新型コロナウイルスと普通の風邪のコロナウイルスの免疫の交差反応性

先日の「新型コロナウイルスと抗体検査 その3」で書いたように、新型コロナウイルスにはもしかしたら普通の風邪のコロナウイルスと免疫の交差反応性があるかもしれません。

先日「Cell」に報告された研究では、2015~2018年にサンプルが採取されたものでさえ、新型コロナウイルスに対する反応するT細胞が高率に検出されたそうです。(免疫の細かいことは難しく、専門ではありませんのでよくわかりません。)(図は原文より)

上の図の上側は新型コロナウイルスに対する免疫反応を示しています。この研究では、新型コロナウイルスの症例の100%が抗体を作りました。100%がCD4+T細胞を作り、70%はCD8+T細胞を作っていました。

そして、ほとんどのワクチンの主なターゲットであるウイルスのスパイクに対するCD4+T細胞の反応は非常に強く、新型コロナウイルスに対する抗体のIgGおよびIgA力価の大きさと相関していました。(下の図参照)

そして重要なのは、最初の図の下側の図に示すように、新型コロナウイルスに暴露されていない人(2015~2018年のサンプル)の約40~60%で新型コロナウイルス反応性CD4+T細胞が検出されたのです。

つまり、普通の風邪コロナウイルスと新型コロナウイルスの間のT細胞の交差反応性免疫が示唆されたことになります。

もしかしたら、アジアでは以前から普通の風邪のコロナウイルスが欧米と比べて一般的に流行し、その免疫が今回の新型コロナに有効だった可能性があります。そして、もしかしたら同じ国の中でも地域により普通の風邪のコロナウイルスがこれまであまり流行しなかった地域では、今回の新型コロナの打撃を強く受けているのかもしれません。ただ、今回の研究はアメリカ人のものです。それでいて50%前後の人が新型コロナに反応する普通のコロナの免疫を持っているのです。アジアではものすごい高い割合でその免疫を持っているのかどうかは調べてみないとわかりません。非常に興味がありますが。また、アメリカ人はせっかく風邪のコロナの免疫を持っていても、肥満や高血糖などでその免疫を十分に活躍させられないのかもしれません。

そうすると、逆に考えれば、今回のパンデミックで必要以上に感染防御をしてこれからも生活していくと、今後のウイルスのアタックに脆弱になる可能性もあります。われわれ人間は常にウイルスと共存しているわけで、必要以上の排除は交差反応性の免疫を抑制してしまう可能性があると思われます。

下手に感染を恐れて消毒ばかりして無毒や弱毒のものまで殺していると、逆に新しい感染に弱くなると思います。常にウイルスや細菌にまみれて生活するのが人間として当たり前なのでしょう。人類の進化の中で石鹸や消毒液は存在しませんでした。日々細菌やウイルスにまみれ、免疫を鍛える必要があると思います。人間にとって風邪のウイルスは必要なものなのです。

新型コロナウイルスと途上国」で書いたように、高度の医療レベルが必ずしも人間の命を守れるわけではないかもしれません。最終的には個人個人の体です。それぞれの免疫能がしっかり維持されていることこそ重要なのだと思います。

「新しい生活様式」で、様々な場所が消毒され、どこに行っても手指消毒ばかりしていては、非特異的な免疫ができにくく、次の感染爆発で生き残れないかもしれません。地球で生きていくには、新しい生活様式よりも地球のルールの方が優先されるのではないでしょうか?

 

「Targets of T cell responses to SARS-CoV-2 coronavirus in humans with COVID-19 disease and unexposed individuals」

「COVID-19疾患および非暴露の人におけるSARS-CoV-2コロナウイルスに対するT細胞反応の標的」(原文はここ

2 thoughts on “新型コロナウイルスと普通の風邪のコロナウイルスの免疫の交差反応性

  1. SARS-CoVとSARS-CoV-2はたんぱく配列上の共通配列を持ちます。富士レビオが開発した抗原検出系はSARS-CoVヌクレオキャプシドに対しするMoAbを使用しており、過去にSARS騒ぎの時に開発されたMoAbを検出系に使用しているため、添付文書にはSARS-CoVに対する交差反応性がある旨記載があります。現在流行しているのはSARS-CoV-2ですのでSARS-CoVがオミットされる形で使われていることになります。通常特異的MoAbの取得は3か月くらいかかりますが、たまたま富士レビオがスクリーニングしたSARS-CoVに対する抗体(MoAb)のライブラリーになかにSARS-CoV-2を認識するMoAbがあったため素早く申請承認上市ができたことになります。

    1. Nori tadaさん、コメントありがとうございます。

      抗原検査の話ですね?
      日本ではすでにPCR検査の陽性率が1%を切っているところが多いと思います。東京でも2%程度です。
      抗原検査の感度は贔屓目に見ても50%程度でしょう。
      一時期のニューヨークのように何万件もPCR検査して、陽性率が40%を超えるような状況では抗原検査も意味があると思いますが、
      今の日本では必要ないでしょう。有病率1%では99.5%程度の人で陰性が出るので、1,000人抗原検査したとしたら、そのうち995人の人たちにはPCR検査をしなければなりません。
      ほとんど意味のない検査になってしまいます。
      そんな急いで承認する必要があったのかどうか?変に勘繰りたくなってしまいます。

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