人間の体は無ウイルスではない

前回の記事「腸内細菌叢で見つかった膨大な数の未知のウイルス」で書いたように、人間の腸内にはこれまで未知であったウイルスが非常に多く存在しています。そして、人間の体は無菌でもなければ、(検査などでわからなくても)無ウイルスの状態でもありません。よく知られているのが、ヘルペスウイルス。体調が悪くなった時などに口内炎や口唇炎などの症状を起こします。小さいときに感染したヘルペスウイルスが体内に潜んでいて、免疫力の低下などにより、再び暴れだします。

また帯状疱疹も小さいときに感染した水痘(水ぼうそう)のウイルスが同様に体内に潜んでいて、免疫力が低下などにより帯状疱疹として暴れだします。

他のウイルスもいくつも人間の中には潜んでいて、何らかの状況で、顔を出して悪さをすることは十分に考えられます。

そうすると、新型コロナウイルス感染で様々な症状が出た場合、それがすべて新型コロナによる症状かどうかはわかりません。新型コロナに感染することにより免疫機能が働きますが、戦いで疲れてしまった免疫機能はもしかしたら、体内にすでにある他のウイルスを抑え込むことができないかもしれません。

人間の組織サンプルで同定されたウイルスは、EBウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘・帯状疱疹ウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6-A/B、ヒトヘルペスウイルス7、C型肝炎ウイルス、ヒトパピローマウイルス、RSウイルス(RSV)、パラインフルエンザウイルス3などです。ヒトコロナウイルス229-E(普通の風邪のコロナウイルス)は、脳、甲状腺、心臓、肺、胃、副腎、皮膚、血液のサンプルで同定されました。つまり、人間のウイルス叢には、血液中に豊富に存在することなく、人体内部の組織での発現/複製によって「隠された」状態のウイルスが存在しているのです。

慢性疲労症候群のような症状の人の多くの胃にはエンテロウイルスが見つかるそうです。脳および筋肉組織でも発見されているそうです。見つかることと、それが症状を出すことは別ですが、免疫機能の低下を起こしていそうな慢性疲労症候群では、そのウイルスが暴れだして何らかの症状を出しても不思議ではありません。

一時期話題になったジカウイルスは最初の感染から6か月以上経過しても、精液中にジカウイルスを認めた報告がされています。

人間が生涯にわたって持続性ウイルスを蓄積しています。これらのウイルスは休眠、潜伏して存続しますが、ストレスまたは免疫機能低下で再活性化する可能性があります。健康であると見なされる人であっても、血液、唾液、またはそのような条件下で活性化できる様々な組織に持続性ウイルスを保有することが示されています。

ウイルスが体内に存在するのに通常は人間の免疫系によって「抑制」されていると考えられます。そして、免疫応答が弱まったり、攻撃されたり、調節不全になったりすると、体内の眠っていたウイルスが遺伝子発現やタンパク質産生を変化させて、さまざまな持続的な症状を引き起こす可能性があります。

既存の感染症は、新型コロナウイルスに対する個人の免疫応答に影響を与える可能性があり、そのような免疫の変動は、長期的な症状の発症にさらに影響を与える可能性があります。

さらに持続性ウイルスは免疫低下の条件下では、血液、唾液、または組織から出て、中枢神経系の奥深くに移動する可能性があります。そうするとそれらが暴れれば神経の炎症も起き、様々な症状が出てもおかしくありません。原因のよくわからない症状などに、持続性ウイルスが関係しているのかもしれません。まだわからないことだらけです。

ある病原体の活動が他の病原体の病原性をサポートしているかもしれません。たとえば、新型コロナウイルスは、感染した人のインターフェロン応答を調節不全にするタンパク質を発現しますが、C型肝炎ウイルスや単純ヘルペスウイルスなどのウイルスも、インターフェロンシグナル伝達を低下させて、病気を促進しやすくします。そうすると、すでにC型肝炎ウイルスや単純ヘルペスウイルスを持っている人の中には、すべての身体部位から新型コロナウイルスを完全に除去する免疫応答を開始するのにより多くの問題を抱えている可能性があります。

新型コロナウイルス感染では肺の血栓症などにより酸素化が非常に悪くなることがありますが、低酸素症はEBウイルスの再活性化を誘発する可能性もあるようです。

つまり、新型コロナウイルスの感染による症状の多様性は、もしかしたらその人の中にある持続性ウイルスの中でどのウイルスがどこでどのように暴れだすかによって大きく違うことによるのかもしれません。

