ケトン食はすでに2016年からてんかんに対する食事療法として保険適応となっています。このケトン食はケトン体が抗けいれん作用を示すことで、てんかん発作を減少させると考えられていますが、どうしてケトン体が抗けいれん作用を示すかについては様々な機序の仮説がありますが、完全にはわかっていません。
しかし、ケトン体は進化の過程で標準装備されていたと考えれば、ケトン体が有効だからというだけなのではなく、どちらかというと糖質およびその代謝が脳に有害なのだと思います。
このケトン食は主に小児の難治性てんかんに行われていますが、脳炎や自己免疫性脳炎のてんかんに効果はあるのでしょうか?
今回は薬剤抵抗性の成人の急性脳炎後および自己免疫関連のてんかんに対してケトン食を行った研究です。対象は10人です。4人の患者はウイルス性またはウイルス性と推定された脳炎、5人の患者は血清反応陰性の自己免疫関連のてんかんを有し、1人の患者はGAD65抗体の自己免疫関連のてんかんでした。GAD65抗体といえば、日本人の1型糖尿病患者の半数に認められる自己抗体ですね。
脳炎からケトン食開始までの期間の中央値は6年でした。ケトン食の期間の中央値は10か月でした。(図は原文より)
上の図は10人の詳細です。3人の患者(30%)はてんかん発作がなくなり、1人の患者(10%)は90%の発作の低下を達成し、3人の患者(30%)はベースラインの発作頻度の50〜75%の減少を達成し、3人の患者(30%)は大きなメリットはありませんでした。全体として、7人の患者(70%)が50%以上の発作の減少を達成しました。
いつもこのような研究で考えるのですが、なぜ薬剤耐性てんかん、難治性てんかんとわかってからケトン食を行うのでしょうか?同時進行でなぜダメなのでしょうか?小児の場合、これまでの食習慣があるので、いきなりケトン食を躊躇するのはわからないではありませんが、せめて糖質制限食を始めれば、薬剤のコントロールがそれほど悪くならないのではないか、と思ってしまいます。脳炎ではなおさらケトン体の抗炎症効果、抗酸化作用、ミトコンドリアの機能改善など良いことばかりです。脳炎とわかった瞬間からケトン食開始したら、もっと早期にもっと改善したのではないかと思ってしまいます。
「脳のエネルギーはブドウ糖だけ」とまだ信じている医師がいっぱいいることがこのようなことを招いているのかもしれません。「脳のエネルギーはブドウ糖だけ」と発言する医師は、知識のアップデートが行われていないか、知っていてもあえて自分の説のためにそのように言っているのか、はたまたただの〇〇なのか、どれかでしょう。
糖質過剰症候群
「Ketogenic Diet Therapy for the Treatment of Post-encephalitic and Autoimmune-Associated Epilepsies」
「脳炎後および自己免疫関連てんかんの治療のためのケトン食療法」(原文はここ)
>ケトン体の抗炎症効果、抗酸化作用、ミトコンドリアの機能改善など良いことばかり
ケトン体は正義の見方であって、けっして悪者ではない事は、糖質制限を実践するものにとっては既に常識なのですが、どうしてもケトアシドーシスと言う悪いイメージが付きまとうのでしょう。
近年、ケトン体の有効性はいろんな研究結果として報告されています。
それを全く知らないと言うような医師は問題外として、それでも躊躇するのはケトーシスであってもケトアシドーシスにならない条件が明確に示されていないからではないでしょうか。
私はその1点だけでも明確にすれば、もっと世の中に受け入れられるのではないかと思います。
難治てんかんへのケトン食は保険適応にまでなっていますが、この治療方法でアシドーシスになる事がどれくらいあるのでしょう。ならないからこそ保険適用の治療方法として認められているのではないでしょうか。
もう一つは、ケトン体を産生させる程度の低糖質、高脂肪の食事が、糖質60%の食事に比べて「極端」に偏った食事と捉えられる事が挙げられると思います。
私も今となっては、糖質を60%も摂る事の方が極端ではないかと思うのですが、長年の習慣を(根拠がなくても)一夜にして変えることは難しいですね。
医学はもっと科学であるべきです。
西村 典彦さん、コメントありがとうございます。
恐らく、ケトアシドーシスにはならないでしょうね。
医学は科学となるには、まずは企業のお金を排除しなければ無理でしょう。
ケトン食=バランスの取れた健康食。
糖尿病治療食=合併症製造食。
ですね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
バランスという言葉は非常に難しいですが、ケトン食はやはり治療食と思っています。
江部先生の糖質制限食の方が私は良いと思います。
糖尿病治療食?話になりませんね。糖尿病の人は糖尿病専門の病院でさえ入院中に血糖値がいつもよりも高くなるのですから。
ケトン食はもともと、ラッセル・ワイルダー(Russell Wilder)という医師が癲癇発作を治療する目的で開発した食事療法です。1920年代前半のことでした。
ワイルダー医師が考案したケトン食療法は、摂取カロリーの「90%を脂肪から取る」ものです(タンパク質はわずか「6%」)。「ほぼ脂肪だけ」を食べます。
アトキンス・ダイエットでも、炭水化物の摂取は10g程度に抑える代わりに、タンパク質と脂肪は好きなだけ食べるやり方(もちろん、摂取カロリーも一切制限しない)があります。
ケトン食療法は、癲癇のみならず、あらゆる慢性疾患に対して効き目を示すようです。
クリードンさん、コメントありがとうございます。
「あるゆる」とはいえませんが、非常にケトン食は有用でしょうね。
普段から糖質制限をしていれば、ケトン食までは必要ありませんが。
皮肉なことにクスリが登場すると忘れ去られてしまうんですよね。
糖尿病にしてもインスリンが発見されて糖質制限が忘れられた、、、、。
匿名希望さん、コメントありがとうございます。
薬こそ治療、と思っている人も多いですからね。