HbA1cとグリコアルブミン(GA)は糖尿病、血糖値のコントロールの指標として用いられています。HbA1cは平均の血糖値と非常に相関していると言われており、計算式も存在します。
平均血糖値=HbA1c×28.7− 46.7
この式はこの論文で示されたものです。
また、GAは大まかな近似値として
HbA1c(NGSP)=GA÷4+2 とか HbA1c(NGSP)=GA÷3
とか、複雑な式としては(この論文参照)
HbA1c 5.868%未満
GA= 6.960 + 0.8963 × HbA1c
HbA1c 5.868%以上
GA= -9.609 + 3.720 × HbA1c
など様々な式があります。
しかし、検査機関による差、その測定方法の違いにより、その値の精度が問題になることもあります。
もちろん、十分に平均血糖値の目安になるですが、では、本当に精度が高く、平均の血糖値の指標となるのでしょうか?
今回の研究では、2型糖尿病の個人差によるHbA1cおよびGAを分析しています。(図は原文より)
上の図は、血糖コントロールが安定し、HbA1cまたはGAに影響を与える合併症のない2型糖尿病患者を154人(平均年齢68.4歳)のデータをプロットしたものです。ちょっと古い日本の論文なので、単位が昔のJDSになっていますが、内容には大きく影響しないので、そこはちょっと無視します。
図のように確かにHbA1cとGAは相関しています。しかし、ばらつきを見るとその範囲はかなりですね。
例えばHbA1c=7の部分を横に見ていくと、GAは17~30%くらいでしょうか?
逆にGA=25の部分を上に見ていくと、HbA1cは6~8程度です。HbA1cが2も違ってしまえば、全く役に立ちません。
上の図はHbA1cと95%信頼区間を示しています。HbA1cが5%のとき、実際にはその範囲は4.4~5.6であり、HbA1cが8のときは6.9~9.1となってしまいます。これではHbA1cを指標として糖尿病のコントロールなどはできません。同様のことはGAにも当てはまります。
なぜ、このようなばらつきが出るかというと、恐らくはHbA1cであれば赤血球の寿命の個人差、GAであれば、アルブミンの半減期の個人差でしょう。そして、自分の赤血球寿命やアルブミン半減期を知っている人はいないので、自分のHbA1cやGAがどこまで正確な数値なのかはわかりません。そしてそこから計算式で求められる平均血糖値がどこまで意味のあるものかもわかりません。
糖質過剰摂取のままであれば、血糖値変動が大きいままであり、その状態でHbA1cを指標として血糖コントロールを行ってHbA1cを下げれば、当然低血糖になる時間が増加する可能性もあります。血糖値の平均値を下げるのではなく、血糖値スパイクをできる限り回避して、HbA1cを下げるべきです。それには糖質制限を行うのが最も効果的です。糖尿病は糖質過剰症候群の代表です。
フリースタイルリブレが普及してきた現在となっては(もちろんフリースタイルリブレの精度の問題はありますが)、もしかしたら月に1回測定するような、HbA1cやGAは時代遅れなのかもしれません。血糖値は薬ではなく毎回の食事でコントロールできるのですから。
「Evaluation of error levels in hemoglobin A1c and glycated albumin in type 2 diabetic patients due to inter-individual variability」
「個人間の変動による2型糖尿病患者のHbA1cとグリコアルブミンのエラーレベルの評価」(原文はここ)
指標が余り当てにならないのであれば、それに基づいて処方される薬
での治療もあてになりませんね。
鈴木 武彦さん、コメントありがとうございます。
そもそも食事で改善するのに、薬などいりませんが。
清水先生
本日のテーマ、大変興味深く拝読いたしました。
若い頃(健康状態に一抹の不安もなかった頃)は、検査結果の数値に懐疑的になることもなく、淡々と受け止めていたように思います。
中年期になり、自身の身体にいろいろと不安な要素を抱えるようになると、結果の数値に一喜一憂してしまうことも。
大変勉強になりました。
appleさん、コメントありがとうございます。
もちろん、無視できない検査もあると思います。
誤差や個人差のある検査、他の要因で変化する検査は、目安として数値を知ることは良いと思います。
しかし、それにガチガチに囚われることは問題になることもあるでしょう。