また、逆にどのような持続性ウイルスを持っているかにより、新型コロナウイルスに対応する免疫応答に影響があるかもしれません。特異的T細胞免疫とは言うけれど、恐らく完全に特異的ではなく、かなりの交差反応性があるはずです。多くの人は自然免疫と、これまでの感染で獲得したT細胞免疫が新型コロナウイルスに対しても十分に攻撃して、症状を出すことなく済んでいると思います。しかし、そのときでも新型コロナウイルスが体内に侵入していないとも限らないと思います。排除ではなく、「抑制」されているだけかもしれません。

新型コロナウイルス感染の後に特定された心筋炎は、新型コロナウイルスまたは何らかの体内のウイルスによって引き起こされているかもしれません。パルボウイルスB19、エンテロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6、EBウイルス、サイトメガロウイルスなどが心筋炎を起こす可能性があります。新型コロナウイルスに感染したからといって、その後の心筋炎の原因は新型コロナだけではないということです。

もちろん、普段から高血糖、肥満などで慢性炎症状態の場合、新型コロナウイルス感染でより大きな炎症をもたらすこともあります。それが長期的な症状を助長していることもあるでしょう。

様々な感染は通常の細菌叢/ウイルス叢の微妙なバランスを崩して、様々な症状を出現させる可能性もあります。細菌は、ドーパミン、ノルエピネフリン、セロトニン、GABAなど様々な神経伝達物質を生成、消費することが示されています。バランスが崩れるとその神経伝達物質のバランスも崩れる可能性もあります。

さらに、新型コロナウイルス感染者は、感染していないコントロールと比較して、広範囲の自己抗体の劇的な増加を示します。ウイルス、細菌、真菌のタンパク質および代謝物の構造は、それらの人間によって発現されるものと同一または非常に類似しているためだと考えられます。このような自己抗体の産生は非常に個人差が大きくなるでしょう。そして、この自己抗体により、感染後の様々な症状に悩まされる可能性もあるでしょう。

また、そうだとすると、新型コロナウイルスにすでに不顕性感染(感染していても無症状)していてウイルスが潜伏している状態で、ワクチンによって免疫に変化が起きて、眠っていた新型コロナウイルスが起動して、症状が出てしまうこともあり得る話です。ワクチン接種後に一時的にPCR検査陽性者が増加する現象がいくつも認められているようですが、もしかしたら、このようなメカニズムなのかもしれません。また、ワクチン接種後48時間以内の熱はワクチンの副反応と考えているようですが、その中にはもしかしたらワクチン接種後に眠っていた新型コロナが目を覚まして発熱している人もいるでしょう。

さらに、ワクチンによる副反応の一部は、既存の持続性ウイルスが活性化することによっても起こり得るでしょう。

さあ、ここから無理やり(私は無理やりと思ってはいませんが)糖質過剰摂取と結び付けていくと、糖質過剰摂取では人間の体は常に炎症状態または炎症準備状態にあります。免疫活動が常に忙しく活動していて、それでも何とかバランスを保てている人もいるでしょうし、すでにバランスが崩れて症状が現れている人もいるでしょう。そんな時に新型コロナウイルスのような強い炎症を起こすウイルスに感染したり、バランスを崩すワクチンを接種すれば、途端に体の中で嵐が巻き起こる可能性が高くなります。ドミノ倒しのように一押しすれば、連鎖してどんどん崩れていく人もいるでしょう。

免疫はもしかしたら排除を目的としているのではなく、上手く相手とやっていく「共存」するための機能なのかもしれません。非常に攻撃的な敵はとりあえず倒して、大人しくさせて、その後は無理に排除せず、「悪いことをしないならここにいても良いよ」と監視をしているだけかもしれません。つまり適度な緊張関係の維持です。しかし、監視が弱まればそれらの敵がまた攻撃的になるのです。恐らく無理に排除しようとすると、自己の体さえ大きな被害を受けるリスクが高くなり、最悪死んでしまうからなのでしょう。

このことは現在の新型コロナウイルスに対する社会の動きとも一緒です。ゼロコロナを目指せば、いつまででも経済が止まり、大きな被害を出します。敵対しあっていれば、ロックダウンを解除した途端、またウイルスは暴れだします。また疲弊した社会、人間の体は、他のウイルスに対しての防備が弱くなり、新型コロナウイルスは防げても、他のウイルスや病原体、その他の敵にやられるリスクが高くなります。

