以前の記事で洞爺湖マラソンのペースの分析をしましたが、今年の洞爺湖マラソンの悔しさと、フリースタイルリブレなどのデータがあり、非常に興味がわき、いろいろなことを分析したくなりました。と言っても、この分野の専門家でもないし、データも限られているので、想像や推測がかなり含まれますが、勝手に分析したいと思います。
2016年と2017年のマラソンでの消費エネルギーをまず計算してみます。
消費エネルギー(カロリー)=運動強度(Mets)×実施時間×体重×1.05 であるので、
2016年 11.3×3.58(3時間35分)×56×1.05=2,379(kcal) (42.195km)
2017年 11.7×2.95(2時間57分)×54×1.05=1,957(kcal) (ただし36kmまで)
レース時の心拍数をグラフ化してみました。
(クリックで拡大)
最大心拍数(=189)に対し80~85%のゾーンを青、85%~90%のゾーンを黄色、90%以上のゾーンを赤で表しています。ダニエル氏の理論では80~85%、つまり青のゾーンがマラソンペースとしています。
2016年も2017年も青いゾーンではほとんど走っていませんが、2016年はほぼ7割がた黄色いゾーンであり、レッドゾーンにはほとんど入っていないことがわかります。それでも最後の方はペースが落ちてきています。
2017年を見るとかなりの部分でレッドゾーンです。これが今回の問題です。レッドゾーンがなぜ悪いかというと、脂肪を燃焼しにくくなり、糖質を消費してしまいます。どれほど脂質を消費して、どれほど糖質を必要としていたのか、ちょっと推測してみます。
運動強度と心拍数の関係、そして糖質制限のランナーでの脂肪燃焼量を考えてみると、
運動強度(%VO2max)=(運動時心拍数-安静時心拍数)÷(最大心拍数-安静時心拍数)×100 であり、最大心拍数は189、安静時心拍数を60で考えると
90%VO2max=運動時心拍数176 最大心拍数の93% 脂肪燃焼量0.3~0.4g/min
85%VO2max=運動時心拍数169 最大心拍数の89% 脂肪燃焼量 0.8g/min
80%VO2max=運動時心拍数163 最大心拍数の86% 脂肪燃焼量1g/min
70%VO2max=運動時心拍数150 最大心拍数の80% 脂肪燃焼量1.2g/min
でいろいろと計算すると、
2016年の脂肪燃焼量は約210gでエネルギー量としては約1897kcal、消費エネルギーは2379kcalであったので、その差は482kcalです。これを糖で賄わなければならず、約120gの糖が必要だということがわかります。
一方、2017年は脂肪燃焼量は約107gでエネルギー量としては約966kcal、消費エネルギーは1957kcalであったので、その差は991kcalです。これを糖で賄わなければならず、約247gの糖が必要ということになります。つまり、2016年の半分近くの脂肪燃焼量と2倍以上の糖質が必要となったのです。
実際にはこんなにも単純な計算ではないでしょう。しかし、2016年と2017年では、ペースの範囲がイエローゾーンなのかレッドゾーンなのかということでは、かなりの違いがあり、恐らく断然2017年の方が多くの糖を必要としたはずです。
糖は、筋肉と肝臓のグリコーゲンと糖新生から賄います。もちろん途中の補給でも構いませんが、実際の糖と脂肪の消費の関係は非常に複雑でしょうし、レース前のインスリンの分泌なども関係します。また、カルニチンなども関係しますので、簡単ではありません。グリコーゲンも肝臓のグリコーゲンは血糖維持に働きますし、筋肉のグリコーゲンは筋肉のエネルギーです。
今回、低血糖をもたらしたのは血糖値が当然下がったのですが、それを賄うのは肝臓のグリコーゲンか糖新生、そして途中の補給になります。しかし、途中の補給も摂取した糖質が血糖値維持になるのか、筋肉に使われてしまうのかわかりませんし、ちゃんと吸収されているかもわかりません。
ひとつフリースタイルリブレを使ってわかったのは、レース前にすでに血糖値が上がっていることです。つまり、ベスパプロを飲んで、血糖値が上がってしまっていたのです。そうするとインスリンが分泌され、それが何かマイナスになった可能性はあります。なので、次回からもしベスパプロを使ったとしても、走り始めて30分後ぐらいから使おうと思います。
適当な計算でしたが、2017年の247gという糖質なら、グリコーゲンと糖新生で十分賄えるような気はしますが、実際はそうではないのでしょう。糖新生は1時間に6g程度と言われていますが、恐らく運動中はもっと増加すると考えられます。たとえ10gとなっても3時間では30gです。グリコーゲンの寄与がどの位かは全くわかりません。しかし、ペースが上がればグリコーゲンの消費は上がるはずなので、足りそうな気もしないではないですが…?筋肉のグリコーゲンについて書いてあるときにほとんどは総量で書いています。例えば筋肉のグリコーゲン量が300gと言っても、それは足の筋肉もあれば、腕の筋肉もありますし、背中の筋肉もあるわけで、一番重要な下肢の筋肉のグリコーゲン量としてはやはり、200gもないのかもしれません。そうするとやっぱり足りないか…?
