空腹時血糖値とアテローム性動脈硬化症の発症リスク

以前の記事「比較的若い女性の冠動脈性疾患のリスクはインスリン抵抗性で6倍、糖尿病で10倍」「急性冠症候群とインスリン抵抗性」などで書いたように、心血管疾患は糖質過剰摂取によって起きていると考えています。

今回の研究では、1,197,384人の韓国人成人を平均16年間追跡したものです。すでに糖尿病や心血管疾患のある人は除外されています。ベースラインでの空腹時血糖値によって分類しました。(図は原文より)

上の図は男性の登録時の空腹時血糖値と心血管疾患のリスクです。左からアテローム性動脈硬化による心血管疾患、虚血性心疾患、心筋梗塞、全ての脳卒中、虚血性脳卒中、出血性脳卒中です。空腹時血糖が100以上となってくるとリスクは出血性脳卒中を除いてやはり高くなるようです。

 

上の図は女性のリスクです。男性と同様の傾向です。

上の図は男性のリスク比をグラフに示したものです。凡例は上からテローム性動脈硬化による心血管疾患、虚血性心疾患、心筋梗塞、全ての脳卒中、出血性脳卒中、虚血性脳卒中です。出血性脳卒中以外は100を超えると急激にリスクが増加しています。

上の図は女性のリスクのグラフです。男性と同様の傾向ですが、100を超える空腹時血糖のリスクの増加の大きさが男性よりも大きくなっています。特に心筋梗塞が顕著ですね。

もちろん、低血糖でもリスクの多少の増加は認めますが、恐らくは糖質制限をしてケトン体がしっかりと出ているような低血糖ではないと思われます。

いずれにしても、空腹時血糖の上昇は、糖尿病と診断されていない段階でも十分にリスクになるということです。心血管疾患があって糖尿病の診断を受けていない場合は、ただ糖尿病の診断を受けていない糖尿病です。ただ、糖尿病には診断基準があるので、それには当てはまっていないだけです。だから、糖質過剰症候群という概念を用いています。

以前の記事「注目すべきはLDLコレステロールではなく中性脂肪とHDLコレステロール」に書いたように、LDLコレステロール値がどうかなんて大して重要ではありません。空腹時血糖、インスリン抵抗性、それに伴う中性脂肪やHDLコレステロールの変化に目を向けましょう。

 

 

「Fasting glucose level and the risk of incident atherosclerotic cardiovascular diseases」

「空腹時血糖値とアテローム性動脈硬化症の発症リスク」(原文はここ

2 thoughts on “空腹時血糖値とアテローム性動脈硬化症の発症リスク

  1. 「心臓弁膜症は、早期の発見と治療が重要とされる病気です。」
    「慢性腎臓病(CKD)は成人の約8人に1人がかかる新たな国民病。」
    他にも血圧やコレステロール、ロコモなど啓発CM増えてます。
    日経メディカルのサイトでは
    「タレントなどを起用して一般の人々への疾患啓発を図る製薬企業の広告が急増している。患者の治療への理解の促進や早期発見につながる一方で、治療が不要な人の受診を惹起する面もあるようだ」と述べています。

    受診を勧めるのはごもっともですが、その後の展開が患者(とも言えない人も多いのかも)本位なのか、医療者利益優先なのか疑問です。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      早期発見に意味はあると思いますが、必ずしも治療ができるものではありません。治療のほとんどが対症療法ですので。
      根本原因をはっきりさせず、製薬会社が薬を売るためのCMは患者の利益にはならないでしょう。
      予防や悪化防止をしたいならまずは食事を変えないとだめだと思います。

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