比較的若い女性の冠動脈性疾患のリスクはインスリン抵抗性で6倍、糖尿病で10倍

冠動脈疾患の危険因子の主役はいまだLDLコレステロールだと思います。そこにはLDLコレステロールを低下させる薬が存在することが最も強く影響していると考えられます。

しかし、LDLの質は全く考えられていません。

また、危険因子として糖尿病の存在は挙げられていますが、インスリン抵抗性としては重要視されていません。以前の記事「インスリン抵抗性が続くと心血管疾患のリスクが高くなる」「急性冠症候群とインスリン抵抗性」でも書いたように、インスリン抵抗性は大きく関連しています。

今回の研究では、アメリカの女性での冠動脈疾患のリスクにかかわる50以上の臨床的な危険因子を、既知の心血管疾患のない45歳以上の28,024人を対象に、追跡期間中央値は21.4年という長さで分析しています。(図は原文より)

上の図は年齢ごとの冠動脈疾患のリスク比です。それをグラフにしたのが以下です。

 

点線より右側に行くほど、その因子がリスク増加に関連していて、左に行くほどリスク低下に関連してることを示しています。大きな傾向として若い世代ほどリスクが高いということです。年齢が上がるほどその因子のリスクが薄まっていくようです。

上の図の中で最もリスクが高いのが糖尿病です。55歳未満では10.71倍、55~64歳でも10.92倍です。糖尿病がどの因子よりも圧倒的にリスクが高いです。一方、最も犯人と考えられてきたコレステロールはどうでしょう。LDLコレステロールでは55歳未満で1.38倍、55~64歳でも1.44倍です。総コレステロールも似たようなものです。

非HDLコレステロール値も1.67倍程度であり、Lp(a)などはわずかなリスク増加でしかありません。

中性脂肪が高い方がLDLコレステロールなどよりも余程リスクが高く、55歳未満では2.14倍でした。さらにHDLコレステロール値が高いことはリスクを大きく下げます。糖質制限をすると中性脂肪が低下し、HDLコレステロールが増加するのでいいことづくめですね。

その他55歳未満で見てみると、メタボリックシンドロームでは6.09倍、肥満は4.33倍、高血圧は4.58倍、喫煙は3.92倍でした。喫煙以外は糖質過剰症候群です。

上の図はリポタンパク質の質についてのリスクです。小さなLDLが増加することはリスクが高くなります。55歳未満では2.25倍です。LDLの平均のサイズが大きいほどリスクが低下しています。TRLは中性脂肪が豊富なリポタンパク質、つまりVLDLの大きさです。VLDLは大きいのが多いほどリスクが高くなっています。ただ、ベリースモールが多いのもリスク増加ですね。これは何でかはわかりません。糖質制限では小さなLDLは減少しますし、大きなVLDLも減少します。

HDLも大きいものが多いほどリスク低下です。

上の図はそれ以外の炎症系などのパラメーターです。もっとも顕著なのがLPIR(リポタンパク質インスリン抵抗性)という指標です。LPIRスコアはインスリン抵抗性の指標として、VLDL、LDL、HDLリポタンパク質の大きさをスコア化して導かれるものです。リポタンパク質の大きさ測定が必要なので、一般的には求められません。しかし、インスリン抵抗性が高いことがリスク因子であると考えられます。リスクは55歳未満では6.4倍です。

さて、これでもまだLDLコレステロール値を一番に重要視すべきでしょうか?LDLコレステロール値上昇が糖質過剰摂取でも起きうることを考えれば、最も重要視するのは糖質摂取量でしょう。

冠動脈疾患を予防するなら、第一に糖質制限でしょう。

 

「Association of Lipid, Inflammatory, and Metabolic Biomarkers With Age at Onset for Incident Coronary Heart Disease in Women」

「女性の冠動脈性心疾患の発症年齢と脂質、炎症性、および代謝性バイオマーカーの関連」(原文はここ

2 thoughts on “比較的若い女性の冠動脈性疾患のリスクはインスリン抵抗性で6倍、糖尿病で10倍

  1. 爆笑問題田中裕二さんが、脳血管の症状で入院されました。スナック菓子が大好きとのこと。家族はこれからはコレステロールに気をつけた生活をしていくそうです。なんだか論点がずれていて心配です(ネットニュースではありますが)。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      所詮マスコミの書くことですから、勝手な方向に、好きなように情報を曲げてしまいます。
      ただ、あの体つきを見ていると、血管は詰まりやすそうですよね。
      そして新型コロナウイルスにも感染しているので、さらに血管が弱っている可能性がありますからね。

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