体感的にはレースの前半は苦しい、つらいペーストは思ってませんでしたが、実際には心拍数が高かったのです。これは、レースの高揚感とランナーズハイが影響したのかもしれません。
2016年で本当はギリギリなのでしょう。実際に最後の方はへばってペースを落としていますので、心拍数がこれより上がらないように気にしながら、終盤では多少の糖質を摂りながら走れば、もう少し記録を伸ばせる可能性はあります。糖質を摂ってでも、ちょっとリスクのあるペースをとるのも選択かもしれません。しかし、それであっても最大心拍数の85%以上でほとんど走っているので、50代の心臓には危険なのかもしれません。
やはりこれからは、80~85%の心拍数で走るようにしたほうが良いのかもしれません。
(追記)それでは80~85%までに納まるようにフルマラソンを走った場合の計算をしてみましょう。脂肪燃焼量は約254gでエネルギー量としては約2289kcal、消費エネルギーは2347kcalで、その差はたった58kcalです。これを糖で賄うと、約15gの糖だけで済むことになります。つまり、途中の補給は全く必要ありません。しかし、予想タイムは3時間40分前後になってしまいます。うーん、もどかしい。練習あるのみです。
同じ条件で、糖質制限をしていない場合について考えてみましょう。消費エネルギーを2347kcalとして、通常であれば%VO2maxの80%で脂肪燃焼に対する依存度は10%程度、85%になるとほぼ0%と考えますが、走行時間と共に段々と脂肪燃焼が増加してきます。平均して70%を糖質によるエネルギーで賄うとすると410g、平均して80%を糖質によるエネルギーで賄うとすると469g、平均して70%を糖質によるエネルギーで賄うとすると528gが必要となります。つまり、体内の糖質は十分枯渇してしまう量です。実際に体内の糖質を全て枯渇させるようにはできないので、どんどん糖質を大量に補う必要がでてきます。勝手な想像では体内の糖質は100g~200g程度しか使えないと思います。
そうすると、200g以上は途中で補給となるので、大量のジェルやスポーツドリンク、給食が必要になるのでしょう。
まあ、計算通りにはいかないでしょうが。
初めまして。糖質制限丸三年経過した50歳男性です。
楽しくて為になるのでたくさん読んでしまいました。
私自身はマラソンどころかジョギングすらしませんが、
ちょっとした肉体労働が身体にこたえ筋肉痛に悩まされています。
実際 CK (CPK) の値も高く、医者には心筋梗塞を疑われるほどです。
試行錯誤していますが解決法は見つかっておらず、
「筋肉酷使後のブドウ糖摂取が良いのでは?」
とか、色々試してはおりますが・・・何とも。
何か良い方法があればよいのですが・・・って感じです。
駄文失礼しました。
すいません、大事なこと書き忘れたので。
今回のは大体一週間前から痛み始めましたが、
今回に特徴的なのは「血圧がやや低めに出る」なんです。
昨晩が一番しんどくて血圧計ったところ、最近の中では一番低かったような。
そんで脈拍数も(安静にしてるのに)75 とかあって、
まあ血圧低いと言っても下60、上100程度なんですが、
自分にとっては最近見たこと無い数値でして、
何となくここのマラソンのデータと似てるところあるのかな?と思った次第です。
GENさん、コメントありがとうございます。
糖質制限そのものと筋肉痛の関係は通常ないと思います。タンパク質の摂取は十分ですか?
糖質制限ではなくカロリー制限になっていませんか?
しかし、血圧が50歳としては低すぎる気がします。CPKもちょっとした肉体労働(どの程度かはわかりませんが)で異常に高くなるというのは
別の病気が隠れていませんか?甲状腺機能は低下はないのでしょうか?
年齢としては考えにくいのかもしれませんが筋肉系の疾患は否定されていますか?
