片頭痛の病態はいまだ解明されていません。その原因の仮説は、血管説、神経説、三叉神経血管説があります。どれも脳の中で起きている現象を原因にしたものです。もちろんどれが本当なのか、どれも間違っているのかわかりません。
治療は薬物療法が中心です。通常の痛み止めだけでなく、トリプタンという薬が発作には有効とされています。また、バルプロ酸やプロプラノロールといった世界標準の予防薬もあります。
しかし、食事に関しては治療、予防ともに重要視されていません。片頭痛の誘発因子としてはいくつも認められていて(チョコレート、チーズ、アルコールなど)、それを避けることを必要かもしれません。ただ、それだけしかガイドライン等には載っていないでしょう。
糖質制限をすると、片頭痛がかなり改善します。人によりかなり劇的に改善します。
今回の研究ではケトン食が慢性の片頭痛の症状にどれだけ有効かを示しています。
3か月ケトン食を行って、1日の片頭痛のエピソードの時間の長さ、1カ月間での頻度、痛みのレベル(1 =軽度、2 =中程度、3 =重度)、1か月に薬を服用した回数を調べました。
片頭痛の症状のある日数は30日(中央値)から7.5日に減少し、片頭痛エピソードの長さは、24時間(中央値)から5.5時間に減少し、痛みのレベルは最初は参加者の83%で最大値でしたが、55%で改善しました。また、1か月に服用する薬の回数は30回(中央値)から6回に減少しました。
片頭痛は高血糖や高インスリン血症、または血糖値の大きな変動が脳に何らかの負荷を与えているか、糖質制限によりケトン体が片頭痛の症状を改善しているのかどちらか、または両方でしょう。私は脳のエネルギー不足または/および酸化ストレスレベルへの反応だと思います。糖質制限により酸化ストレスが低下し、ケトン体が脳のエネルギーになるので、症状が改善すると考えています。
てんかんと共通の症状も認められるので、もしかしたら片頭痛は痙攣を起こさないてんかんなのかもしれません。(ここ参照)
拙著「糖質過剰症候群」でも、経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)で片頭痛の人ではインスリン分泌が非常に多いことを書きました。
薬ではなく、食事でこのように改善するのに、治療や予防に積極的に推奨されていないのは実に不思議です。どうしても医療の現場では薬を処方しないと気が済まないようです。
「Effectiveness of ketogenic diet in treatment of patients with refractory chronic migraine」
「難治性の慢性片頭痛患者の治療におけるケトン食の有効性」(原文はここ)
以前の先生の記事:「オメガ3の油はリスパダール(統合失調症の薬、チックにも用いられることがあるが、本当に子供に長期投与していいのか私には疑問)と同程度の効果があるという研究もあります。糖質制限と良質の油で変化が起きる可能性が十分あります。」 によれば、ケトン体は脳の機能の不具合に「効く」可能性大ですね。なにより安上がりで安全ですし(失礼な表現ですが)ダメモトで試す価値は大いにありそうですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
進化の過程では、糖質がほとんどなかったわけですから、普通にケトン体が脳のエネルギーになっていたと思われます。
ケトン体が脳の不具合に効くのではなく、糖質オンリーのエネルギーが人によっては脳に問題を起こすのだと思います。