ビタミンのサプリメントは本当に有益か?抗酸化物質の暗黒面その2(人間の場合)

前回の記事に続いて、人間での抗酸化物質の暗黒面を見ていきましょう。

疫学研究によると、ビタミンや他の抗酸化物質が豊富な果物や野菜をたくさん食べる人は、長く生きる傾向があり、そうでない人に比べてがんを発症しにくい傾向があります。だから、抗酸化物質のサプリメントは、より健康につながるはず、と考えるのは無理もない話です。しかし、実際の研究の結果はその考え方を否定しています。ある種のサプリメントを服用する人々の中には、実際には肺がんや心臓病などの病気が発生するリスクが高いという証拠があります。

有名な研究なので知っている方も多いかと思いますが、抗酸化物質が問題を引き起こす可能性があるという1996年の研究では、18,000人の男性と女性が、抗酸化物質を投与されなかった人々と比較して、ベータカロチンとレチノールを投与されたグループでは、抗酸化物質を投与されていないグループと比べて、肺がんが28%上昇し、死亡が17%上昇しました。 18ヶ月後リスクの上昇が明らかになりましたが、特にヘビースモーカーではリスクが上昇し、発癌物質であるアスベストに暴露された喫煙者の中で最も強かったのです。(図で赤が抗酸化物質投与群です。左の図がヘビースモーカー、右の図がアスベストに暴露された喫煙者です。)

 

 

(クリックで拡大、図はThe Myth of Antioxidants 、Scientific American, February 2013より抜粋)
フリーラジカルが必ずしも悪いわけではないし、抗抗酸化物質がいつも良いとは限りません。2007年、抗酸化物質のサプリメントが死亡の危険性を減少させない、とした68の臨床試験の系統的レビューを発表しました。それによると、ある種の抗酸化物質は死亡リスクの上昇に結びついており、場合によっては16%まで上昇することもあります。(図で真ん中より右が死亡率が上昇したことを表し、左が死亡率が低下したことを表しています。明らかに真ん中より右の方が多いです。つまり、抗酸化サプリメントにより死亡率が上昇するという研究の方が多いのです。)

 

 

(クリックで拡大、図はThe Myth of Antioxidants 、Scientific American, February 2013より抜粋)

米国心臓協会(American Heart Association)や米国糖尿病協会(American Diabetes Association)をはじめとするいくつかの米国の組織は、診断されたビタミン欠乏症を治療する場合を除いて、抗酸化サプリメントを服用しないことを勧めています。「これらのサプリメントは、特に高用量では、必ずしも有益な効果を発揮するとは限らないという証拠が増えている」と述べています。

このようなことを言うとサプリ推進派は現代の医学の問題点を指摘します。学会などは製薬会社から巨額の研究費をもらっており、サプリメントの有効性を無視したり、サプリメントに否定的な研究をたくさん行って、事実を曲げて、病気には薬を使うように誘導している、信用できないなどと言うかもしれません。しかし、これはサプリメントにも同じ図式が当てはまります。ビタミンなどのサプリメントの業界は、サプリメントの効果を示す研究を行うでしょう。医薬品推進派は製薬会社からお金をもらい、サプリメント推進派はサプリメント業界やサプリメント販売企業からお金をもらう。同じことです。そして、ビタミンなどのサプリメントの方が副作用もなく、体に必要なものなので、より健康的なイメージを持ちます。しかし、実際にははっきりした効果はわからないことが多く、何となく続ける傾向があります。

非常に不健康で、栄養に乏しい食事をして、不健康な生活習慣を送っている人にとって、また、すでに健康に問題を抱えている人にとってはサプリメントの利益を受けられる可能性は十分あります。しかし、普段健康に気を付けて、正しい知識のもとで栄養を考えた食事をして、現在のところ体調に問題がない場合、サプリメントは何も利益がないばかりか、有害になってしまう場合もあるということを知る必要があります。様々な十分な野菜と、適度な果物、そして糖質制限(十分なタンパク質と十分な良質の油)、これで十分です。