ウイルスがゼロになることなど妄想でしかありません。共存し、それを監視できる免疫機能を整えることこそ重要です。そうやって人類はここまで生き延びてきたはずです。

新型コロナウイルスと人間との関係はウイルス撲滅がゴールではありません。ゴールなんて最初からありません。人間が老いて死を迎えることがゴールと考え、ゴールを目指して我々は生きているわけではありません。死はいつかやってくるものでゴールではありません。ウイルスはいつもそこにあり、ゼロにすることはゴールではありませんし無理です。ウイルスとの戦いに勝利するというゴール設定、ゴールが存在するかのような錯覚が社会の混乱を招いていると思います。このような所詮無謀な、そして幻想であるゴール設定をしたために、ロックダウンだ、ソーシャルディスタンスだ、早期のワクチン接種だと狂気のような騒ぎになっているのだと思います。もしも新型コロナウイルス撲滅を掲げるのであれば、なぜこれまで肺炎球菌に対しては何も騒いでこなかったのでしょうか?肺炎球菌撲滅を掲げてこなかったのでしょうか?80代の肺炎球菌による肺炎に対して、ICUで人工呼吸をしてこなかったのでしょうか?肺炎球菌は日本で毎年10万人前後が死んでいるのです。

無駄な戦い、無謀な戦いは人々を疲弊させるでしょう。冷静になりましょう。

糖質制限 糖質過剰症候群

「Long COVID or Post-acute Sequelae of COVID-19 (PASC): An Overview of Biological Factors That May Contribute to Persistent Symptoms」

「長いCOVIDまたはCOVID-19の急性後遺症(PASC):持続的な症状に寄与する可能性のある生物学的要因の概要」(原文はここ

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コメント

  1. 鈴木 武彦 より:

    わからないことだらけではありますが、何らかのウィルスや細菌が体内に侵入する事イコール発症とはならないのですね。

    除菌・抗ウィルス製品が、ここぞとばかりに売り出されていますが、健康への有効性は気休め以上のものではないのかもしれませんね。

    • Dr.Shimizu より:

      鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      除菌、抗ウイルス製品は気休めどころか、長い目で見れば有害だと思います。

      • いく より:

        久しぶりにコメント入れさせていただきます。
        除菌剤も作っているメーカーに勤務しているので、入口でのアルコール消毒は必須ですが、私はやっていません。皮膚常在菌など、体をバリアしている大切な免疫を、そんな頻繁に除菌したら、免疫低下してしまうと考えています。
         腸の常在菌叢は、最近話題にされるようになり、免疫に必要だといわれるようになってきましたが、皮膚でも同様なことだと思います。
         腸でも皮膚でも、常在菌は大事なお仲間なので、大切にしたいです。

        • Dr.Shimizu より:

          いくさん、コメントありがとうございます。

          アルコール消毒もいい加減やめてほしいですね。
          おっしゃる通り常在菌は大事な仲間です。仲間を殺すなんて。

  2. ミホ より:

    シミズ先生、こんばんは。

    介護施設職員枠でワクチン接種券をもらいました。
    他のスタッフは我先にと接種予約をしています。
    中にはワクチン接種さえすれば大手を振って遊びにも旅行にも行けると考えている方もいます。
    ワクチン接種後に亡くなった方の話を聞いても、自分は大丈夫と思っているようです。
    私は5年くらい経って安全性が確立したら打ってもいいわ、と周りに言っています 笑
    もちろん、絶対に安全なワクチンなんてないと思っているので、全く打つ気はありませんが。
    そもそも任意ですものね 笑

    • Dr.Shimizu より:

      ミホさん、コメントありがとうございます。

      そもそも任意ですが、同調圧力が非常に強い職種、職場もあるでしょうね。
      本当はワクチン接種の有無にかかわらず遊びにも旅行にも行けるはずなんですが、
      恐怖を植え付けられてしまった人たちの洗脳を解くにはワクチンは有効かもしれません。

  3. 鈴木 武彦 より:

    本来の目的とは違いますが、ワクチンの「免罪符」の役割は大きいですね。
    「ワクチンパスポート」というものも検討されているようですし。