睡眠中の代謝の変化

通常空腹時のメインのエネルギー源は脂肪です。そうでなければ7時間前後の睡眠中のエネルギーを確保できません。糖質過剰摂取、頻回の糖質摂取では日中のエネルギーを脂肪分解で得ることは難しくなります。そしてインスリン過剰、インスリン抵抗性ではもしかしたら睡眠時の脂肪分解も難しくなるかもしれません。

今回は筑波大学の非常に興味深い研究です。BMI30未満の成人を対象に、1日の間のエネルギー代謝を調べています。

食事は、朝食(9:00)、昼食(13:00)、夕食(18:00)として提供されました。総エネルギー摂取量の15%のタンパク質、25%の脂肪、60%の炭水化物を含み、個々のエネルギーバランスを達成するように設定されました。参加者は23:00から6:00まで7時間眠りました。(図は原文より)

aはRQ(呼吸商)で、より高いRQは炭水化物(糖質)の酸化、つまり糖質がエネルギーとして代謝されていることを意味し、より低いRQは脂肪の酸化、つまり脂肪がエネルギー源となっていることを示しています。糖質過剰の食事が与えられているので、食後はRQが上昇し、睡眠時はRQが低下しています。ただ、睡眠時にはずっと低下したままではなく、覚醒する手前からRQが上昇し始めています。コルチゾールなどが分泌されて糖新生が活発化して、起きて活動する準備を整えているのでしょう。

bは血糖値です。これは説明の必要はないでしょう。cは体温です。体温は睡眠時低く朝からだんだんと上昇をはじめ、寝る前から少しずつ低下してきています。dはエネルギー消費量です。eは炭水化物の酸化を示しています。当然RQのグラフとほぼ同じグラフですね。fは脂肪の酸化です。これは炭水化物と真逆ですね。ただ、食事と食事の間で上昇しているので、意外と日中でも3食だけならば脂肪の酸化は起きているようです。これに間食が加わればほとんど脂肪の酸化はなくなってしまうでしょう。

上の図は代謝的に柔軟な人、つまり炭水化物の酸化と脂肪の酸化が入れ替わりやすい人と代謝的に柔軟ではない人、つまり入れ替わりが少ない人の違いです。2つのグループで特徴的には条件の違いはありませんでした。代謝に柔軟ではない人では夜間睡眠中の脂肪酸化が低下し、炭水化物の酸化が増加していました。恐らく糖尿病や肥満などでインスリン抵抗性が高くなり、インスリン値が高いままだともっと脂肪の酸化が減少するでしょう。

上の図は年齢による違いです。25歳未満と25歳以上です。平均年齢は約10歳違っていました。そうすると25歳以上の方が睡眠時のRQが高めでした。つまり脂肪の酸化が低下している(有意ではありませんでしたが)のです。

上の図は性差です。女性の方が睡眠時のRQの低下から覚醒前のRQの上昇が早めに大きく起きていました。女性の方がエネルギー消費量が少なく、炭水化物の酸化も少なくなっていました。睡眠時のRQの違いを表すように脂肪の酸化は覚醒前から低下し始めています。女性ホルモンの影響でしょうかね?

通常の食事、つまり糖質過剰摂取をしていても、ある程度4時間くらい食事の間隔が空くと、その間に脂肪がエネルギー源となっているようです。しかし、インスリンが長い時間分泌が続いたり、間食をしたら、日中の脂肪分解はほとんど行われないでしょう。そして空腹時インスリンがある程度高くなれば、睡眠時の脂肪の酸化も難しくなります。そうすると眠っているときのエネルギー源が無くなってしまうのです。

そこで糖新生でブドウ糖を作ってエネルギー源にしようとするはずです。そうすると糖新生が起きる手前では低血糖が起きたり、睡眠の質が悪くなったりして夜間覚醒を起こしたりするのではないかと思います。寝汗も恐らく睡眠時にエネルギー源となる脂肪の分解があまり行われずに血糖値が低下して、体の中でアラートが鳴り響き、交感神経が活性化して汗が出ているのかもしれません。

夜間頻尿も交感神経活性化が関係しているかもしれません。眠っている間は通常リラックスして副交感神経が優位となっているので、尿意を感じにくく、膀胱にたくさん尿を溜めることができます。しかし交感神経が活性化してしまうと膀胱が収縮しやすく、尿意を感じやすくなり夜間頻尿になるのかもしれません。夜間の尿意で覚醒すれば睡眠の質が低下し、悪循環にもなるでしょう。

寝汗が多い、睡眠の質が悪い、夜間頻尿に悩んでいる人は、睡眠時に体が警報を鳴らしているのかもしれません。まずは糖質制限で日中だけでなく夜間のエネルギーを脂肪酸化で得るようにして、エネルギーを安定させましょう。

 

「Metabolic flexibility during sleep」

「睡眠中の代謝の柔軟性」(原文はここ

One thought on “睡眠中の代謝の変化

  1. やはり脂肪が安定的なエネルギー、糖質は緊急的なエネルギーなのですね。

    まだまだ、エネルギー源として糖質摂取必須、糖質制限はほどほどに的な「健康情報」が多いです。(結果としての透析/失明/切断、怖くないのでしょうか)

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