慢性閉塞性肺疾患(COPD)は喫煙率の低下もあり、年々死亡者数が減少しています。死因としての順位もベスト10には入らなくなりました。しかし、2020年の死亡数は16,127人とまだまだそれなりの人数がいます。COPDは呼吸の悪化を示す衰弱性の炎症性呼吸器疾患であり、進行性で不可逆性、不治であると考えられています。
今回はn=1の症例報告ですが、非常に興味深い報告です。患者は2011年に45歳でCOPDと診断された54歳の男性で、17歳から37歳までタバコを吸っていました。2011年に、1秒量は0.79L(予測の22%)、1秒率は40%(正常値は70%以上)でした。気管支を拡張する薬の吸入サルブタモールに対する有意な気管支拡張反応はなく、経口ステロイドも効果なし、2011年の診断以来亜鉛とビタミンCのサプリメントを毎日服用し、4年間にわたって、毎日のランニング、サイクリング、水泳からなる有酸素運動プログラムを実施し、果物、野菜、全粒穀物などのいわゆる「バランスの取れた食事」を食べました。
BMIは2011年に29.4だったのが2017年に23.8に低下しましたが、1秒量はわずかに0.91L(予測の25%)にしか改善しませんでした。
2017年に彼は低炭水化物高脂肪のケトン食を開始しました。食事は、20%タンパク質、70%脂肪、10%炭水化物です。指先で毎日0.5mmol/L(日本の単位で500μmol/L)を超えるケトーシスを確認しました。2019年、2020年のBMIは23.8と変化していませんでした。(図は原文より)
上の図は様々な炎症マーカーです。それぞれの緑の点線は正常値上限です。ほとんどの炎症マーカーはケトン食開始後大きく改善し、正常値になっています。
上の図は呼吸機能の1秒量です。2019年と2020年にそれぞれ1.25(予測の35%)と1.24Lに改善し、ケトン食前と比較して1秒量が38%改善したことを示しています。
ケトン食療法の前には1年から2回の急性増悪に苦しんでいましたが、ケトン食後からは増悪は報告されませんでした。また、症状と生活の質の改善を報告し、レスキューのサルブタモール吸入器の使用はケトン食前の1日3〜4回から、ケトン食後は1回以下に減少しました。運動耐容能もまた、マラソンを完了することができた程度まで著しく改善しました。ケトーシスになるとすぐに息切れが減り、4か月後マラソンのベストタイムである5時間半で走りました。
もちろん、COPDは完治するほどまでに改善はしません。しかし、不可逆性ではないようです。しかも薬によってではなく、食事によって改善が可能な疾患である可能性があります。逆に考えると、食事の間違いがCOPDのリスクを上げている可能性も高いでしょう。
基本はやはり普段の糖質制限ですね。
「Case Report: Ketogenic Diet Is Associated With Improvements in Chronic Obstructive Pulmonary Disease」
「症例報告:ケトン食療法は慢性閉塞性肺疾患の改善に関連している」(原文はここ)
慢性閉塞性肺疾患2020年の死亡数は16,127人。 令和3年8/3(火)時点で日本の新型コロナによる死者総数15,232人とネット検索。
様々な致命的疾患の中でのコロナの位置づけはどうなっているのでしょうか?
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
通常1年間の死亡者数で言うのに、新型コロナウイルスだけは累計で言うのはおかしいです。
日本の今年の死者数は8月4日時点で11,762人です。
最近は死亡者数も減少しているので、はたしてCOPDを超えるかどうかですね。
清水先生、おはようございます。
これは呼吸商も関係するのでしょうか?糖質では1、脂質では0.7でしたか、脂質の方が肺への負担が小さいということも言えるのでしょうか?
じょんさん、コメントありがとうございます。
呼吸商も関係していると思いますが、一番は高血糖にならず、ケトン体の効果もあり
炎症が抑えられていることが重要だと思います。