老化ははるかに複雑であることを示す証拠がどんどん出てきています。しかし、抗酸化物質の神話をまだ信じている人はたくさんいます。フリーラジカルは悪で、抗酸化物質は善、というハリウッド映画のようなわかりやすい善悪理論です。フリーラジカルが老化を引き起こす悪党なら、抗酸化物質はこれを阻害し、老化のペースを低下させてくれたり、病気の発症を遅らせたりしてくれたり、さらに私たちの寿命まで伸ばしてくれるヒーローである、という美しい図式は非常に受け入れやすいものです。しかも、ノーベル賞をもらっているライナス・ポーリング氏という著明な科学者がこの神話の拡散に多大な貢献をしてしまったので、信じてやまないのでしょう。しかも、ポーリング氏は92歳まで生きていたから、なおさら説得力があるように見えます。

ミトコンドリアの研究の第一人者のニック・レーンによれば、このフリーラジカルが悪で、抗酸化物質が善だという見方は、この分野の研究者のほとんどは、とうの昔に間違いであることに気付いている、と述べています。この見方は多くの健康や美容などの雑誌、マスコミ、多くの健康食品を扱う業界にとっては都合が良いのですが、実際は間違いだと結論が出ているようです。1990年代までに抗酸化物質が老化や病気の万能薬ではないことは明らかになっています。しかし、代替医療はまだこの考えを広めています。

多くの長命な動物は、組織に含まれる抗酸化酵素が少なく、短命な動物は組織に含まれる抗酸化酵素が多い、という事実があります。不思議なことに、酸化促進剤は生物の寿命を延ばす可能性が高いのです。

フリーラジカルを抗酸化物質で抑え込んでしまうのは、ミトコンドリアの面で考えると非常に危険だという考えがあります。ミトコンドリアはご存じのとおり、生物のエネルギー工場であり、エネルギーであるATPを産生しています。ミトコンドリアが増え、ATPをたくさん作っている方が健康だと考えられます。フリーラジカルは呼吸の「副産物」ではなく、シグナルとしての役割がちゃんとあります。このフリーラジカルのシグナルは、恐らく呼吸鎖複合体の数を増加させて呼吸の能力を高め、個々のミトコンドリアの中で呼吸を最適化していると考えられています。このシグナルがミトコンドリアの数を増やし、より多くのATPを産生することになるのです。しかし、抗酸化物質はこのフリーラジカルを阻害してしまいます。そうするとミトコンドリアの生合成は低下し、ATPの産生も減少してしまうのです。この考えを用いれば、抗酸化物質がどうして寿命を延長させないのかが説明できるでしょう。また、ビタミンCを大量に摂取したときの体の反応は、もしかしたら大量の抗酸化物質を取り入れないようにするための防御反応なのかもしれません。ビタミンCを大量に飲んだ場合、ほとんど吸収されなかったり、下痢をしたりします。吸収されたとしても過剰であればすぐに尿によって排出してしまうのです。抗酸化物質の濃度はこうして細胞の内外で調節されていると考える方が自然です。本当に必要なら、簡単に体から捨てるはずがありません。

もう一度重要なので言いますが、大量の抗酸化物質はATPの産生を低下させます!

いつも言っていますが、まずは食事からです。しかし、先日のテレビで芸能人が「スーパーフード」を大量に食べていることが放送されていました。サプリメントでも問題かもしれませんが、あれだけのスーパーフードと呼ばれるものを大量に摂ることも、恐らくそこに含まれる抗酸化物質によるアンチエイジングのためだと思われますので、有益かどうかわかりませんし、有害になる可能性もあるでしょう。ほどほどにしたほうが良いと思います。抗酸化物質でアンチエイジングができるなんて思わない方が良いと思います。そんなに老化というものは単純ではありません。彼女たちの中では「肉」はあまり良くない食べもののようです。大丈夫なのでしょうか?正直言って依存症のようです。アメリカのセレブの安易な模倣でしょうか?31歳の彼女は31歳にしか見えませんが…女性の気持ちは男性にはよくわかりません。

 

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