日本人の中高年の食事パターンと大腸癌リスクを調べた研究があります。(原文はここ)
食事を調査して、粗食、西洋食、伝統的和食の3つの食事パターンに分けています。
粗食として、野菜、果物、麺、ジャガイモ、大豆製品、キノコ、および海藻
西洋食として、肉、加工肉、うなぎ、乳製品、フルーツジュース、コーヒー、紅茶、ソフトドリンク、ソース、アルコール
伝統的和食として、漬物、シーフード、魚、鶏肉、酒(男性のみ)
としていますが、この分け方はかなり微妙な感じがします。特にジャガイモなどはフライドポテトに代表されるように西洋では一般的な食べ物です。また、うなぎが西洋食に分類されていますがなぜでしょうか?アルコールについては種類はわかりません。和食の酒は日本酒のことだと思いますが…
かなり問題のある分類ではありますが、恐らくは肉や加工肉が大腸がんを増加させ、野菜や魚が大腸がんを減少させるようなイメージで分類したのでしょう。
その結果の一部は次からのグラフです。(すべてクリックで拡大)
Q1からQ5までありますが、上に挙げた食事パターンのものをどれだけ食べているかを5段階に分類しています。そして、Q1が一番少ない摂取量であり、だんだん増えて、Q5が最も多く摂取しているということを表しています。そして、5段階に分けて一番少ないQ1に比べてどれぐらいリスクが高くなるかを表しています。数字が大きい方がリスクが高いと考えてください。
そこで、グラフを見てみると、明らかな男女の差があります。男性において、粗食パターンは大腸がん、特に遠位の大腸がんリスクとの関連が低くなっています。西洋食パターンとも関連がなく、西洋食をたくさん食べたことによるリスク増加はないと考えられます。逆に伝統的な和食との関連はありません。
女性では、粗食パターンが明らかに直腸がんのリスクが増大しています。また、女性の場合、西洋食パターンは大腸がん(示していません)および遠位大腸がんと有意なリスク増加の傾向が示されました。女性でも伝統的和食パターンは、全体または特定部位の大腸がんのリスクと明確な関連は認められませんでした。
この研究で言えば、女性に関しては和食は西洋食よりは大腸がんのリスクが少ない可能性はあります。しかし、粗食パターンで直腸がんが増加することは気になります。
しかし、現在私たちは糖質制限を推奨しています。この研究も、これまでのほとんどの研究も大前提は糖質過剰摂取している人のデータです。糖質制限を実行している人と比較したものは皆無だと思います。
糖質制限をしていると、肉の摂取量が通常増加します。動物性たんぱく質、特に赤肉の大量摂取はがんのリスク増加に関連しているという研究があるのは確かです。これらの中にはやはり女性の方がリスクが高いという結論になっているものもあります。
糖質を過剰摂取している人は高血糖、高インスリン血症になっています。これらのことはがんのリスクです。もともと糖質を過剰摂取して、高血糖、高インスリン血症になり、がんのリスクが高い人が肉をたっぷり摂れば、大腸がんになりやすい、ということはわかっていますが、糖質制限食で高血糖も抑えられ、インスリンの分泌も少ない状態で、肉を大量に摂取してどうなるかは、全く現在のところわかっていません。しかし、理論的に考えて、私は糖質制限をしている限り、肉によるがんリスクの上昇はないと考えています。