肝機能検査のALT(GPT)がちょっと上がっていてもご注意を

私は肝機能検査でALT(GPT)が20以上の場合、脂肪肝の存在、インスリン抵抗性の増加を疑うようにしています。

今回の研究は平均年齢約14歳と小児の研究ではありますが、肝機能検査のALTと脂肪肝、インスリン抵抗性の関係について分析しています。対象は健康で、年齢が10〜21歳の過体重または肥満の392人です。この研究ではALTの基準値は0〜35U/Lで、日本よりも上限が低くなっています。そして、正常範囲を正常低値ALT(0~17)と正常高値ALT(18~35)、35を超えるALTを異常値としています。(図は原文より、表は原文より改変)

上の図は、ABCが3時間の経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)での推移で、Aが血糖値、Bがインスリン、CはCペプチドです。Dはインスリン感受性、Eは遊離脂肪酸、Fは中性脂肪です。

空腹時血糖は3つのALT群で同じでした。しかし、ALTが増加すると、OGTT後の血糖値変動は有意に高いレベルに上昇しました。血糖値の曲線下面積は、正常低値ALT群と比較して、正常高値ALT群でも高くなっていました。インスリンやCペプチドもALT増加に伴い増加し、インスリン感受性はALT増加に伴い低下していました。空腹時インスリンもALTの増加に伴い増加していました。遊離脂肪酸や中性脂肪も同様に増加していました。

下の表はMRIによって測定された肝臓の脂肪含有率です。肝臓の脂肪が多いとインスリン抵抗性が増加します。

合計肝脂肪含有率<5.5%肝脂肪含有率>5.5%
ALT平均17.814.433.4
AST平均21.219.030.1
γGT平均19.217.725.3
ALT>35(%)20648
ALT>18(% )392078

肝脂肪含有率5.5%で分けると、5.5%を超える人の方が肝機能の数値はどれも高くなりました。そして、5.5%を超える人の78%はALTが18以上でした。

 

以前の記事「みなさんの血液検査データ2020 集計 その8 肝機能」ではALTとHbA1cと相関がないことを書きましたが、空腹時血糖との関連を調べてみました。縦軸が空腹時血糖、横軸がALTです。

空腹時血糖値とALTとの関連は、相関係数は0.38と弱い相関が認められました。

もちろんアルコール性脂肪肝、肝疾患では肝機能の異常はあるでしょう。アルコールを飲まない人で、糖質制限をしっかりしていてもALTが20を超えている人は、何かが違う可能性があります。食事以外の薬やサプリの問題か、その人にとってタンパク質が多すぎなのか?

多くの研究でALTの上限は現在の基準値よりももっと低い方が良いと述べられています。それについては次回以降で。

私はALT20以下をお勧めします。

 

「Alanine aminotransferase levels and fatty liver in childhood obesity: associations with insulin resistance, adiponectin, and visceral fat」

「小児肥満におけるアラニンアミノトランスフェラーゼレベルと脂肪肝:インスリン抵抗性、アディポネクチン、および内臓脂肪との関連性」(原文はここ

8 thoughts on “肝機能検査のALT(GPT)がちょっと上がっていてもご注意を

  1. 私のALTの検査結果です。
    糖質制限後、現在に至るまでALTは順調に下がってきています。
    特に最後の検査では15まで下がり、これに比例するように耐糖能も良くなっているように思えます。
    リブレで計測していますが、最近は、就寝中の血糖値の変動がほとんどなくなりました。
    ただ、家庭用の体組織系では内臓脂肪レベルが糖質制限前と比べてそれほど下がっていないのが不思議です。
    因みにBMIは22弱、体脂肪率16~18%です。アルコールは毎晩、缶ビール1~2本程度です。
    参考まで。

    2011年 6月 37
    2012年 6月 30
    2013年 6月 32
    2014年 5月 41
        7月 35
    2015年 5月 38
        6月 37
        8月 32
    2016年 5月 33
        6月 40
        6月 40
    2017年 6月 33
    2017年12月 44(糖質制限開始)
    2018年 3月 27
        6月 26
        9月 21
    2019年 2月 34
        4月 23
        6月 20
        6月 19
        7月 19
        9月 15
       11月 20
    2020年 1月 24
        2月 19
        5月 16
        7月 15

    1. 西村 典彦さん、貴重なデータありがとうございます。

      見事な減少っぷりですね。ALTである程度肝臓のインスリン抵抗性が推測できそうですね。

  2. 私は糖質制限中にも関わらずALT40前後を推移し、制限前により上昇しました。
    BMIは18〜19の痩せ型、毎朝ランニングをしていますが変わらず。一日2食で毎晩アルコール糖質オフビール350ml2缶程度です。
    hba1cが5.5前後で一向に下がらないことから痩せの脂肪肝の可能性も考えられます。

    1. 太陽さん、コメントありがとうございます。

      ALTが40前後だというのは、恐らく毎日のビールのせいだと思います。低下させたいのであれば、1缶に減らしてみると良いかもしれません。

  3. まさに、アルコールを飲まない人で、糖質制限をしっかりしていてもALTが20を超えている人の為、気になりました。

    一日一食夕食のみ生活ですが、確かに色々糖質以外のものを食べすぎてる感はあります。

    1. 鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      何が原因でしょうか?もちろん個人差もあるので、20以上がすべて異常値とは言えませんが。

  4. 江部先生によると、
    「肝機能障害は、摂取エネルギー不足のため
    肝細胞が一部分解されて、エネルギーとして使用されている可能性があります」

    アルコールは、γGTの上昇がある期間続いてからGOT/GPT が上がるのでは、と考えていました。

    一方で、オーソではGOT >GPT は、ビタミンB不足を疑っています。

    糖質制限がしっかりできているとなると、脂肪肝説は考えにくいのではないでしょうか。人生も後半戦となると、「過度の」運動は身体に負担をかける可能性があるという証?かもしれませんね。

    そこを摂取カロリーを増やす事で対処するか、活動量の方を減らして(ケトジェニックな)現在の食生活を維持するか、ではないかと思います。

    1. ぽん太さん、コメントありがとうございます。

      摂取エネルギー不足で肝臓が分解される、という情報は私はよく知りませんし、肝臓が壊れるほどのエネルギー不足は摂食障害など、相当なものではないかと思います。
      肝臓は非常に重要な臓器であり、質量で考えれば肝臓の15倍以上も筋肉が存在するので、筋肉の方がエネルギーとして使用される方が優先されるように思います。
      長期的に見ればエネルギー不足は代謝を落とすことで帳尻を合わせると思われるので、肝機能障害が起きるとも思えません。

      糖質制限をすればアルコール性脂肪肝が起きないという根拠はないと思います。
      アルコールは毒物であり、肝臓はアルコールの処理を最優先にしているものだと思います。
      アルコール摂取も果糖摂取も肝臓にとっては同じことです。

      明らかなアルコール性肝炎ではGOT>GPTとなるでしょう。
      GOTとGPTがほぼ同じ値のときに、それが本当にビタミンB6が十分にある証拠なのかどうかはわかりません。

      情報が不足しているのでコメントが難しいですね。

      必要なエネルギー量は個人差も大きいのではないかと思いますし、糖質制限をすれば、思ったほど摂取しなくても良いのではないかと
      思っていますが、まだ証拠不足です。

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