食べる順で糖質過剰症候群の改善は難しい ブロッコリー編

食べる順で血糖をコントロールしようとしても、上手くいくとは思えません。それは何を食べるかは毎回違いますし、組み合わせや調理法によっても違いがあると考えられるからです。

今回の研究では白米とブロッコリーを食べてその血糖値やインスリン値の推移を調べています。しかも、ブロッコリーは硬く調理したブロッコリーと柔らかく調理したブロッコリーで違いを比べています。

対象は平均年齢22.8歳の14人の健康な女性です。

白米は糖質50g分です。250 gの生のブロッコリーは62.5gの水と混合され、電子レンジで2.5分間(硬いブロッコリー、H)および4.5分間(柔らかいブロッコリー、S)調理されました。

参加者は、5つの異なるパターンで食べました。(SR)柔らかいブロッコリーと米の同時摂取。(HR)硬いブロッコリーと米の同時摂取。(S + R)米の前に柔らかいブロッコリー摂取。(H + R)米の前に硬いブロッコリー摂取、(R)白米のみ摂取。S+RおよびH+Rグループでは、ブロッコリーは20分以内に食べ終わり、その後ブロッコリー終了した時点で白米が提供され、10分以内に食べ終わりました。

硬いブロッコリーは、柔らかいブロッコリーよりも26%長く、米よりも58%長い咀嚼時間がかかりました。

さて、血糖値とインスリン値の推移を見てみましょう。(図は原文より)

上の図の(a)は血糖値、(b)はインスリン値のベースラインからの変動の推移です。血糖値は白米のみが最も血糖値スパイクが大きくなっています。ピークは30分後です。ブロッコリーの硬さにかかわらずお米同時摂取群では30分値で血糖値はピークとなりましたが、120分では白米のみよりも高く、180分でもベースラインに戻っていません。一方白米の前にブロッコリーを食べた群では血糖値のスパイクのピークは低下し、しかもそのピークは120分後になっています。

インスリン値の推移は興味深いです。白米のみと同時摂取の2つの群でインスリン分泌のピークは30分後ですが、インスリンの変動幅は同時摂取群の方が白米のみよりも大きくなっているように見えます。そして、低下スピードも遅くなっています。そして、S+RおよびH+R群では血糖値と同様に120分後がインスリン分泌のピークであり、そのピーク時の変動幅はH+R、つまり硬いブロッコリーを先に食べてその後白米を食べる方が大きく増加し、しかもそのピークの変動幅は同時摂取群に匹敵するほどなのです。ブロッコリーの硬さはインスリン分泌に大きく影響したのです。

上の図はピークのときの血糖値の増加の程度とその時間を示しています。ブロッコリーは同時に摂取するとちょっと血糖値スパイクを低下させ、順番に食べるとさらに低下しています。順番に食べると大きくピークの時間が遅れています。

上の図は血糖値とインスリン値の曲線下面積です。一番左が0~60分、真ん中が60~180分、右が0~180分です。白米のみと同時摂取は前半増加型なので0~60分では順番に食べるよりも大きくなっていますが、0~180分を見ると、どのグループも有意な差はありませんでした。

さらに面白いことに、インスリンは0~180分で見ると白米のみが最も小さく、硬いブロッコリーを先に食べる群が最も大きくなっていました。H+RはS+Rよりも38%高いインスリンの曲線下面積でした。ブロッコリーの硬さで違うというのも不思議です。

上の図はインスリン抵抗性です。先ほどのインスリンの曲線下面積と同様の結果です。つまり、硬いブロッコリーを先に食べるとインスリン抵抗性が増加してしまうようです。不思議な結果ですね。

H+RはS+Rよりも38%高いインスリンの曲線下面積を示したということは、インスリンの反応は咀嚼の力や時間などに影響を受ける可能性があるということです。または、ブロッコリーの成分が硬さにより残存率や吸収率に影響を与え、その成分がインスリン分泌や感受性に影響を与えたのかもしれません。

通常の食事ではこのような2種類の食材だけを食べることは非常に少ないでしょう。そして、毎回違う調理法でしかも野菜の硬さも違うでしょう。どのような組み合わせになるかで、またどのような硬さになるかで血糖値やインスリン分泌や感受性が変化してしまうのであれば、通常の食生活ではコントロールが難しいのです。

つまり、我々がコントロールできることは糖質量を減らすことです。それが最も容易であり、最も確実でしょう。

食べる順番が血糖値のピークを低下させるからといって、その後インスリンが大きく分泌されていれば、それも体に有益なものではありません。血糖値スパイクによる影響は少なくなりますが、3時間の合計の血糖値は順番に関係なく同様でしたし、インスリンの分泌量は白米だけよりも多くなってしまう可能性もあるのです。

食べる順ダイエットに過剰な期待を持つことは止めた方が良いでしょう。糖質過剰症候群は食べる順番では改善は難しく、やはり糖質過剰摂取をやめることが最も重要だと思います。

 

「Combination of Texture-Induced Oral Processing and Vegetable Preload Strategy Reduced Glycemic Excursion but Decreased Insulin Sensitivity」

「歯ごたえによる咀嚼処理と野菜を前に食べる戦略の組み合わせは、インスリン感受性を低下させたが、血糖変動を減少させた」(原文はここ

2 thoughts on “食べる順で糖質過剰症候群の改善は難しい ブロッコリー編

  1. 「食べる順番が血糖値のピークを低下させるからといって、その後インスリンが大きく分泌されていれば、それも体に有益なものではありません。血糖値スパイクによる影響は少なくなりますが、3時間の合計の血糖値は順番に関係なく同様でしたし、インスリンの分泌量は白米だけよりも多くなってしまう可能性もあるのです。」
    食べる順番による血糖コントロールが可能だと盲目的に喧伝されている方々は、きっとこのようなことに考えが及ばないと思われます。

    1. 鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。

      食べる順番がこの記事のようなことに考えが及ばないか、または意図的に考えさせないようにして、糖質を摂取し続けさせるのが目的かもしれません。

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