痛みの治療(ペインクリニック)

私は現在、外来で痛みの治療、ペインクリニックを行っています。その他にも糖質制限や漢方も行っていますが、今日は痛みの治療について少し書きたいと思います。

痛みは非常に主観的なものです。数値化する機器がないわけではありませんが、その数値が本当にその人にとっての苦痛を示してるかどうかはわかりません。

とりあえず、その患者さん本人の痛みを数値化してもらうことも多いのですが、全く痛みがないのを0、自分が想像でき得る最大の痛みを10として、今の痛みはいくつですか?と聞いてみたりします。しかし、ここで「10です」という人もいます。10という痛みが想像でき得る最大の痛みであるにも関わらず、椅子に座って苦痛な表情の表さずに、痛みが10というのは本当はおかしな話です。私が10の痛みを与えられたら、顔は強い苦痛表情になり、脂汗が流れ、うずくまったり、七転八倒している想像をします。

しかし、患者さんがウソをついているわけではありません。辛いのは本当でしょう。

自己評価による数値化は本当に難しい指標です。血液検査のように検査機器で数値が出ません。痛みの数値が1違うとどれくらい痛みが違うかなんてこともよくわかりません。このような非常に評価が難しい指標を用いて、様々な痛みに対する薬の臨床試験が行われ、少しだけの改善が得られたことで有意に効果があるとして、世の中で処方されてしまっているものもあります。

ペインクリニックの治療の柱は薬物治療と神経ブロックです。ペインクリニックの治療のガイドラインでもこの2つの治療がメインです。しかし、薬物治療に関しては、別にペインクリニック専用の薬があるわけではありません。そうすると、他の科、主に整形外科ですでに様々な薬が処方されていて、それ以上に処方する薬がガイドライン上ではない場合もあります。

つまり、ペインクリニックのガイドラインは全く役に立ちません。他の多くの疾患でも役に立たないガイドラインはいっぱいあると思いますが、ペインクリニックも同様です。

もう一つの治療の柱の神経ブロックも問題がないわけではありません。確かに非常に有効な場合も多いですが、一時的な効果の場合も少なくありません。この一時的な効果を治療と称して、何年間も同じ神経ブロックを、何十回、時には100回以上行っている医師もいるようです。しかし、私はこれは治療ではないと思っているので、一時的な効果しか得られない場合は違う治療に移行します。そうしていると、ガイドライン上に神経ブロックでは対処できません。

私の外来に来るときに他のペインクリニックで治療を行ってきた人も少なくありません。その場合神経ブロックも色々と受けています。また、最近は血液をサラサラにする薬を飲んでいる人も少なくなく、神経ブロックの適応であってもできないこともあります。

ガイドラインに従っている以上、ペインクリニックでは治療の限界がすぐに来てしまいます。だから、私はガイドラインとは違う治療法を行うことが多くなっています。まあ、ペインクリニックの治療自体ガイドラインを作ることが非常に難しいものだと以前から思ってはいました。

治療に漢方と糖質制限を組み合わせると、さらに治療の引き出しが多くなり、何も治療手段が浮かばないことが非常に少なくなりました。

先日の記事「片頭痛には糖質制限」で書いた片頭痛だけでなく、原因不明の胸の痛みがあった人が、糖質制限ですっかり痛みが消えたこともあります。

言葉は悪いですが、ペインクリニックには「訳の分からない」痛みを訴える人が来ることが少なくありません。診断が付けば良いのですが、診断というのも実は非常に難しいのです。例えば腰痛。MRIで椎間板ヘルニアが認められたとします。ではこの腰痛が椎間板ヘルニアによるものかどうかは画像だけではわかりません。手術が好きな整形外科に行ってしまえば、椎間板ヘルニアで腰痛が出ているから、すぐに手術でヘルニアを摘出しましょう、となってしまうかもしれません。しかし、ヘルニアが神経を圧迫する場合、症状は腰痛よりもどちらかの下肢痛のはずです。もちろん腰痛が起こることもありますが、画像だけで断定ができません。

