新型コロナウイルス感染による重症化、死亡に関して、血栓症だけでなく、サイトカインストームも関連しています。多臓器不全に関連する劇症および致命的な高サイトカイン血症を特徴とするサイトカインストーム症候群に対して、抗炎症作用のあるケトン体を大きく増加させるケトン食を治療として用いることは非常に有益であると思います。
今回の研究では、実際に新型コロナウイルス感染に対してケトン食と通常食を比較しています。ケトン食34人、通常食68人を対象としています。
通常食といっても地中海食です。1日に体重当たり30kcal(1800〜2100kcal)、タンパク質16〜20%、脂質26〜30%、炭水化物42〜50%です。
一方ケトン食はエネルギー量1800〜2100kcalで、ケトーシスを誘発する非常に少ない炭水化物(30g未満、総エネルギーの5〜6%)、多価不飽和/不飽和/飽和脂肪の比率は3:2:1でした。タンパク質は平均的な地中海食のタンパク質量と同様の17〜18%で、通常食の平均タンパク質摂取量は86.5gでしたが、ケトン食の平均タンパク質摂取量は89.4gでした。(図は原文より)
上の図はAが30日間の生存率で、Bが集中治療室に入院しないで生存した率です。全体的な死亡率は21.6%(102人の患者のうち22人)でしたが、通常食で27.9%(68人のうち19人)とケトン食8.8%(34人のうち3人)でした。
また、102人の患者のうち合計14人(13.7%)がICUに入院しましたが、通常食19.1%(68人のうち13人)とケトン食2.9%(34人の患者のうち1人)がそれぞれ、ICUに入院しました。
調整なしの分析では有意差がありましたが、調整ありの分析では有意差はありませんでした。
上の図は炎症のマーカーであるIL-6です。左が通常食、右がケトン食です。黒が食事開始時、白が1週間後、グレーが中央値のIL-6の差です。通常食では1週間後に大きくIL-6が増加しています。一方ケトン食はほとんど増加していません。
1週間のIL-6の変化は通常食では58.3%で増加し、41.7%で減少しました。しかし、ケトン食では増加したのは30.4%で、減少したのは69.6%でした。ケトン食の方がIL-6が減少する割合が大きいのがわかります。
炎症が減少することはサイトカインストームを起こさないようにするには非常に重要なことです。対象となる数が少なく思ったほど有意差が出なかった可能性がありますが、比較した通常食は、どこかの大学が大好きな非常に健康的と言われている地中海食です。その地中海食と比較しても十分にケトン食は安全であり、炎症を抑える大きな可能性を秘めていると思います。
新型コロナウイルスに限らず、ほとんどの病気に対して急性期にケトン食を使用すれば、もっと病気の進行や重症化、死亡を減らせるのではないかと思います。
本当は入院食=糖質制限食としてほしいですが、少なくとも糖質制限食を選択できるようにしてほしいものです。いまだ体調がすぐれない場合に、お粥が出てくる日本の現状では難しいでしょうけど。
糖質過剰症候群
「Clinical efficacy of eucaloric ketogenic nutrition in the Covid-19 cytokine storm (CSS): a retrospective analysis of mortality and Intensive Care Unit admission」
「Covid-19サイトカインストーム(CSS)における等カロリーケトン食療法の臨床的有効性:死亡率と集中治療室入室の後ろ向き分析」(原文はここ)
高齢者には咀嚼しやすい、誤嚥しにくいこともありお粥の提供が多いですが、メニューを考える側にはお粥は蛋白質や脂肪より消化・吸収しにくい、などどいう意識は皆無でしょう。さらに血糖値スパイクを引き起こし糖尿病や認知症などの原因でもある、ことなどは全く考えも及ばないのかもしれません。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
日本の医療の世界の食事では、いまだタンパク質があまり重要視されていないと思います。
元気を出すために食べられるものであれば何でも良いから口にするように勧められたりします。
その口にした栄養素が体にどんな影響を与えるかなんて考えてもいないでしょう。
手術後や病気やケガの後などはタンパク質がいつも以上に必要なはずなのですが。
『最高のランニングのための科学』(マーク・ククゼラ)すばらしい本でした。特に第9章食べて走りぬくー栄養と健康、の章が良いです。
機会がありましたら是非。
鈴木 武彦さん、情報ありがとうございます。
非常に興味深いですね。今度読んでみます。