カップヌードルで有名な日清食品が完全栄養食プロジェクトというものをやろうとしています。日本を未病対策先進国へ、と壮大な目標を掲げています。
しかし、その中身は、いまだに「オーバーカロリーで健康被害が起きている」と言っています。完全栄養食を食べれば完全に栄養バランスが整うそうです。栄養バランスってどのようなものが最も適切か全くエビデンスが無い中で、どうやって完全栄養食を作るつもりでしょうか?彼らが提唱する食事は下の図のようです。
(図は日清食品のこの動画より)
彼らが目指している完全栄養食は上のようなものです。結局塩分控えめ、低脂肪、低カロリー食とこれまでの間違った「ヘルシーな食事」と何ら変わりません。33の栄養素が推奨値を満たしているにすぎません。その栄養素が吸収されるかどうかもわかりません。何らかの栄養素が他の栄養素の吸収を阻害することもありますからね。
ホームページによると完全栄養食で、たった4週間で様々な数値に目覚ましい改善が得られたそうです。食事を約4週間に約40食の完全栄養食に置き換えた臨床試験を実施したそうです。複数企業の社員食堂において実施されたそうですが、複数と言っても2社です。もしかしたら日清食品とかかわりのある企業かもしれませんね。自社かもしれません。もし日清食品で行われていれば、社員は失敗は許されないので頑張りますよね。
結果を見てみましょう。(ここより抜粋、図も同様)
- 参加者
- 試験①A社
社員110名(男性59名、女性51名)年齢40.0±12.6歳試験②B社
社員66名(男性63名、女性3名)年齢38.2±10.1歳 - 試験内容
- 完全栄養食を平日の朝食(約320kcal)・昼食(約480kcal)として4週間摂取
※途中辞退者、摂取率80%未満の参加者、解析対象とすることが不適当な者を除き解析 - 完全栄養食の設計
- 18~64歳の男女が1650kcal分摂取することにより日本人の食事摂取基準に記載の栄養素を充足(*)
*食塩相当量のみスマートミール基準を採用
男性は3050kcal、女性は2350kcal摂取しても摂取上限を超えない日本食品科学工学会第68回大会にて発表
検査項目 | 試験名 | n数 | 摂取期間前 | 摂取期間後 | P値 | 改善者割合 |
---|---|---|---|---|---|---|
体重 (kg)※1 | 試験① | 46 | 72.4±8.0 | 71.5±7.9 | P < 0.001 | 84% |
試験② | 56 | 77.7±9.2 | 76.8±9.3 | P < 0.001 | ||
BMI (kg/m²)※2 | 試験① | 18 | 27.5±1.8 | 27.2±1.7 | P < 0.001 | 81% |
試験② | 40 | 27.4±2.5 | 27.1±2.5 | P < 0.001 | ||
収縮期血圧 (mmHg)※3 | 試験① | 24 | 136.9±9.0 | 128.1±9.5 | P < 0.001 | 73% |
試験② | 22 | 134.0±6.7 | 130.1±8.7 | P = 0.024 | ||
内臓脂肪面積 (cm²)※4 | 試験① | 30 | 153.9±30.2 | 145.6±29.7 | P < 0.001 | 86% |
試験② | 49 | 148.3±34.8 | 129.1±38.7 | P < 0.001 | ||
プレゼンティズム (WLQ-J)※5 総合パフォーマンススコア | 試験① | 41 | 90.9±2.5 | 92.6±3.8 | P = 0.005 | 71% |
試験② | 23 | 90.7±2.6 | 93.0±3.5 | P = 0.004 | ||
排便回数 (回/週)※6 | 試験① | 27 | 4.2±1.1 | 5.6±1.6 | P < 0.001 | 88% |
試験② | 解析対象者が少ないため解析せず |
平均値±標準偏差
- ※1:層別解析条件:男性参加者
- ※2:層別解析条件:BMI25kg/m²以上の男性参加者
- ※3:層別解析条件:収縮期血圧130mmHg以上かつ/または拡張期血圧80mmHg以上の参加者
- ※4:層別解析条件:内臓脂肪面積100cm²以上の参加者
- ※5:層別解析条件:総合パフォーマンススコア94未満の参加者
- ※6:層別解析条件:排便回数週6回以下の参加者
上の全ての項目で改善割合は70~80%台となっています。素晴らしい結果です。体重は何と0.9kgの減少です。えー!目覚ましい改善というのは1kgにも届きませんでした。しかも女性も参加しているのに、結果は男性だけのものです。つまり女性では体重減少が得られなかった可能性が高いのでしょう。
BMIの低下は何と0.3!
血圧は4~9程度。まずまずか?。内臓脂肪も8~19程度です。
この程度で健康改善になるでしょうか?なんともショボい数値です。
もう一つの臨床試験があります。完全栄養食を摂取した人と摂取していない人との比較ではどうでしょうか?4週間での変化量の差は、体重0.5kg、BMI0.2、腹囲1.1cm、内臓脂肪7.5cm2、NonHDLコレステロール10.8mg/dL、拡張期血圧3mmHg、HbA1c0.06%、善玉菌の占有率の増加1.5%、痩せ菌の占有率の増加0.4%です。ショボ!
