事「相撲は世界一不健康なスポーツかもしれない その1」「その2」「その3」で書いたように、相撲は世界一不健康なスポーツだと思います。
日本相撲協会も今回の新型コロナウイルスの感染拡大を期に、糖尿病を発症したら引退勧告をするとか、体脂肪率に制限を設けるとか、BMI30以上になったら出場停止にするなど、大きな改革が必要だと思います。肥満でなければできないスポーツなんて国技として恥ずかしいです。肥満は病気です。
今後新型コロナのワクチンができたとしても、肥満があると免疫応答も十分しない可能性もあります。(図は原文より)
上の図はインフルエンザワクチン接種による免疫応答を示しています。過体重や肥満があると免疫応答が大きく低下しています。このようなことは成人だけでなく子供でも起きています。破傷風のワクチン接種によってできる抗破傷風IgG抗体は、通常の体重の子供と比較して、過体重の子供の方が有意に低かったという研究があります。(この論文参照)
糖質制限で救われる命は数えきれないと思います。
「Overweight and obese adult humans have a defective cellular immune response to pandemic H1N1 influenza A virus」
「過体重および肥満の成人は、パンデミックH1N1インフルエンザAウイルスに対する細胞性免疫応答に欠陥がある」(原文はここ)
>糖尿病のインスリン注射は欠かすことができなかった。2016年には本場所の取組のため、土俵下の控えにいるときに、突如として全身が赤らんで手が震え、異例の不戦敗を経験。糖尿病による低血糖症だといわれている。
これは力士死亡に関するヤフーニュースからの抜粋ですが、もちろん高血糖自体も好ましくはないと思いますが、新井医師が常々警鐘を鳴らしている「外部からのインスリン」が主犯とみることはできないでしょうか。
とすれば、インスリン注射を避ける治療法として、ここは糖質制限の有効性・正当性がクローズアップされてしかるべきでしょうが、「相撲取りは白米腹いっぱい食べ、日本酒あびるほど飲んで、肥満するのも仕事のうち」という角界の伝統があります。
その伝統を打ち破って、世間並みの「相撲取りにも糖質制限を」という方向に、相撲社会の意識を変えていくのは非常に困難だと思います。なぜかといえば、糖質制限をすると、相撲取りは腹が引っ込んで、スリムで筋肉質な引き締まった体形になってしまう、「肥満第一主義」の相撲協会としてはそれでは困るからなのです。
相撲協会は財政のひっ迫性に加えて、世間からの肥満解消圧力にどう対処していくでしょうか。今後の展開に注目です。
やまもとさん、コメントありがとうございます。
日本相撲協会は公益財団法人として国に認定されており、税制上の大きな優遇措置を受けている以上、病気を作り出すことをやめる必要があります。
そんな不健康な団体に対して税金を優遇などおかしな話です。
「不健康団体には税金の優遇はできんぞ、オイ、しっかりせぇや」と檄をとばされても、上目づかいで平身低頭しつつ「一丸となって善処します」で、結局はウヤムヤでしょう。
ここで思うんですが、不健康解消対策でもっとも効果的なのは、肥満体の力士よりも腹の出ていない筋肉マンのほうが相撲に強いことを証明することです。筋肉マンのほうが強ければ、競って糖質制限で腹を引っ込めて、結果、健康になるでしょううから。
ただ、これがなかなかむずかしい。腹筋の割れた筋肉隆々のブルガリアの琴欧州は大いに期待されたのですが、数年のうちに腹がダブついて「相撲取り化」、横綱になれずに終わってしまいました。日本の相撲は肥満体に有利なんですね。これは相撲経験者である僕の実感です。