これだけの内容では何とも言えませんが、糖質制限以外の原因の方が考えられると思います。
すみません、愚痴みたいなのにつきあっていただいて。
その他は全然問題無く、ただただ筋肉痛になるというのが悩みでして。
今回は初めて腰のほうに筋肉痛が出て丸10日、血圧が通常時より下がっていることに気付いたのです(通常は80未満120未満を心がけており、大体そんな感じです)。今回あまりにもきつくて色々情報あさったり調べたりしたわけです。
血圧と血糖値は無関係かもしれませんが、ヘトヘトになると下がるのかななんて思ったりしまして。
「甲状腺機能障害」で調べましたが、私の場合はただただ筋肉痛です。
一言で言えばヘタレなんでしょうが、何とかしたいなってのはここ10年以上感じ続けてきたことでして、まあだからこそ色々と身体に気を使うようになったわけですが。
175cm、63kg、よくやる運動は一時間程度のウォーキングと自己流ストレッチ(今回ストレッチで症状悪化させたかも)、血液検査もCK以外は極めて正常、食事は現在は鶏肉400g、プロテイン50g程度?、サバ水煮缶、煮干数10g、洗い胡麻200g、そんな感じです。糖質は胡麻とプロテインに不本意ながら少々入っている程度です。
昔は一日卵15個のみを数ヶ月とか、色々試して今に至る感じです。
先生の「ビタミンC、Eの作用」に懐疑的な部分、「鉄サプリ」に対する警鐘などは大変参考になりました。ありがとうございます。
自分では今のところ試す気が無いので、フリースタイルリブレの記事はとても楽しいです。
GENさん
>食事は現在は鶏肉400g、プロテイン50g程度?、サバ水煮缶、煮干数10g、洗い胡麻200g、そんな感じです。
洗いゴマ200g?ですか?すごい量ですね。ここに書かれた食材だけではなく、当然野菜なども食べているとは思います。
ただ、鶏肉がメインだと考えると、カルニチンの摂取量が極端に少なくなります。年齢によっても少なくなってきますし。
脂肪を燃焼してエネルギーにするときにカルニチンは非常に重要です。糖質制限をかなり頑張っていらっしゃるようなので、
カルニチンの消費量も多いと思います。そこに運動を加えるとさらに消費量が増します。
すると、この食材では十分なカルニチンが摂取できずに筋肉痛を起こしても不思議ではないかもしれません。
>昔は一日卵15個のみを数ヶ月とか、色々試して今に至る感じです。
食材の多様性は非常に重要です。食材の多様性が腸内細菌の多様性にもつながります。もしも、現在の食材を毎日のように
食べているのならば、多様性が少なすぎると思います。
なお、ストレッチぐらいで何日も続く筋肉痛が起こるのは、考えにくいです。血圧低下も考えにくいです。
今晩は。カルニチンですか、考えてみます。
食事(というか飲料含む経口摂取物)については書くと(少々)長くなるので控えますが、洗いゴマはお菓子代わりです。私はとても大食漢ですので何とか糖質が少なくボリボリ食べられてかつリーズナブルなもの、でゴマ。リノール酸は良くないでしょうが炒ってないだけましかなと。他に代替品が無いのです。ゴマを食べないと、今のところ肉やチーズの量が増えるだけで、とても太ってしまう、というのも一つの理由です。
>糖質制限をかなり頑張って
それは無いです(ゴマどか食いは糖を摂らない反動かもしれませんが)。
私の場合、糖を摂るとほんとしんどくなるんです。ケトン体代謝が止まるからかなと勝手に考えているのですが。
身体のためですので糖を摂らないで良くなるのならそうしますし、摂った方が良いのなら摂る、そんなところです。要は欲求とか言ってる余裕が今の私には無いのです。
ただ「筋肉酷使後の糖摂取は筋肉破壊を少なくする」との考えも捨てきれず、もう一度試してみようかとは思っております。
>多様性が少なすぎる
これは自覚しておりますが。
今のところはサプリ摂取になっております。きっかけはビタミンCが効果テキメンだったことから徐々にそうなっていったと。今は野菜は全く摂っておりません。
以前は野菜一日1kg以上摂ってましたけど、今は(野菜摂取という食事に)特には魅力を感じないです。
ところでようやく腰の筋肉痛が回復へ向かい始めました。と同時に血圧も回復しています。
あまりにもしんどかったのと、プラスで若干の風邪まで引いてしまったため、滅多に手を出さない薬(イブプロフェンとエフェドリン配合)を飲んだ影響も考慮せねばなりませんが、でも血圧は大丈夫だと思います。80弱-130弱です。ちょっと高すぎ。