そこで私は腰痛にはヘルニアがあっても、手術はもちろん勧めませんし、通常の神経ブロックもあまり行いません。別の治療を行います。ヘルニアとは遠い場所に治療を行っているにも関わらず、改善していくことも少なくありません。つまり、ヘルニアが腰痛の原因ではなかったということです。

画像による診断は非常に重要ですが、画像で問題がなかった場合、医師によってはメンタルの問題と結びつけてしまう人もいると思います。もちろん痛みはメンタルとも大きく関連しているのは確かですが、画像に何も見えないことが、その部位に何も起きていないということではありません。画像で何かが見えたとしても必ずしもそれが痛みの原因とも言い切れません。実は私も漢方や糖質制限という武器がない若いころには、わけのわからない痛みを心因性のものではないかと、よく考えてしまっていました。しかし、現在は心因性だけの痛みは非常に少ないと思っています。

はやり糖質過剰摂取が大きく痛みと関係していると思っています。人間の様々なパーツはタンパク質からできています。そのタンパク質はご存じのように糖質過剰摂取で糖化し、AGEsにより、質の悪いタンパク質となってしまいます。また、炎症も起こりやすくなるでしょう。

医療に頼る前に、まずは食事を見直してみるべきでしょう。

糖質過剰症候群

コメント

  1. 鈴木武彦 より:

    先生のご説明は非常に納得できるものですが、治療のガイドラインが必ずしも有効ではないかもしれないというスタンスで患者と向き合い、より良い治療方法を探すという常識的作業をされている医師が、もしかしたら少数派、だとしたら残念なことですね。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木武彦さん、コメントありがとうございます。

      糖質制限も少数派ですし、ガイドライン通りにやらなければならないのであれば、私は医師としては失格でしょう。
      先日夏井先生が書いていたように、治療そのものを行うことが目的ではなく、患者さんの症状を改善させることが私の仕事ですから。

  2. みみ より:

    先生、こんにちは。前回の片頭痛の記事に続き、腰痛に関する事など…
    両方自分に当てはまるので非常に興味深いです。
    糖質制限で片頭痛が改善するかもと期待していましたが、糖質制限3年目、特に変わりなくむしろ糖質制限数年前から頭痛の頻度が増えてしまいました。その度にトリプタンを服用です。
    医師の話では恐らくホルモンバランスの関係かと…。
    なら仕方ないかと我慢する生活です。

    長年の腰痛に関してもドクターショッピングです。
    軽いヘルニアが画像で認められましたが、別の医師の話では、そんなに痛みの原因とも思えない、と。私は心因性のものかと自分で勝手に思っています。
    何度もギックリ腰を繰り返し、慢性的な痛みを抱えて電気治療をしたり、トリガーポイント注射もたまに。心因性と思い込んでいるだけでほかに原因があるのかなとも思いますが、何度診察受けても骨に異常はありませんね、でおしまいです。
    自分でできることといえば糖質制限と、体の動かし方に注意するくらいしかありません。
    早くさまざまな痛みとおさらばしたいですね。

    頭痛がある人にはインスリン抵抗性が高い人が多いという記事でしたがもしかして自分もそうなのかな?なんて思うことも。
    なかなか普段の健康診断で調べてもらうこともなさそうです。検査項目も決まった物ですので。

    以前からベインクリニックにかかってみたいと考えていますが、私の居住地に残念ながらそれがありません。

    ほとんど愚痴になってしまい申し訳ありません。腰痛に関しては整形外科行くしか無いのでしょうね.。

    • Dr.Shimizu より:

      みみさん、コメントありがとうございます。

      糖質制限でも頭痛、腰痛が続いているとのこと、大変ですね。
      お近くなら診察して何らかの提案ができるとは思いますが、相談ができる医師が見つかると良いですね。

  3. みみ より:

    ありがとうございます。
    飛行機で北海道まで伺いたいくらいの気持ちでおりますよ。
    日糖医の提携医も近くにはあまりいらっしゃらないようです。もっと増えてくれると嬉しいですね。