しかもまた参加者は男性だけです。なぜ?完全栄養食に全く期待できない感じがヒシヒシ伝わってきます。
彼らはカロリーの摂り過ぎ、塩分や飽和脂肪酸の摂り過ぎが「悪」というこれまでと全く変わらないスタンスです。飽和脂肪酸のところには「過剰な摂取は絶対ダメ」とまで書いています。飽和脂肪酸の摂取量に比例してLDLコレステロールが増加し、循環器疾患のリスクを増加させることがわかっています、と断定しています。断定できるエビデンスはあるのでしょうか?
もちろん、バランスも重視です。根拠のないバランスをキッチリと守るため、糖質過剰になっています。あらら…
ビタミンやミネラルなど日本人の栄養摂取基準もキッチリと守ろうとしています。でも、たった1食でこれをクリアする必要あるのでしょうか?
完全栄養食が優れている点について栄養学の専門家のコメントが書かれていますが、その専門家は女子栄養大学教授の本田佳子さんです。栄養大学の教授は恐らく古典栄養学をずっと教え続けている、日本に間違った栄養学がずっと浸透してしまっている元凶とも言えます。
あるネットの記事では本田佳子さんは、次のように書いています。
糖質は脳のエネルギー
人間の体で重要な器官のひとつである脳は、糖質しかエネルギー源にできません。脳は体重の2%ほどの重さしかありませんが、基礎代謝量(生命を維持するための最低限のエネルギー)の10~20%のエネルギーを必要とします。もし、糖質が不足すると、頭がボーッとする。眠くなる、思考力がなくなるなど、日常生活にさまざまな支障が出てきます。
お馴染みの脳は糖質しかエネルギーにできない説を唱えています。
糖質過剰症候群が現代の病気で最も多いと私は考えます。もちろん原因は糖質過剰摂取です。推奨されているPFCバランスを守るかぎり、糖質過剰摂取から抜け出ることはできません。
完全栄養食という立派なネーミングは良いのですが、中身がこれまでの間違った「ヘルシー」食と全く変わっていません。ネーミングでだますのは企業がよく行う戦略ですが、糖質制限がどんどん拡大している現在の流れに逆行しているのは理解できません。
企業がビジネスで金儲けのために食品を売ることは別に良いと思います。しかし、健康のための食品という位置づけで食品を売るのであれば、問題です。買う側がやっぱりしっかりと考えなければ騙されてしまいます。
日清食品の完全栄養食は糖質過剰摂取を招きます。
糖質オフが販促になる時代、よくよく注意しないと「なんちゃって糖質制限」が多いです。
未だに「カロリー制限」「脂肪制限」がダイエットの主流だったりもします。
「塩分は高血圧の原因」でもあります。
糖質制限を継続して情報を取捨選択できる認知機能を保ちたいものです。
とはいえ私も、カップヌードルプロ、上記自覚しつつたまに食べてます。
(カップ麺依存も根深いですね。)
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
私はカップ麺をいつから食べていないか記憶にないぐらいですね。
でも、まあカップヌードルプロをたまに食べるくらいは、自覚しているのであれば良いと思います。
よく耳にする「バランスの良い食事」って、一体どんな食事のことなんでしょうか。
まさか、「摂取エネルギーの6割が炭水化物で占められている食事」のことでしょうか。
「バランスの良い食事」「なんでもバランス良く食べましょう」の文言を聞くたびに首を傾げます。
糖尿病を患うようになる前のエスキモーたちが食べていたものは、動物の肉、魚、脂肪だけでした。とくに、赤身肉よりも「脂肪を優先的に」食べていました。動物性脂肪(飽和脂肪ですね)を遠慮なくたっぷり食べていたのです。
この人たちがエスキモーたちの食事を見たら「こんなもの食べていたら病気になる!」と絶叫するでしょう。
しかし、彼らは健康体そのものでした。肥満はおろか、糖尿病とも無縁でした。
西洋との交易で小麦粉や砂糖を食べ始めた途端、彼らの身体はおかしくなっていきました。
日清食品も、本田佳子という栄養学の教授も、プロパガンダを広めているのか?そんなに国民を病気にさせたいのか?
炭水化物が中心の商品を主力にしている会社ですから、炭水化物を制限する食事が広まってしまうと、自分たちの商品が売れなくなってしまう、と考えているのでしょうか。
クリードンさん、コメントありがとうございます。
体に悪い食品でも、黙って販売しているのであればそれはそれで金儲けの企業なので良いと思います。
しかし、健康をうたい文句にするのであれば、やはり今回のプロジェクトは間違っています。
>えー!目覚ましい改善というのは1kgにも届きませんでした。
ある意味、素晴らしい成果ですね。ジャンクフードを朝、昼4週間も食べ続けて悪化しなかっただけでも良しとしましょう。ジャンクフードが食べたいときは日清食品ですねw
冗談はさておき、本当にジャンクフードを食べ続けても悪化しなかったのなら、それはそれで素晴らしい成果かもしれません。とちょっとだけ思います。
でも、被検者の摂取前の状態はかなり悪いので、試験前は、ジャンクフードでも改善してしまうような食生活を送っていたのかもしれませんが。
西村 典彦さん、コメントありがとうございます。
今回の「完全栄養食」がどこまでジャンクフードなのかはわかりません。
詳細が発表されるのがある意味楽しみです。